山田宏一と言えば、フランス映画を中心にしたヨーロッパ映画の批評で著名な評論家です。著書も多く、当店にある「山田宏一のフランス映画誌」(ワイズ出版/古書1800円)は、600ページにも及ぶ、監督別のフランス映画紹介の傑作です。

そんな山田が「NOUVELLE VAGUE/ヌーヴェル・ヴァーグ」(平凡社/古書2100円)という写真集を2013年に出していました。なかなか面白い写真集です。

「私はもちろんプロの写真家ではなく、ましてやアマチュアの写真家ですらありません。1960年代、フランス滞在中にヌーヴェル・ヴァーグの映画人と知り合い、活気にみちた映画的環境に誘われ魅せられて、初めて写真を撮ったのです」と序文で書いていますが、ジャン・ルック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、ジャック・ドゥミーら、新しい感覚の映画人たちが製作する、現場の熱い雰囲気が伝わってきます。山田がプロのカメラマンではなく、熱心な映画青年だったために、あ、これ映画的!というセンスでシャッターを押しています。ゴダール映画に出ていたアンナ・カリーナを控え目に撮った写真には、山田の彼女への愛情が感じられます。

おお〜、これは!!と感激したのが、ドゥミーが「ロシュフォールの恋人たち」を製作している現場の写真の数々です。出番のなかった主演のフランソワーズ・ドルレアック&カトリーヌ・ドヌーブ姉妹が、普段着で撮影現場に来ているところ(写真右)なんてレアです。普段着でもやっぱり美人姉妹です。当時24歳だったフランソワーズ・ドルレアックが現場に現れた写真(写真左)は、若いのに大人の風格を漂わせた彼女を見事に掴まえています。残念ながら、その1年後事故で亡くなってしまうのですが……..。

その次に登場するのは、「トリュフォーの思春期」の現場です。子供が大好きだった監督のトリュフォーが素人の子供たちを大勢使って、ほぼ即興で取り上げた映画です。子供たちに囲まれたトリュフォーの幸せそうな表情が素敵です。映画の撮影現場にはとても見えないくらい、生き生きとした表情の子供のキラキラした一瞬を捉えていて、素人カメラマンとは言えない出来映えですね。フランス映画ファンには見逃せない写真集です。

 

★レティシア書房「夏の一箱古本市」は、8月8日(水)〜19日(日)開催

★★ネイチャーガイド安藤誠氏の「安藤塾」は10月27日(土)に決まりました。参加ご希望の方は電話、メールにてご連  絡下さい

 

 

写真家、富士元寿彦の「原野の鷲鷹 北海道・サロベツに舞う」(北海道新聞社/絶版2900円)が入荷しました。表紙から、勇壮な姿で飛ぶオジロワシの写真です。堂々たる風格ですが、若いオジロワシが、「われ、こんなとこで何しとんのや」(関西弁?)とタンチョウに攻撃されて逃げてゆく写真もあります。

この写真集は、「原野の勇者たち1」として、オジロワシ、オオワシ、シロハヤブサなど6種類が、「原野の勇者たち2」で、オオタカ、クマタカ、ハヤブサなど10種類がそれぞれ紹介されています。北海道内の猛禽類の生息地としては、知床などの道北地方が有名ですが、日本海に面したサロベツ原野でも、多種類のワシタカを見ることができるのです。

勇猛果敢という点では、オジロワシが最たる存在でしょう。猛吹雪の中、餌を巡る小競り合いを捉えた写真は、その特徴を良く捉えています。しかし、歩く姿は、なんとも滑稽です。ステテコはいたおっさんが、いばり顔で町内を歩いているみたいで、笑えます。このオジロワシより、さらに大きなオオワシは王者という言葉がピッタリです。でも、流木の上で、10羽ほどのオオワシが、おしくらまんじゅうをするように並んでいる姿は、なんとも微笑ましいです。

