昨日(10月27日土曜日)は、北海道のネイチャーガイド安藤誠さんのトークショーの日。毎年この時期に釧路から、いつものように大きなバンに一杯荷物を積んでご来店…..と、思っていたら、午後4時頃、爆音を響かせた派手なバイクが店の前に止まるではありませんか。バイクで北海道を発って、各地で講演しているという噂は聞いていましたが、オイオイ、ホンマに来た!バイクにはてんで興味がない私には、性能とかスゴさなど全くわかりませんが、さあこの写真をご覧下さい。

午後7時ちょうど。トークショーの安藤節は、いつもにもまして快調に始まりました。

「アラスカには二種類の人間しかいないと言われています。一つはチーチャコ、もう一つはサワドゥ。前者の意味は、アラスカ生活1、2年でギブアップして逃げる、いわば根性なし。後者は、アラスカ在住10年以上の、ホンモノ」。毎年オーロラツアーを率いて訪れるアラスカの話から、30年ぶりに買ったバイクのこと、そして北海道、アラスカの自然の話へと移っていきました。

可愛らしいキタキツネや、円満夫婦のエゾフクロウ、そして、昨年のトークに登場した知床の兄妹クマが独立し、妹クマがお母さんになった写真などが映し出され、大自然に生きる彼らの豊かな表情に、参加者から、歓声やら溜め息が上がりました。どの動物達も素敵でしたが、アラスカで撮影されたエリマキ雷鳥の求愛の姿が、特に印象に残りました。

欲望に取りつかれた奴、権力の溺れた奴など腐敗した輩がインチキ政治を行っている今の時代の危うさを憂い、しかし、私たちはそんな輩に騙されないようにするために、インチキもヤラセもない自然をしっかり見つめることが大事なことだと力説されました。

後半は、ミャンマーに行った時に撮影した写真をもとに、この国の人々の姿や、市場の風景、漁師さんの日常などの話へ。生活水準は日本の100年前かもしれないが、スマホのおかげで最新情報は獲得しています。生活も日常もすべてネット社会に組み込まれてしまった我が国とは違い、自然は保たれ、昔ながらのゆっくりとしたペースの生活で、最新情報にアクセスして、新しい知識を吸収しているミャンマーが、これからどんな人間を輩出してゆくのか興味あるところです。

そして、アメリカスミソニアン博物館主宰のネイチャーズベストフォトグラファー動画部門グランプリを受賞した、安藤さんの動画を鑑賞して、今年の会は終了。ぜひ冬の北海道へ行きたい!!と、参加者全員が思った事でしょう。(特に私)ごく内輪で遅い晩ごはんを食べ、クマ男は爆音を響かせ次の地へと向かいました。

 

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1962年5月15日、文学者串田孫一は旅に出ます。

「北海道へ、雨の中の出発だった。 昨夜荷造りをすっかりすませてから、山靴に油を塗った。尾をピンと立てた鷦鷯の印のついているイギリス製の油をたっぷり塗ったその靴をはいて、荷を担ぎあげると、気分はここで笑いたくなるほど明るくなった。音のない細かい雨が降っている。」

上野から夜汽車に乗り、北海道へ。この旅の全貌を、その日その日の日記と、友人に宛てた手紙形式で描き綴ったのが「北海道の旅」(筑摩書房/古書1900円)です。二百数十ページに渡って詳細に旅で出会った風景、人々のことが書き込まれています。串田は写真撮影が苦手と断った上で、知人の三宅修が撮影した北海道の写真が、何カ所かに渡って挿入されていて、当時の北海道の姿を見ることができます。

「その冷たい、紫の山から吹いて来る風をいっぱいに吸い込んで、昨夜の朝からの汽車と船との旅で、体の中に重たくよごれて留まっている感じの空気と交換する。」青函連絡船が函館に近づいた夜明けに、旅への期待を美しい文章で表現しています。

