以前にも紹介しましたが、「Spectator」は、年に数回発行される雑誌で、再びバックナンバーが入荷しました。「バック・トゥ・ザ・ランド」(自然に戻ろう)をテーマに掲げていて、

「何の気なしに消費してきた食べ物や電気や水が、どうやって作られているか、それさえ知らなかったことへの反省や、安全な暮しを取り戻そうとする新たな意志があるように思われます。新しい世界のかたちとは?そんなことを考える一旦を担えたら幸いです」と書かれているのを今一度読むと、やはり共感します。

取材の対象も、そのコンセプトに最適な方が登場します。「ぼくは猟師になった」(リトルモア900円)の千松信也へのインタビューは、ボリューム満点で中身も濃い記事です。

「やりたくない仕事をして稼いだ金で石油を買ったりするよりも、自分の時間を使って薪を手に入れたり肉を手に入れるほうが、身体はしんどいかも知れないですけど、やっぱり気持ちは楽です」と語る千松は、理念もないし、自給自足でなくてはならぬという固定観念もありません。「自分にとって楽なほうへ進んでいったら結果としてこうなった」と語っています。

もう一人、当店で人気の作家、内澤旬子も登場します。三匹の豚を飼って、最後に屠殺し、肉を食べるまでのルポルタージュ、「飼い喰い」(岩波書店1400円)の面白さは類を見ない一冊でした。元々は、世界の屠殺現場を訪ね歩く「世界屠殺紀行」(角川文庫600円)や、有名作家の書斎を紹介する「センセイの書斎」(河出文庫500円)、おやじの生態を見事に捉えた希有な一冊「おやじがき」(河出文庫300円)等のイラストルポライターです。

38歳の時、乳がんを宣告され、その後の身体の変化を描いた「身体のいいなり」(朝日新聞出版400円)で、様々な苦しみの中から、これは「意志と身体との戦いだった」と表現しています。

「今まであまりにも身体を無視して、意志だけで生きてきた結果、身体を怒らせてしまった」

だからこそ「身体のいいなり」になるのだと。

ガン告知され、闘病生活を経て、豚を飼うに至る人生についてたっぷりと読めます。

 

 

★毎年恒例になりました『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、10月28日(金)7時30分より開催が決定しました。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

★★カナダ在住で、ドールシープを撮影されている写真家、上村知さんの写真展を11月1日(火)〜13日(日)まで開催します。5日(土)夜に、上村さんによるスライドショー 「極北 カナダ・ユーコン&アラスカの旅と暮し」(7時より)を予定しております

  (要・予約 同じくレティシア書房までお願いします)

雑誌「ちゃぶ台」(1620円)発売です。全く広告が入っていません。だから、びっしりと読めます。創刊号の特集は「これからの生き方を考える移住×仕事」特集です。執筆陣を見て、読んでみたいと思われる方も多いはず。

内田樹、西村佳哲、益田ミリ、内澤旬子、佐藤ジュンコ、甲野善紀等々、当店でも人気の著者が並んでいます。そして、ページをめくると、編集部の気合い迸るこんな言葉が飛び込んできます。

「最初から最後まで読み通したくなる雑誌をめざしました。」

その言葉通り、面白い記事が並んでいます。

「移住」のキーワードで取り上げられているのは、最近、人口流出よりも流入が多い、瀬戸内海で三番目に大きい島、周防大島。ここで暮らす人々のことを、ミシマ社代表の三島邦弘さんがレポートします。

過疎に悩む島や地方では、様々な移住促進政策を行っていますが、そこには大きな落とし穴があります。これだけの人数は来てくれたという数至上主義的な考え方です。でも、この島にはそれがありません。数だけ揃えばそれでいいのかという問題ではありません。

その話を受けて、三島さんは数だけ揃えるという風潮にこう考えます

「女性の役員数を何割にしよう、といった話を聞くたび、違和感をおぼえていた。表面だけ繕っておけば、実体がともなっていなくてもOK。責められても、ちゃんとエクスクキューズするから。そんな浅はかさがすけすけだからだ。表面的数字が達成されようと、一人一人の幸福度が下がってしまっては本末転倒ではないか」

その通り!拍手、拍手!!

一人一人の幸福度を見つけようと、この島に渡ってきた若者達。彼等を前に内田樹先生が「街場の農業論」という講演をされました。もちろん収録されています。内田節炸裂のお話ですので、精読して下さい。

「世界屠殺紀行」、「身体のいいなり」等の著書内澤旬子さんも、小豆島に移住した一人だ。独身女性の移住はうまくいかないと回りから散々言われたみたいですが、なんと島には独身の女性移住者がとんでもなく多くいたことに驚く。暮らし優先の自然体の彼女たちの将来のことへの不安を感じながらも、見守る著者の視線に共感しました。

と、どんどん読み進めたくなる記事が満載。「ガケ書房」の山下店長達が立ち上げた企画編集グループ「ホホホ座」の対談「なのにあなたは京都にきたの?」もお薦めです。今回のお相手は、2013年に海外から制作拠点を京都に移した画家、下條ユリさん。「左京区女子」なんて言葉があったんですな。

付録「ちゃぶ台便り」も付いて元気に発売中です。「文藝春秋」に負けるな!