威風堂々たるオジロワシが、湖上をぐるりと旋回したところを見た経験がありますが、もうかっこいい!としか言いようがありませんでした。オオワシは冬にやってきて、夏には日本を離れます。しかし、オジロワシの方は、留鳥として、夏も見ることができます。夏休み、北海道に行かれる方は、ぜひ大空を舞うオジロワシの姿を探してみてはいかがでしょうか。

精悍で美しいのは、極北の地から北海道に渡来するシロハヤブサ。猛スピードで狙った獲物に襲いかかる姿を、写真家は「白くて太い矢が飛んでゆくようだ。」と形容しています。海上で、急降下してカモメを捕まえることもあるようです。ただ、渡ってくる量が少ないので、なかなか見ることの出来ない珍鳥だそうです。

「ワシタカ撮影日記」というコラムの中で、写真家は写りのいいオオワシよりも、地味なオジロワシが好きだと言ってこう結びます。

「いくら見ていても飽きない何かがある。私が作った格言めいたセリフで言うならば『桜とオジロワシは日本人の心だ』ということになるのだが、残念なことに未だ誰にも理解してもらったことがない。」

桜とオジロワシか………。 

★連休のお知らせ 7月2日(月)、3日(火)

★夏の一箱古本市8月8日(水)〜19日(日)まで店内にて開催

山田悠人の新刊写真集「SILENT WORLD消えゆく世界の美しい廃墟」(PIEインターナショナル2700円)は、この上なく美しい写真集です。

ベルリンを中心にして活動する山田悠人は、ベルリンの各地に点在する廃墟に興味を持ち、撮影を始めます。

先ずは、病院から始まります。数多くの生と死の物語が染み込んだ病院の壁。ひたすら静寂が支配する空間。ベルリン自由大学解剖学研究所の解剖教室。中央に解剖台があって、その周囲を学生が取り囲んでいたのでしょう。落書きだらけの壁が哀れではあります。

次に登場するは軍事施設です。壮大で、威厳ある講堂や、大広間を持っていた施設。いずれもかつて国の最重要機関施設だったものが、放置されていました。ナチスドイツが使用した後、ソビエト連邦が引き継いだものなどあり、大戦を経て、冷戦時代の遺物となっています。外観が面白いので、内部も上手くリノベーションすれば、もしかしたら新しく生まれ変わりそうですが、電波傍受するレーダーサイト、トイフェルスベルグ傍受基地なんていう建物は、それ自体もうすでに現代アート化しています。

この写真集で私が最も面白かったのが、娯楽施設を撮影したものです。例えば、奈良のドリームランド。剥き出しの吸水管が複雑に絡み合う広場に立つビーナス像の不気味さ。回転するレールが幾重にも続くジェットコースター。まるで大蛇が見えない何かに巻き付いているみたいです。ドイツのシュプレーパークを撮った写真には、朽ち果てた森に倒れた作り物の怪獣の頭部が恨めしそうに空を見上げています。使い捨てられたアミューズメントパークは、どこか禍々しさがあります。

廃棄された工場がテーマの作品群は、無惨な姿がさらけ出されています。石炭火力発電所で使用されていた冷却塔の内部を捉えたものなどは、映画に使えそうなSFの世界です。男ばかりの重犯罪人が収容されている惑星を舞台にした映画「エイリアン3」に、そっくりの場面があったことを思い出しました。ブランデンブルグに残るナチスドイツ強制収容所パン工場には、陰惨な過去が染み付いているようです。

使われなくなった交通機関の中に、奇妙で、深い印象が残るものがありました。ベルリンのテンペルホーフ空港です。ピカピカに磨き上げられた到着ロビー、誰もいない飛行場にぽつんと駐機しているプロペラ機。冷えきった空間に置き去られた飛行機が、孤独感を増幅させます。