串田孫一は哲学者であり、思索者であり、随筆家で、詩人で、登山家でもありました。代表作「山のパンセ」に見られるように、山を歩きながら思索をめぐらせ、味わいのある随筆を書いていました。旅の記録に徹しながらも、瑞々しい感性の文章は、読みやすく、この「北海道の旅」も彼が見た北海道の自然が目に浮かびます。当時、空の旅なんて論外で、鉄道網もまだまだの時代です。ゆっくりと進んでゆく汽車や船のテンポが心地良くなってきます。

「出帆の時刻が来ても船は少しもそんな用意をする気配はなく、切符売場に行ってみると、お客が少ないので、一番小さい船が湖の向こうから戻って来るのを待ち、それに乗ってくれと言われました。その一番小さい船が湖上の霧の中からぽつんと見えてきました。そしてそれが船だと分かるまでに十分、この桟橋に着くまでにまた二十分かかりました。」

このゆったりした感覚は、今の旅にはありませんね。また、とある宿屋で珈琲を出してもらったところ、珈琲色に煮出された紅茶でした。「この煎じ茶のような紅茶を飲みほすのには、勇気だけではだめだった」とユーモアで括っています。

万事この調子で、「こういう旅ではあまり強い、烈しい感動をいちいち期待してはいけないので、むしろ旅心淡々、ねむくなれば車窓に凭れ、風に吹かれてうとうとしたって構わないし、そんなに緊張を続けていたら疲れてしまうでしょう」と旅の極意をサラリと書いています。

こんな感じで旅は続くのですが、一カ所だけ怒りを爆発させています。それは十勝岳に登った時の事です。そこに「第十普通科連隊重迫中隊登山記念、三六、九。四」と自衛隊登山記念の碑が立ってあるのを見て、その無粋な感覚、みっともなさに怒りをあらわにしています。山を愛する者として、軍隊の暴挙は許せなかったのでしょうね。

慌ただしい今を生きる私たちは、このように長い時間をかけてゆっくりと旅なんてなかなか出来ないですから、この本で旅心を少し味わってみて下さい。

 

昨夜、北海道のネイチャーガイド&ペンション「ヒッコリーウインド」のオーナー安藤誠さんをお迎えしました。毎年、秋には釧路を出発して、札幌、東京、大阪など依頼のある所で、北海道の自然や魅力について、伝道師のように講演されています。当店でのネイチャートークは、今回で6回目。つまりレティシア書房開店以来、毎年開いています。お会いする度、私とは大好きな音楽談義で盛り上がります。安藤さんは写真家としても活躍されているので、美しい写真を見ながら、クマとの超接近遭遇の驚きの話など、14人のお客様(小さな店は満杯です)とともに時間を経つのを忘れて聴き入りました。

彼の来店に合わせてというわけではないのですが、北海道関連の、特にアイヌ民族関連の本で面白そうなものが入荷しました。岡和田昇&マーク・ウインチエスター編集による「アイヌ民族否定論に抗する」(河出書房新社1500円)、杉山四郎「武四郎碑に刻まれたアイヌ民族」(中西出版1200円)です。

前者は、2014年、札幌市議会議員、金子やすゆきの「アイヌ民族なんて、いまはもういないですよね。せいぜいアイヌ系日本人が良いところですが、利権を行使しまくっている」というネット上での発言が引き金になって、アイヌ差別発言の嵐が吹いていることへの異議申し立てを、香山リカ、池澤夏樹、寮美千子、当店でも個展をしていただいた版画家、結城幸司さんなどが、それぞれの立場で意見を述べたものを編集したものです。

北海道出身の精神科医、香山リカは、この発言の後、エキサイトするヘイトスピーチには、アイヌと申告する人へのDNA鑑定の義務付けを主張した輩がいることに愕然としました。これって、かつてナチスドイツがやったような民族の選別へと繋がる危険があると指摘しています。在日韓国人、沖縄、そしてアイヌと、私たちは知らず知らずのうちに、恐ろしい立場に立っていることを示唆する一冊です。

