最近TVのニュースや新聞を見ていると、モヤモヤすることが多くないですか。首相のデタラメさは言うに及ばず、スタンドプレイが上手な某知事など。そこで、内田樹の「サル化する世界」(文藝春秋/古書1200円)をお勧めします。

私がこの本を手に取ったのは、2019年9月13日号の「週刊ポスト」が、「『嫌韓』ではなく『断韓』だ 厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」という記事を載せて、後に謝罪して記事を撤回したお粗末な行動について、内田先生がコメントしていたからです。先生曰く

「市民的常識を逆撫でして、世の良風美俗に唾を吐きかけるような言葉を発表する時には、それなりの覚悟を決めてやってくれということである。それで世間から指弾され、発言機会を失い、場合によっては職を失って路頭に迷うことを覚悟してやれということである。覚悟がないなら書くな。」と。問題なのは、職を賭さないけれどちょっと言ってみようというさもしい根性です。ぽろっと言ってみたけど、メディアも、司法も異議ありと言われなかったからいいや、みたいな言論環境だから大丈夫と思った瞬間、やれ謝罪だ、撤回だと騒がれて、一目散に逃げ出してしまいました。

「『職を賭してまで言いたいというほどのことではないが、職を賭さないで済むなら、ちょっと言ってみたいこと』をぺらぺら語り出したのである」

因みに、内田先生はこの記事以降、版元の小学館とは仕事をしないと公言しています。

こんな風に、様々な視点から現代日本の劣化してゆく姿をあぶり出し、どう処方していくのかを論じています。

文学を扱っている本屋としてはなんだそれ、と激怒してしまった箇所がありました。「論理国語」という高校の国語の授業ご存知ですか。生徒会の議事録と生徒会の規約を見せて、年度内に生徒総会を開催できるかどうかを問う問題が模試に出たそうです。

契約書や例規集を読める程度の実践的読解力を「論理国語」という枠組みで育てるらしいのです。先生はこう指摘します。

「これはある種の国語力を育てるというより、端的に文学を排除するのが主目的」

文学なんて非論理的で、役に立たない。だからそんなものに教育資源を投入できない、と考えている「文学抜き」で大人になった政治屋が、音頭を取って導入していると先生は考えています。学問の基礎研究を疎かにしている大学教育の方針転換もその一例です。役に立たないもの=無駄、という考え方です。

「知性に対して虚無的な考え方をする人たちが教育政策を起案している。これは現代の反知性主義の深刻な病態だと思います。」と先生は警告しています。

脳内を突きまくられますが、この国の今と将来を見据えるために必読の一冊です。

 

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