因みに、この空港の滑走路は、近年市民にために解放され、イベントも行われているとの事です。

なお同社からは「美しい土木・建設中」(写真/西山芳一2052円)も出されています。土木マニアなら、もうお持ちですね。

版型のでかい(37cm×27cm)150ページ程、定価9990円という「京都市今昔写真集」(樹林舎/古本4500円中身美本)が入りました。

おっ〜おお〜と表紙を見て驚きました。京都駅側から、真っ直ぐ北に伸びる烏丸通りを捉えた写真。現在は、ヨドバシカメラが建つ烏丸通りの西側に、丸物百貨店が写っています。この百貨店には、遊園地があり、館内には映画館まであり、地下の食品売場では、鯨の揚物を売っていました、なぜ、そんなに詳しいかと言えば、このデパートの向い側に、私の実家がありました。昭和20年代ぐらいの写真でしょうか、一気に幼少時代にタイムスリップです。

この写真集の構成の面白いところは、同一場所のかつて(昭和時代)と今(平成)が写真で対比されていることです。観光客で年中ごった返す「四条通、八坂神社前」。昭和47年当時、神社前には市電が通っていました。とても、とても京都の有名スポットとは思えません。或は、昭和30年代の京阪三条駅の写真には、旧タイプの京阪電車が木造駅舎を出るところが写っています。現在は地下にもぐってしまって、この風景はありません。

いつまで営業していたのかは分かりませんが、現在の高島屋デパートのすぐ側に映画館がありました。この写真集によると、映画館は龍池山大雲院境内に設営されました。三館あった映画館は、パレス大劇場、パレス劇場、パレス名画座と言って、「イージーライダー」も「卒業」も「アラビアのロレンス」もここで見た青春時代の思い出一杯の劇場でした。

見所は、もう山のようにあるのですが、鉄ちゃんのアナタには、必見ですぞ。旧京都駅(ここで祖母と食べたパンケーキの味は忘れられません)、旧国鉄バス、京阪電車、京福電鉄、市電そして梅小路機関区の蒸気機関車等々珍しい写真のオンパレードです。今では、左京区文化ゾーンの入り口みたいな京福電鉄出町柳駅舎の昭和30年代の建物も見逃せません。

 

●レティシア書房のお知らせ●

 年始年末 12月29日(金)〜1月4日(木)休業いたします。


北海道に行けば、かつては必ずと言っていいほどお土産になった、鮭をくわえた木彫りの熊。どこの家にも飾ってあって、でもその内にどこかにしまい込んでしまった、というお宅も多いと思います。

しかし、一刀彫の木彫り熊を作る藤戸竹喜(1934年〜)の作品は全く世界が異なります。

数年前、釧路湿原で「ヒッコリーウインド」を経営している安藤誠さんのロッジに宿泊した時、偶然にも藤戸さんのトークショーと作品に出逢いました。当時は、スミソニアン博物館で展示されているような人とも知らず、初めて作品を観せてもらったのですが、神が宿ると言っても過言ではないような輝きがありました。小さな熊の顔にとても魅かれたのですが、我々には高価で手が出ませんでした。無理をしても手に入れるべきだったと、後悔しています。

さて、新刊で入荷した「熊を彫る人」(村岡俊也・文/在本彌生・写真 小学館2484円)は、個人的にも持っていたい一冊です。藤戸さんの作品も沢山収録されています。森の中に置かれた熊たちの動きと表情をご覧いただきたいと思います。

「熊や狼という動物は、アイヌの人々にとって神なのだ。自身を取り巻くあらゆる自然、山であり、川であり、動物が神であるという考え方。いや、考え方というよりも、生き方と言った方が近いだろう。それは阿寒湖畔に暮す” 熊彫り”である藤戸竹喜の中にも息づいていて、その発露として木彫り熊はある」

写真ではわかりにくいかもしれませんが、つややかな熊の毛並み、大地を踏みしめる足先の力強さは、熊を神とあがめるアイヌの豊かな世界観が見事に結実しています。本の中程に、河原をぐっと睨み、鮭を探す一頭の熊の作品が載っています。全体にみなぎる緊張感が伝わってきます。

藤戸さんは17歳の時、札幌の植物園でエゾ狼の剥製に出会います。その剥製から何かが伝わったのでしょうか、40年ぐらい前から試作を初めて、20年ぐらい経過した頃から、いい埋め木があれば、狼の連作を作り始めています。雪の中に立つ狼。森の孤高の王者の尊厳が伝わります。藤戸さんはこう言います