後者の「武四郎碑に刻まれたアイヌ民族」は、江戸末期から明治にかけて、当時蝦夷地と呼ばれていた北海道をアイヌの道案内人と共に何度も探検し、地図を作成し、北海道という名称を付けた松浦武四郎と、アイヌの歴史を克明に調査した報告書です。この地には、30もの武四郎碑がありますが、一人にこれ程多くの碑があることは驚くべきものです。筆者は丹念にこれらの碑を調査していきます。その中から浮かび上がる武四郎とアイヌの関係は……。因みに、彼はアイヌ民族への搾取を温存する政府の開拓使を批判して、官僚の職を辞めています。

さて、昨日入荷した帯広発の雑誌「スロウ」最新号(税込905円)では「ちいさな絵本のお店」と題して、「絵本屋カフェ南風」を営む出町南さんと、札幌の絵本専門店「花さき山」の道端友子さんが紹介されています。道端さんは、京都旅行で、当店に立ち寄っていただいたというご縁があります。道端さんがその時持っておられた絵本「ぼく、生きたかったよ」を初めて見て原画展の運びになったことを、改めて思いだしました。

松岩達(文)、冨田美穂(絵)による「おかあさん牛からのおくりもの」(新刊・北海道新聞社1836円)が届きました。

当然ですが、日々口にしている牛乳、チーズ、バター等々は牛からの贈り物です。そんな牛たちを飼っている酪農家の毎日を追いかけた絵本です。牛をよく観察して描き込まれています。

この絵を担当した冨田美穂さんの個展が、来週火曜日から当店で始まります。東京生まれ、武蔵野美術大学卒業後、北海道に渡り酪農業に従事しながら、牛の木版画、絵画を制作されています。知床発のミニプレス「シリエトクノート」に掲載されていた作品に出会ったのをきっかけに、京都初の個展をしていただくことになりました。

リアルな牛の作品を制作されていて、右の作品展のような大きなものが特徴的です。こんな大きな作品、小さな本屋のギャラリーに飾れるの?と思いましたが、今回は、中サイズと小サイズの牛が並びます。

絵本では、反芻する牛とか、牛舎のお食事タイムとかに描かれている牛はリアルであり、また愛嬌たっぷりです。生まれてから、最後に屠殺場に送られるまでの牛と農場との生活が解りやすい文章で書かれています。小学校中学年以上に向けられて書かれた本ですが、大人にも読んでもらいたい内容です。

子牛は、生まれて14ヶ月程で、オッパイが大きくなり、発情期を迎えます。そうすると酪農場に人口授精師が来て、人工授精を行い、赤ちゃんを生ませます。そしてお乳が出ます。そのお乳を分けてもらっているのが私たちです。因みに酪農場にオス牛はいません。彼らは生まれた後、肉牛牧場に引越して、牛肉になるために育てられます。何度かの妊娠後、雌牛は、「おつかれさま」という言葉と共に解体牧場に運ばれていき、加工用の肉にされます。我々は、牛乳から、お肉まで牛にお世話になっているということです。

 

 

そんな牛について、冨田さんは、「初めて間近に見た牛は、とても大きくて。あたたかくて、ふわふわしていてとてもかわいいものでした」と語っています。そして、酪農家が大切に育て、獣医さん、授精師さん、工場の人達など多くの人が誇りを持って働いている姿をしってほしい。食卓に並ぶ肉や、牛乳のことを知ってほしい、とこの本ができました。

個展最終日の5月7日(日)には、知床から作家が来廊予定です。動物好き、北海道好きの方、彼女とお話してみてはいかかでしょうか。東京から北海道に住まいを移し、牛を見つめて暮らしている彼女のハートウォーミングな眼差し溢れる作品展に、ぜひお越しくださいませ。

★冨田美穂「牛の木版画展」 4月25日(火)〜5月7日(日) 月曜定休日

えらくタイトルの長い雑誌ですが、北海道の自然を様々な角度から捉えた「ファウラ」のバックナンバーが数十冊入ってきました。2004年から10年にかけて出版されたもので、今は絶版状態です。毎号特集が魅力的なので、少しご紹介します。

