本に関する書籍を発行している神戸市の出版社、苦楽堂の作品はユニークです。

先ずは、3冊シリーズで出版されている「次の本へ」(1944円)。様々な人たちが紹介する「面白い2冊目」とどう出会うかを集めたユニークな本です。一冊は読んだ、しかし次にどんな本を読めば良いのかをわからないという方々へ、こんな本からあんな本へと繋がったということを紹介してくれます。フランクルの「夜と霧」から、同じ著者の「それでも人生にイエスと言う」という繋がりは、成る程と思いました。坪内祐三「靖国」から赤坂真理の「東京プリズン」も戦後を考えるということでは納得です。でも、中にはそっちへ向かうのかとびっくりさせてくれるものも沢山あります。

この本は売れたので、第二弾「「続・次の本へ」(1620円)が登場しました。山崎ナオコーラ、山折哲雄、最相葉月などの著名人も参加、さらにヒートアップしていきます。第三弾「次の本へ しごと編」(1728円)は、少し切り口を変えて、囲碁棋士、映画館支配人、喫茶店店主、遊覧航海士、ラジオ記者など、様々な仕事をしている人たちが、一体どんな本を読み繋いでいるのかを集めています。元保育士の方は、「怪獣大図鑑」から「特撮秘宝Vol.1」へ。コンサートホール企画に携わる人は、「戦後日本のジャズ文化」から「芝居上手な大阪人へ」などフムフムの連続です。

さて、こんな本出すのか!とびっくりしたのが「スリップの技法」(1543円)です。「スリップ」は、新刊本に挟まれている栞みたいなもので、新刊書店で本を買うと、このスリップは店員が抜き取ります。集まったスリップをもとに在庫のチェック、発注や売場の管理に使います。業界人以外にこんな本読むの?と半信半疑で置いてみたら、数冊売れました。お買いになられたお客様に書店関係の方ですか?と聞くと、「いいえ、でも面白そうだから。」というお返事に、そうか〜面白いと思う人がいるんだと感心しました。

もう一冊。「真っ直ぐに本を売る」(1944円)は、出版社から直接仕入れをしたり、もっと簡便なやり方で本を仕入れるやり方を説明した本です。これまた本屋さん以外の人は読まないのかと思っていると、違う商売の方が買われたり、メディア関係の方が買われたりと面白い売れ方をしている本なのです。

およそ一般向けとは言い難い本を出版する、苦楽堂を応援していきたいと思っています。

レティシア書房連休のお知らせ

誠に勝手ながら、6月3日(月)4日(火)連休いたします 

 

インドの小さな出版社タラブックスについて書かれた「タラブックス」(玄光社/古書1700円)。タラブックスの出す手作り感一杯の絵本は、何度読み返しても、飽きてのこない本です。この出版社がどんなポリシーで本を出しているのか、今までに出版された本、タラブックスで働いている人びとのインタビューなど、さまざまな角度から魅力を探っています。

タラブックスは、1995年、独立系児童書専門出版社として、スタートしました。出版社を引っ張るのは二人の女性です。創設者のギータ・ヴォルフは、比較文学を学び、パートナーのV.ギータは、編集者であり、作家であり、また子どもの教育や女性問題などの社会問題に取り組んでいます。タラブックスが目指したのは、インドだからこそ生み出せる、インドの子どもたちに読ませたい、インドの子どもたちのための本です。

「六ヶ月かかります」

これは、内外からの注文に対するこの出版社の返事です。どれだけ長い時間がかかろうと、本の職人たちが自信を持って届けられるかが大切な事なのです。良い物は、時間がかかるのです。私たちは、何でもすぐに手に入る時代に生きています。常に新しいものを提供され、洪水のような商品とサービスに慣らされています。

「大量生産と大量消費と大量破壊は繰り返される。目新しいものに飛びつく一方で、私たちは成長を強いられる資本主義経済にうんざりし始めている。いつまで大きくなりつづけなければいけないの、と。」

タラブックスの考え方は、こういう時代へのアンチテーゼでもあります。そして、タラブックスは、少数民族、インド社会から見捨てられた弱者も積極的に会社に迎え入れ、働く場所を提供しています。本に携わる人たちが豊かに暮らせる会社を目指しています。

ギータ・ヴォルフとV.ギータのインタビューが掲載されていますが、その中で、ギータが、会社を大きくすることに意味がなく、小さい規模で全てのメンバーと共同作業をしてゆく重要性に触れながら、こう述べています。

「本(仕事)の質を保ちながら、私たち同士の良い関係性を保ち、働いている人たちとその仕事の関係性を保つためには、比較的ちいさくあるということが大切」

出版社の紹介から、仕事のあり方、社会の在り方までに言及していきます。

巻末に、この出版社が出した書籍が、カラー写真で紹介されています。まだタラブックスのことをご存知ではない方は、このリストをご覧ください。なお、6月25日から、京都細見美術館で「世界を変える美しい本 タラブックスの挑戦」展が始まります。これは、行かねばなりません。

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