「土に埋もれて灰色に変色した埋れ木で狼を彫って、なんとか狼を甦らせたかったのかもしれない。熊もとても大事な動物だけど、俺にとって狼はやっぱり特別な動物だ。」

作業場で一心に作品を彫り続けている彼の顔が、とてもいいんです。

 

★安藤誠ネイチャートークショー「安藤塾」今年も開催決定しました。

北海道のネイチャーガイドで、釧路ヒッコリー・ウインドオーナー安藤誠さん(写真左・愛犬キャンディと)のトークショーを10月25日(水)19時30分より開催します。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

 

 

森岡書店店主が推薦する写真集をまとめた「写真集 誰かに贈りたくなる108冊」(河出書房コロナブックス1500円)は、ユニークな本です。

森岡さんが気になる人、平松洋子、大竹昭子、坂口恭平、辛酸なめこ、ピーコ、しまおまほ、など様々なジャンルで表現活動をしている人に、貴方にはこんな写真集がお薦めという切り口で、本と推薦した理由を書いた文章を添えています。

例えば、坂口恭平には、こんな文章でスタートします。

「海には『海の幸』があり、山には『山の幸』がありるように、都会には『都市の幸』があるという坂口さん。『都会の幸』という観点からすれば、路肩にすてられているゴミや、川面に漂う廃材は、一転して実り豊かな生活資源として立ち現れます。」

そんな都市の幸を巧みに生活に取り込み、小さなダンボールハウスに住まいする人達の豊かな想像力に共感する作家へ送る写真集はフィリップ・モリソン他による「POWERS OF TEN」です。その推薦理由は

「本書は、宇宙の果てから、物質の最小単位までを旅するように構成されていて、目には見えない世界の広がりを見るという意味で、やはり想像力が要になっているといえます」

また、ピーコに贈りたいという写真集は、資生堂初代社長にして、写真家だった福原信三が、1922年ヨーロッパ滞在中に撮影した「巴里とセイヌ」。

ガンを告知され、片目を摘出し、数年間死と向き合ったピーコの著書「片目を失って見えてきたもの」を読んだ森岡さんは

「作者の『人格・個性』が『写真芸術』の『内容』を作る、と強調していた福原信三の観点からすると『巴里とセイヌ』に写しこまれた写真の美しさと、『片目を失って見えてきたもの』でピーコさんの伝えたい人間の美しさは、同じ意味といってもよいと思うのです。」と書いています。

写真集を贈る側と贈られた側の思想、美意識をみることのできる一冊です。

筆者が自ら経営する書店のことを書いた「森岡書店のこと」も収録されています。オープンから今日までの、長いようで短い道程を読むことができます。ぜひ行きたい書店です。

 

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「本を読むというのは元来のんびりした趣味であって、それこそ川辺に椅子を出してそよ風の中で読みすすみ、時に柳の葉が頬をなでるというようなエレガントなものであるべきだ」

と池澤夏樹は書評集「風がページを」(文藝春秋1100円)で書いています。

静かに時の流れる中で、本を読む事の至福を撮影したアンドレ・ケルテスの写真集「読む時間」(創元社2376円)は、とてもステキな本です。様々な場所で、様々なポーズで読書する人たちを捉えたこの写真集の、お気に入りのページをぐっと開いて、机の上、或は食卓に置き、そして、今度は自分の読みかけの本を開いて読み出す。ちょっと疲れたら、先程開いた写真集を眺める。すると池澤が述べたようなエレガントな時間が流れてきます。次の日には、違うページを開いて立てかけておく。本は傷むかもしれませんが、それがこの本の正しい使用法です。(と、思います)

「読む時間」の巻頭に谷川俊太郎が「読むこと」という詩を寄せています。その後半を引用します

「いまこの瞬間この地球という星の上で いったい何人の女や男が子どもや老人が 紙の上の文字を読んでいるのだろう 右から左へ左から右へ上から下へ下へ(ときに斜めに) 似ても似つかないさまざまな形の文字を 窓辺で木陰で病床でカフェで図書室で なんて不思議・・・・あなたは思わず微笑みます 違う文字が違う言葉が違う声が違う意味でさえ 私たちの魂で同じひとつの生きる力になっていく しばらく目を木々の緑に遊ばせて あなたはふたたび次のページへと旅立ちます」