北海道を代表する動植物の各号の特集は、「エゾモモンガ」、「エゾナキウサギ」、「オオワシ・オジロワシ」、「タンチョウ」、「エゾリス」とけっこう揃っています。知床羅臼にて撮影された鷲の勇姿、堂々たる飛翔姿は王者の風格です。しかし、この雑誌は、単にその姿を捉えているだけでなく、彼らの現状、例えば風力発電用風車に巻き込まれる事例や、鉛弾薬中毒死問題も取り上げ、その環境の危うさに言及しています。

エリアの特集号としては、「奥尻島へ行こう!」、「北の”二つ島”礼文・利尻」、「知床」、「洞爺湖・有株山」、「北海道の『冨士』」、「渓流、渓谷」、「摩周・屈斜路」など、魅力的な地域が並んでいますが、観光案内でないことは言うまでもありません。

思わず読んでしまったのが「ブラキストン線」の特集号です。1880年、函館で貿易商を営んでいたトーマス・W・ブラキストンが、津軽海峡の北と南では動物相が変化していることを提唱しました。後に、この海峡が動物分布境界になっていることが判明、ブラキストン線と命名されました。その境界線のあちらとこちら側を写真と文章で見つめています。へぇ〜、そんなもんがあったのか………です。

お気に入りの写真は「北国の冬を生きる」という号で、オジロワシが、絶命した子鹿の死体に食らいついている作品です。子鹿が正面から撮影されていて、まさに絶命した子鹿の表情が明確です。ワシは鹿の肉を喰らうことで、自らの命を保っているという、命の連鎖をはっきり表現しています。

こんな風に、どのページも見所満載も雑誌です。ネットでは、一部数千円で取引されているものもありますが、良心的?レティシア書房では、オール500円です。

 

 

 

 

★★カナダ在住で、ドールシープを撮影されている写真家、上村知さんの写真展を11月1日(火)〜13日(日)まで開催します。5日(土)夜に、上村さんによるスライドショー 「極北 カナダ・ユーコン&アラスカの旅と暮し」(7時より)を予定しております(要・予約 レティシア書房までお願いします)

10月28日(金)『ネイチャーガイド安藤誠さんの自然トーク「安藤塾」』は、満席になりました。

尚、「安藤塾」は、10月29日(土)19時より「町家ギャラリー龍」にて開催します。こちらの方は、参加者募集中です。お問い合わせは直接 「町家ギャラリー龍」(075−555−5615)まで。

「夏の一箱古本市」終了後、数日間お休みをいただき、北海道へと向いました。

台風が北海道に上陸して被害も伝わる中、当日はまたもや台風が関東方面に…..。飛行機は定刻通り飛んだものの、釧路はやはり雨でした。

出迎えてくれた鶴居村の宿ヒッコリーウインドオーナー、安藤誠さんは、ネイチャーガイドでありプロカメラマン。握手するなり「今から、知床に向かうよ。」って、この雨の中を??

数時間のドライブで着いた所は、鱒が遡上する「さくらの滝」。恐ろしい水量の川を、果敢にアタックする姿を見て、ワクワク!その後、神秘的なコバルトブルー色の「神の子池」に向かいました。摩周湖からの地下水が湧き出ている山の奥にある池で、摩周湖(カムイトー=神の湖)の伏流水からできているという言い伝えからそう呼ばれています。周囲220m、水深5mの小さな池で、 水が澄んでいるので底までくっきりと見えます。

 

翌日は快晴。お約束のカヌーツアー・・・・しかし、河に行かず、山の中へ。安藤さんと、ネイチャーガイド研修生ケンちゃんが、30キロのカヌーを担いで、森の奥へと向かいます。立て看板には「ヒグマ出没注意」。道なき道を抜けて到着したのは阿寒国立公園内「ひょうたん沼」。

