マスコミ報道、TVニュースで「イスラム」という言葉が、飛び交っています。そして、受け取る側は、あんまりイスラム人に近づきたくないイメージを持ちがちではありませんか。

しかし、そのイメージがいかに誤ったものであるかを、はっきりと極めて分かりやすく教えてくれるのが、内藤正典「となりのイスラム」(ミシマ社/新刊1723円)です。世界の人口の1/4にあたる15〜6億人がイスラム教徒といわれているのですから、彼らと関わることなく生きてゆくのが困難になってきています。

「イスラムにはキリスト教の『原罪』という感覚はありません。単純な話で、『生まれてきた赤ん坊に罪なんかないだろう』ということです。キリスト教では生まれながら人間は『原罪』を背負っていることになっていますが、イスラムにはそういう”辛気臭さ”はありません。」

ミッション系の大学に通学していたので、「宗教原論」が必須でした。その講義で、のっけに出た言葉が「原罪」です。なんじゃ、それっ???の状態でしたが、この本に出会ってすっとしました。

イスラム教は、利子を禁じていることをご存知ですか。私は池澤夏樹の著書で、彼がそのことに賛同していたことから覚えていました。「簡単に言ってしまえば、眠っているあいだに金が増えたり減ったりするということがダメだという意味です。」何もしないのに、お金が増えているっておかしいですよね。高い利子に目がくらみ、無謀な投資を行い、すってんてんになった人の話はそこら中にあります。ちゃんと汗かいてお金儲けしようよっていうのは、当然の教えではありませんか。

著者はイスラム教徒の本質をこう見ています。

「他人を騙すようなことは決してしない、他人を見下さない、自分の家族を含めて、何が正しいことなのか、いつもそれを考えて行動する。」

だから、イスラム圏に旅すると、安心と平安をもたらすと感じるそうです。キリスト圏の国に旅した時には感じない、だらっ〜としたリラックス感に満たされるのだとか。そういうことを、著者自身の体験を交えて書いています。そこから、実際にイスラム教徒とお付き合いする時に、どうすべきかが丁寧に解説されています。お役立ち情報満載です。

さて、そんなイスラム教徒のイメージが凶悪なものになってしまったのは何故なのでしょうか。暴力組織として恐れられている「イスラム国」最大の問題は、「イスラム千四百年の『共存の歴史』に学ぶつもりがさらさらないということです。寛容であり、共存のために積み重ねてきたイスラムの伝統や知恵を、完全に無視してしまうことなのです。」

一方で、先の大戦で西欧列強が、今の中東・イスラム世界をずたずたに分割し線引きをし、植民地支配を続け、あげくにイスラム文化よりもヨーロッパ文化が上であると考え、無理矢理欧化させようとしたことが、イスラム国の暴力化に火を付けたのだといいます。フランスでは公教育の場から、イスラム教徒の女性が身につけているスカーフやヴェールの着用を禁止しました。彼女たちにとって、髪の毛やうなじは性的な羞恥心の対象です。だからスカーフなどで隠しているのです。例えば、ミニスカートをはくのが恥ずかしい人は、パンツルックにするとか、ロングスカートをはきます。何を着るかは、本人が決めることであって、国家があれこれ指示することではありません。イスラム文化が劣っているから、優美なフランス文化を教えてあげようというゴーマンフランスの姿なのです。

「これは国家をあげてセクハラを働いているようなものではないか。髪の毛をあらわにしてヴェールをとれば女性が解放されて自由になるとでも思っているのかもしれないが、それはミニスカートをはけば女性が自由になるといっているようなもの。逆に女性の側からいえば、性を商品化する行為そのものだ」と、著者は欧州評議会でぶち上げたそうですが、反応は,,,,,,,,,だったようです。

イスラムを学ぶことで、世界を違う角度から見ることが出来る書物です。