本なんて読まなくても生きていける、でも本を読む幸せを知っている人なら、この写真集を捲るたびに微笑むことでしょう。41ページには、おそらく阪急電車だと思われる車内で、頭を剃った和服姿の女性が、手元の本に目を落としている作品が載っています。車外から射し込んでくる日光が彼女の手元をやさしく照らしています。タイトル通り「読む時間」が流れていきます。

★レティシア書房臨時休業のお知らせ 4月17日(月)18日(火)連休いたします。

 

トラピスチヌ修道院は、函館市郊外にあるトラピスト会系の女子修道院「天使の聖母トラピスチヌ修道院」の通称で、通称天使園とも呼ばれる日本最初の女子修道院です。

この修道院は周囲を高い堀で囲っていて、家族であっても立ち入りは許されません。中では、厳しい戒律を守りながら、隠遁修道生活が営まれています。

この修道院の設立100年を迎えるに当たって記念の写真集を発行することになりました。それが、野呂希一の写真集「天使の聖母 トラピスチヌ修道院」(菁菁社1400円)です。修道院の写真集?と思われるかもしれませんが、素敵な写真集です。

農作業をする修道女達の背後に広がる夏の青空、緑色の畑の眩しさ、稲作業を包み込むような冬の陽射し、修道院の中に射し込む柔らかい光、朝の祈りの後、廊下を静かに進む修道女達の清らかさ、等々心休まる作品が次々と登場します。図書室や、個室で一心に読書に励む彼女たちの後ろ姿には、「学ぶ」という事のプリミティブな姿が捉えられている気がします。

写真家が修道院の内部撮影をすることになったきっかけは、あるシスターが、野呂希一の作品集「WOODS」に共感し、自分たちの考えが「WOODS」の視点と共通するということでした。そして、「生命の織物」というコピーを野呂さんに渡されたことで、お互いを理解できたのです。

それは、1854年、アメリカの先住民達の土地を時の大統領が買い上げたいという申し出に対して、ネイティブアメリカンの首長が大統領に送った手紙でした。

「我々の住む土地も空気も聖なるもの。それらは人間の所有物ではなく、人間も大地の一部で、大地は自分自身、あらゆるものはつながっていて、人間が生命の織物を織ったものではなく、織物の中の一本の糸にすぎないのに、それをどうして売買などできようか」

というもので、「環境問題の旧約聖書」と呼ばれています。

この修道院では、自然のうちに生かされていることを最も大事に考えています。だからなのでしょうか、この写真集は、野外で自然とともに生き、働く姿が数多く収められています。所有しないことの美しさ、働くことの喜び、移り行く自然の姿が崇高に、見事に捉えられています。

蛇足ながらここで作っているクッキーが美味しくてお土産として人気とか。函館で買えるのかなあ?

写真家のかくたみほさんの新刊「MOIMOIそばにいる」(求龍堂2484円)が入荷しました。彼女には、当店のギャラリーで、二度個展をしていただきました。

2006年、初めてフィンランドを訪れたかくたさんは、この国の魅力にハマり、その後十数回も渡航を重ねます。

「自然の恵みを活用して循環できている中に、生きる人と動物の知恵があり美しいのです。日本のように自然信仰がベースにある考え方は居心地良くて、みんなが仕事より暮すことに重きのある生活を送っていることにも惹かれました。」と、書かれています。

当店での写真展で在廊中に、我が家の愛犬マロンを撮影していただきました。ちょうど2015年度のカレンダーの仕事で、犬をたくさん撮影していらした時で、なんとマロンは、表紙になりました。(その時の飼主のバカ喜びぶりは以前ブログに書きました。)

犬の写真には定評のある彼女なので、この写真集でも、フィンランドの優しい自然の中で、のんびり暮す犬たちが撮影されています。犬ぞりで冬の大地を駆け抜ける作品は、おそろしく寒いだろうけど、たまらなく魅力的な夜明けが撮影されています。