辺り一帯を支配する静寂。滑るように湖面を移動するカヌーのパドルの音だけが聞えます。東山魁夷の作品のような森の風景。大きな自然に抱かれている心地よさとはこんな情景のことなのだと思いました。

安藤さんはまたギターリストでもあり、音楽好き仲間として、会えば話が盛り上がる関係で、その夜はヒッコリーウインドに、ギタリストの藤本裕治さんが駆けつけ、突然のライブ。素敵なブルースで夜が更けていきました。

翌日は、釧路の西北、白糠町で義弟がやっている茶路めん羊牧場で、牧場が運営するレストラ「クオーレ」に行き、羊肉を使った料理を楽しみました。「クオーレ」は昨秋開店し、地元の若いシェフが、美味しい料理を出すという評判をもらっていて、今回の旅の目的の一つでした。メインディッシュの「仔羊のロースト 季節の野菜添え」(写真右)は絶品。暮れてゆく牧場風景を遠くに見ながら数日のバカンスは終了となりました。

 

★なお、毎年当店で開催している安藤誠「安藤塾」は10月末を予定しています。正式な日時が決まりましたら、お知らせします。今年もまた美しい写真と共に、楽しい話が聞けると思いますよ。

「いっぺん、思いっきり声を出せるところでやりたいの」

おっ〜、のっけからドギツイ文章ですぞ。これ、桜木紫乃の短篇集「ホテルローヤル」(集英社文庫300円)の中の一篇、「バブルバス」に登場するフツーの中年夫婦の会話です。桜木は本作で直木賞を受賞しましたが、そんなに興味はありませんでした。ところが、川本三郎の新刊で、彼が絶賛してたので、どれどれと店にあった文庫に手を延ばしました。

不覚、不覚!北海道の湿原近く(多分釧路です)にある閉鎖されたラブホテル「ホテルローヤル」を舞台に、このホテルに行き交った男と女の一瞬を描いて、絶望と、あるかないかの微かな未来を描ききっています。お見事!としか言いようがありません。

アダルトグッズ販売屋とホテル従業員、貧乏寺の住職の妻と檀家、寒空に放り出された女子高校生と、妻の不倫に悩まされる教師、そしてラブホテルの清掃をする女性と、様々な人達が登場してきます。

「唾液で濡らした正太郎の先端が体の中へと入ってきた。少し痛いが、なんということはなかった。我慢していればすぐに終わる。夫に優しくしてもらえるのも、この時間があるからだとミコは信じている。みんな、ここから生まれたりしてここで死んだりしている。体の内側へと続く暗い道は、一本しかないのに、不思議なことだった。」

こんな文章は男性には書けません。明瞭で、簡潔なタッチが読者をグイグイと引っ張ります。これだけ的確で、冗長なところのない文章がかけるなら、ハードボイルドものもいいだろうと思っていたら、なんと「ブルース」という本で「釧路ルノワール」を展開しているとか、読んでみなくては。

解説で川本三郎は、本作の構成の巧みさを指摘、こう書いています。

「時間の流れが、現在から過去へと逆になっている。普通は過去から現在に至るのに、この小説では現在から過去へとさかのぼる」

廃墟となったホテルから物語は始まります。廃墟のホテルを覆う悲しさ、侘しさ、寂しさが最後まで登場人物にのしかかってきます。あろうはずのない明るい未来。だが、もしかしたらという僅な希望。

昨年、私のベスト1映画だった橋口亮輔監督の「恋人たち」のラストに「微かな希望」を象徴するような青空が出てきます。この本の中で、ホテル清掃員のミコさんを描く「星を見ていた」のラストに、悲惨な現実になすすべもない彼女の頭上に満天の星空が登場します。それもまた「微かな希望」なのかもしれません。

店には「水平線」(文春文庫400円)、「誰もいない夜に咲く」(角川文庫400円)もあるので、引き続き読んでみます。ホントにお薦めです。

 

