「『詩、読みますか?』と聞いて、まだ『ハイ』といわれたことがない。たいてい『本は好きなんだけど』とか、『小説は読むんだけど、』という具合に、あとは続くのです。」

大阿久佳乃「のどがかわいた」(岬書店/新刊1430円)はこんな風に始まります。詩のことを知ってもらいたくて、彼女は「詩ぃちゃん」というフリーペーパーを発行しました。私は、何人かの詩人を除いて、あんまり詩を読まないのですが、彼女が紹介している詩人やら、詩の楽しみを読んでいると、こういう読み方もあるんだと、視界が広がります。

著者の大阿久さんは、2000年三重県鈴鹿市の生まれで、このフリーペーパーは2017年、17歳の時に出しています。

「半年ぐらい学校に行っていなかったのだと思う。けれど、はっきりいつから行かなくなったかは覚えていないし、そういえば、学校に行っていた間のこともあまり覚えていない。」

結局、出席日数が足りず留年、そして退学。本書の第二章で、その息苦しかった時代のことを振り返っています。「もともと私には、十八歳まで時が止まっていて、十九歳から一気に死に向かっていくという、謎の思い込みがある」とまで書いています。

思春期にありがちな不安、苛立ち、孤独の告白といえば、そうかもしれません。ここにはそんな状態から、彼女を支えた言葉と共に、出口を求め、模索する一人の女性の偽らざる姿が描かれています。先の見えない閉塞感と息苦しさは、数十年前に”穏やかだった”十七歳を経験した私には、理解できないものが潜んでいます。

でも、これは、あくまで彼女の心を支えた読書案内です。フランシス・ジャムという詩人を紹介する件は、この詩人の言葉がどれだけ彼女の心に寄り添っていたのかがわかります。

「ここを読んでいると、自分が難しい顔ばかりして生きてきたと思い、これからもずっとそうなんだろうと、落胆したり、度が過ぎてちょっと面白くなくなってしまったりする。しまいには涙が出て、人生がなんなのかさっぱりわからなくなって、このやろう、と乱暴に、すがるようにジャムの詩をまた読み進めてしまう。」

とても素直な文章で、店にあるジャムの詩集を開いてみたくなります。

彼女の祖父母が京都市内に住んでいる関係で、よく来京しているそうす。そこで出会ったのが「古書善行堂」の店主山本さんでした。あぁ、いい店に出会ったなと思いました。ここで、彼女は多くの作家や本を山本さんから紹介してもらいます。書店にとって、読者の心持ちに沿った本を紹介できるほどの喜びはありません。そしてここから、岬書店の島田潤一郎さんに出会い、本書の発行へと繋がっていきました。しかるべき時に、しかるべき出会いがある、という事です。

お知らせ コロナウィルス感染拡大の緊急事態下、これ以上感染者を出さないために、営業日、時間を下記のようにさせていただきます。

営業日:毎週 火曜日、木曜日、土曜日 営業時間:13時〜17時

通販、メールでの在庫確認は常時できますので、ご利用ください。通常営業再開はHPにて告知いたします。(info@book-laetitia.mond.jp)


古書善行堂」店主、山本善行さんの新刊「本の中のジャズの話」(書肆万屋1000円)を読んでいると、こんな文章に出会いました。

「先日、京都市中京区にあるレティシア書房という古本屋さんから六百枚ほどのジャズレコードが入荷したと連絡が入った。最近はCDばかり買うようになっていたが、座って一枚一枚見ていくと、徐々に若い頃を思い出した。久しぶりに至高の時間を味わった。このとき買った三十枚ぐらいのレコードを写真入りで紹介できたら楽しいと思うが、この場でジャズの本を紹介しないとね。忘れるところだった。」

うちに大量のジャズレコードが入荷したのは、数年前のこと。お客様や知人でジャズ好きの人だけに告知して、安い価格で販売しました。その時、山本さんの姿をみて、ホントに好きなんだなぁ〜と思いました。楽しくジャズ談義をしたのを思い出します。

この本は、ジャズ関連の記事で構成されたフリーペーパー「WAY OUT WEST」(4月号入荷しています)に連載されている「本の中のジャズの話」100回分をまとめたものです。山本さんのジャズ本についてのエッセイは、なかなかその本の紹介にいかず、他の本の話に飛ぶのが面白いところです。例えば、野川香文「ジャズ音楽の鑑賞」(第34回)では、織田作之助の「蛍」の紹介で、紙面の半分以上使っています。でも、日本文学を愛好する思いが溢れていて、ちょっとこの作品読んでみようか、と思えるところがさすが。

安西水丸の小説「70%の青空」(角川書店・絶版/古書2300円)を「ジャズを聴きながらぜひ読んでもらいたい小説」と書いているのには、私も同意見!と膝を打ちました。60年代の東京を舞台に、美大生の青春と挫折を描いています。物語全体を流れるクールな雰囲気が、ジャズの持っているものと一緒です。

山本さんは、安西の本をもう一冊紹介しています。それは「メランコリーララバイ」です。「この本はタイトルにもジャズを感じることができる。ベニー・カーターのアルトサックスの哀しい調べが、読む前から辺りに広がる。」

肩の凝らない文学とジャズ紹介本です。読んでいると、なんだか山本さんがそばで喋っているみたいです。(本書の販売は、善行堂と、南区にある「つるかめ書房」、それに当店のみとのことです)

★レティシア書房連休のお知らせ  勝手ながら4月13日(月・定休日)14日(火)臨時休業いたします

 

YUYBOOKSさん 、ちのり文庫さんが主催するユニークな「いまどきのブックフェア」が下京区にある「フィールドラボ」でありました。なにが、ユニークって、色んな本屋さんが持ち寄った本をジャンル分けして本屋を作ってしまうという点です。

フツーの古本市だと、お店ごとのボックスにその店の本があって、お客さんは一つ一つ覗いて行くのですが、この企画では参加店の名前はありません。参加した店舗のそれそれの所蔵の書物を集めて、架空の本屋を一日だけ作りあげてしまう新しい発想です。

もう一つユニークなのは、オープンが昨日の午後3時、そして24時間フルに開店して、本日3時に閉店という、いや、もう若い世代にしかできない企画です。参加しているのは、市内古書店を中心に、お若い店主の店10数店。老齢店主のレティシア書房にも、お声がかかり、昨日納品に行ってきました。備え付けられた各インデックスも、よくある文学とか、エッセイとか、人文とかじゃなくて、「阪急電車で読む本」、「女」、「男」、「音」と何だか訳のわかった様な、わからんような仕切りで、一瞬、棚に本を入れる時に悩んでしまいましたが、慣れてくると、この本ならこの棚か!と楽しんで、棚作りのお手伝いをさせてもらいました。

この新しい企画、来年も続けるとか。新しい古本市として、当店も応援します。

さて、告知していますように、次週4月1日(水)から古書善行堂「500冊、すべてワンコインブックフェア」を行いますが、同時にある方の自宅に眠っていた洋書の「お助けフェア」も始めます。今回は、その一部で数十冊。

珍しい本がありました。”the ascent of everest”by John Hunt.。これ、1953年のイギリスのジョン・ハントによりエベレスト踏破をまとめたものですが、写真も多く収録されていて山好きの人には楽しんでもらえそうです。文芸ものでは、ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」(表紙がいいですね)、シェイクスピア「ロミオとジュリエット」「ハムレット」。どちらもペーパーバック版ですが、赤の表紙が素敵です。お値段は300円と500円と格安。読まなくても、ちょっと飾っておくだけでも良い様な本を探して下さい。

■勝手ながら3月31日(火)は臨時休業いたします