「犬ゾリで凍った湖の上を走る。am10:00明るくなり始めた美しい空。太陽が低いのでピンクとブルーのファンタジーな色が数時間続くのが日本の空とは違う。私が冬に魅せられた色だ。」疾走する犬ゾリの前方にうっすらとピンク色で輝く地平線が美しい。

犬ぞり最後尾を走る、しっかり者の犬が、ちゃんと付いて来てる?と振り返ってチェックする様を捉えたユーモアたっぷりの作品などを見ていると、かくたさんと、この犬の間に伝わるものが感じられます。

サンタクロースが住んでいるとされているラップランド。スウェーデン、ノルウェイ、フィンランド、ロシアの4カ国にまたがっている広大な場所は、原住民のサーミ人が暮らしています。かくたさんは、ここを訪れて、トナカイと暮す人達もファインダーに収めています。湖に佇むトナカイを見ていると、サンタさんが住んでいても不思議ではないと思いました。

サーミの華やかな民族衣装に身を固めた人物が、飼っているトナカイと一緒に収まっている写真が最後を飾っています。暖炉にあたりながら、魅力的な神話を語ってもらえそうです。

彼女の前作「キラリキラリ」(パイインターナショナル)も置いていますので、こちらもぜひご覧下さい。

◉写真集発売記念の個展が神戸であります。5月12日〜31日 神戸・iiba ギャラリー

 

 

“お散歩”フォトグラファー、呑海龍哉さんの写真集 「京都夢物語」(DOM・PHOTO1944円)が入荷しました。

「若旦那」という名前の、唐草模様の手ぬぐいを撒いた子いぬが扉から外を覗いている表紙からして、微笑ましい。花街に出没するサギを捉えた「予約のサギですけど」という作品のお隣には、祇園祭のサギ舞の写真が並べてあるセンスも面白く、次の写真をとページを捲りたくなってきます。こんな風に、ユーモア、ペーゾスを交え、京都のごく日常の姿を捉えていて、いかにも、ザ・京都的な写真はありません。

時代劇さながらの雰囲気で尺八を吹く男を捉えた「さすらいの尺八奏者」、静かな朝チェロの練習を、クラブのボックスで一心不乱にする女子学生の姿を捉えた「練習中」、あぁ〜今日も客が来ねえなぁ〜、とため息混じりの飲み屋の親爺の後ろ姿を撮った「今日も坊主」等。私が思わず笑ったのは、「気分は銅像」。これ、三条大橋にある銅像につながれたワンちゃんの微笑ましい姿をおさめたもの。もうひとつ、横転した車を起こそうと、必死になっている警官たちを捉えた「よっこいしょ」も、「頑張れ」と声を掛けたくなります。

さて、もう一冊京都関連本のご紹介。絵本「市電22番」(文理閣1800円・初版)です。タイトルにあるように、京都市内を走っていた市電22番系統を主人公にした絵本です。市電に乗って、通学、通勤された方には、あのパンタグラフ、つり革、正面から見た面構えなど、懐かしいなぁ〜と思われるのではないでしょうか。

表紙をめくると北大路橋を往く市電と、鴨川で遊んでいる子供たちを捉えた写真が載っています。かつてここにも市電が走っていたんだなぁ〜という感慨に耽ってしまいました。絵本は、交通渋滞の一因にもなりかねない市電の撤去を描いています。

「バスのほうが好きや 早いもん そやかておいこせるやん 電車はレールの上 走ってるしおいこせん なんで しでんなくなるや 車はしるのに じゃまになるしかな」

という子供のモノローグ通り廃止になりました。ラストカットは、どしゃぶりの雨の中を、遠くに消えてゆく市電を描いてあります。市電が泣いていたのかもしれません。

なお、この絵本ほ発行は1978年。一応ビニールで保護していますが、表紙カバーに破損があることをご了解下さい。

呑海龍哉さんの写真展は、2017年1月31日(火)〜2月5日(日)レティシア書房にて開催予定