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「ぼくらは知床(ココ)に暮らしている。あかしのぶこ 動物たちの肖像画展」(17日まで)には、関西出身のあかしさんの京都での初個展ということで、連日お知り合いの方々が、見に来て下さっています。

京都在住Yさんは、1年半前に南から北まで日本縦断旅をして、網走で出会った「はぜや珈琲」さんの所から、あかしさんのDMを送ってもらったのだそうです。親切にしてもらった北海道の人達との思い出、旅はとても楽しくて、そこで仲良くなったお店からの紹介なんて、それこそご縁ですね〜、と色々お話してしまいました。京都だから行ってみてあげて、ということだったのでしょうが、15日、在廊していたあかしさんと初めて会われて、北海道のことや制作についての話で盛り上がっていました。北海道はぜや珈琲さんのコーヒーはどうも絶品らしい。ぜひお訪ねしたいです。

そしてもうお一人は、今回の個展に一緒に出店してくれた「メーメーベーカリー」さんのパンを買いに来られたNさん。メーメーさんのパンは初日に完売してしまい、もう一度送ってもらったのですが、13日に着くや否や予約でまた完売してしましました。Nさんからは「なんでもいいから取っておいてください!!」と前日にお電話頂きました。「お知り合いですか?」と聞いたら、なんと昨年、旅先の斜里町のメーメーさんまでパンを買いに行ったのに売切で涙をのんだというのです。そうしたら、メーメーさんのTwitterで、今回京都で買えるのがわかり来ました、ということ。やっと会えた!!って感じで、なんかこちらまで嬉しくなりました。

昨日の夜、店内であかしのぶこさんのトークショーを開催しました。京都で生まれ、育った彼女が何故、知床に魅了されたのかというお話から始まって、絵本を書き出した時のこと、知床で知り合った自然財団にお勤めのご主人との生活、絵本への思いなどを参加された十数名の方に向かって、i-padを左手に、絵本を右手に1時間程お話いただきました。

中でも知床の流氷にまつわるお話は、興味深いものでした。シャチの一団が流氷に囲まれて身動きが取れなくなって、死んでいった後、解剖のため陸上げした写真で、その大きさに圧倒されました。海の王者の貫禄です。或は、流氷の上にいたオットセイが、どういう訳か、海に向かわず、山の方へ向かって動きだし、そのままでは死んでしまうので捕獲して、海に戻した話とか、北の大地で繰り広げられる自然の営みの不思議さに引込まれた楽しい時間でした。

この地方では、昔、アザラシが山を越えていったという伝説があるそうです。何を思って1700メートルの険しい山を越えたのでしょうか?ヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」に、その頂き近くで、力尽きて死んだ豹の亡骸があるというストーリーだ登場します。豹が何を求めて頂上を目指したのか、誰も知りません。同じように、知床山系の険しい山の頂上に、アザラシの亡骸があったという空想の世界を楽しんでみたいものです。

北海道知床、って京都から随分遠いと思うのですが、つながっているな、と感じます。あかしさんの個展のきっかけは「シリエトクノート」というミニプレスだということは、前にも書きましたが、面白い出会いをたくさん頂き改めて感謝です。

そして、今度はあかしさんの紹介で、版画家、冨田美穂さんから、レティシアで個展をしていただけそうなメールが届きました。彼女は等身大の牛を木版で制作されていて、「シリエトクノート」に載っていた時、一度見てみたい!と思っていました。大きな牛が果たして本屋の壁を飾ってくれるのかどうか、定かではありませんが、念ずれば通ず。というわけで、まだまだ、北国とのお付き合いは広がりそうです。(店長&女房)

 

きらめく野生の一瞬を切り取った、安藤誠写真展「Ordinary Miracle」本日より開幕です。

このブログでも何度も紹介していますが、安藤さんは北海道在住のネイチャーガイドで、カメラマン。レティシア書房では、毎年秋に一日だけ、講演会をしてもらっています。安藤さんのお話は、自然に対する畏敬と親愛があふれていて、講演を聴いたお客様の中から何人かは、必ずと言っていいほど北海道へ旅立たれます。

彼の写真「Kimn Kamui」(左)を初めて観た時、この熊の目線の物悲しさに心打たれました。

害獣として「俺たちは、何故殺されなければならないのか」 そんな台詞が聞こえてきそうでした。その後、何度か、この作品に接しているうちに、いやそれだけじゃないと思えるようになりました。今、この視線が伝えてくるのは、すべてを包み込む優しさです。あらゆる感情の爆発をす〜っと回避させるようなとでも言えばいいのでしょうか。いつも、そばにいて見守ってくれるような存在に思えます。

同じように、「Fox Dream」というキタキツネの眼差しを捉えた作品にも、やはり同じような優しさを感じることができます。この作品は、北海道の病院の待合室に飾られているそうです。患者を励まし、癒す効果があるのかもしれません。

一方、サクラマスの遡上の一瞬を捉えた「Never Give Up」は、生きる力すべてを振り絞って川を上がる姿が見事に表現されています。安藤さんはこう書いています。

「写真には、凛とした彼等の清楚な美しさ。己の使命を果たすべく遡上を続ける果敢さ。そんなエネルギーを切り取り、封じ込めたいと思った。」

タイトルに相応しい作品です。そんな力強い作品の一方で、素敵な夢を見ているに違いない子狐の横顔を捉えた「Dreaming Fox」や、新緑の北の大地で、あくびするエゾフクロウの微笑ましい姿を捉えた「Treasure Smile」など、フフフと笑えてきそうなユーモラスな作品や、幻想的な風景の中に佇むタンチョウを捉えた「Soft Silence」「Blue Crane River」などシンと冷えた情景の中の美しさを見つめた作品もあります。

お時間があれば、素敵な北国の仲間に会いに来て下さい。

「安藤誠写真展」は15日まで 

 CD付きミニ写真集も販売中です。

 

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北海道のネイチャーガイドで写真家の安藤誠さんの、トークショーを10月23日夜に開催しました。

狭い店内に、多くの方にお集り頂きありがとうございました。

当日朝、静岡県焼津から「今から京都へ向かいます」と連絡があり、夕刻無事到着。今年で4回目になりますが、常連さん、初参加の方など我々を含めて、18名が、スライドを使った安藤節に酔いました。

北海道の大自然に生きる動物達の写真をメインにして、自然大系の微妙なバランス関係の事、「危険な動物」というレッテルをマスコミによって貼られた野生の熊のこと、毎年アラスカで見るオーロラツアーの事など、興味深いお話でした。

私たちは、人間だけが、食とは関係なく他の生物を殺す。動物は、ただ食べるためにだけ補食すると思っていますが、そうではありません。例えば、シャチのグループは、クジラを追いかけ殺害することがあります。一つには、狩りの訓練のためですが、ここにはもう一つ大きな意味があって、クジラが増えすぎて、主食するオキアミの量が極端に減らないようにするためだ、というのです。別にシャチにそんな意識があるのではなく、太古の昔から、そうやってバランスを保ってきたのです。聞けば聞く程、自然大系の深さに驚きます。

さて、数多い安藤さんの作品の中で、昨夜一番受けた写真は、これ(下)。

ルンルン気分で、上がってきたアカリスの目の前には、なんと大きなアメリカワシミミズク。リスはやばい!と思ったに違いないのですが、ずーっとここに泊っていたミミズクの方は満腹だったみたい(何しろ補食関係です)で、命拾いしたアカリスでした。カメラを構えていた安藤さんも、おもわず吹出したそうです。

自然の中ににこそ学ぶべきことが沢山ある、という思いで一杯になった夜でした。

この作品の入った作品集「Ordinary People」最新号(CD付き2200円)は、11月3日から始まる彼の写真展で販売します。写真展では、北の大地に生きる動物達の力強い姿を楽しむことができます。

安藤誠写真展は11月3日(火)〜15日(日)

 月曜定休日 12時〜20時  レティシア書房にて

 

 

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