絵本の解説本や、書評本は沢山出版されていますが、本日ご紹介する寺村摩耶子「絵本をたべる」(青土社1200円/出品・ハニカムブックス)も、そのジャンルの一冊です。芸術系雑誌「ユリイカ」を出している青土社から、絵本の解説本が出ていることは知りませんでした。2010年11月発行の「ユリイカ」で特集された「100万匹のねことともにー絵本のなかの猫たち」が本書の原型になっているとのことです。かと言って、ねこの絵本の紹介本ではありません。「夜」「感覚」「森」「動物たち」「変身」「祝祭」「ねむる」という”ユリイカ”らしいタイトルに分けて、絵本が紹介されています。「感覚」の項目では、どんな本が選ばれているのかと見てみると、雨、風、雪、夕日などの子供にとって身近で不思議な自然現象を捉えた作品が紹介されています。書影も載っていますので、絵本探しに役立ててください。

ノルウェイーの児童文学の傑作トールモー・ハウゲン「夜の鳥」(河出書房新社700円/出品・マヤルカ書房はオススメの一冊です。ハウゲンは73年に最初の小説を発表、75年に出した本作は高い評価を受け24カ国語に翻訳され、いまだに読み継がれているロングセラーです。

アパートに潜む悍ましい秘密や家庭の不安におびえる少年ヨアキムの繊細な心理を抒情的で印象深い文章で描いています。ノルウェーの風土はきびしく、人々の暮らしも、そんなに裕福ではありません。そんな大人たちの日々の厳しい生活が、子どもたちの世界にも密接に反映されていきます。明るい未来なんてどこにあるのかという世界なのですが、それでもヨアキムは一日一日を生きていかなければなりません。

「ぼくは自分の生徒たちが怖いんだ」とヨアキムの父親は、しばらく先生の仕事を休むことになります。そしてときどき、夜中にふらりと、いなくなってしまいます。探しても見当たらない。父親はどこへ……..。そんな時、あの鳥が、ヨアキムの夜を覆います。北欧の美しい自然を背景に、心の病に悩む父親に小さな胸を痛める少年の不安を、ファンタジーとリアリズムを融合させた手法で描いていきます。表紙の絵は酒井駒子です。

 

 

「飛ぶ教室」等で、我が国でも人気の児童文学作家、E・ケストナーの「家庭薬局」(かど書房1000円/出品・半月舎)は、ケストナー作品では異色であり、かつ重要な作品です。ご承知のように、ナチス政権誕生後チェコで出版された本書は、その他の自由主義的作家の作品と共に、好ましからぬ著作とされました。独特の着想、風刺、諧謔、パロディーが渾然一体となった詩が集められています。しかし、ケストナーが一番訴えたかった反軍拡、反戦、平和主義的メッセージは割愛されました。そこで本書では、巻頭に「平和が脅かされてきたら」という本にはないものを付け加えています。険悪な政治的情勢と暗く退廃的な世相の渦巻く中で、ケストナーが本当に望んだものが、ここにはあります。

 

★女性店主による『冬の古本市』2/16(日)まで。12:00〜20:00  (最終日は18:00)

神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などから女性店主の選書が集まっています。ぜひお立ち寄りください.

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。

 

 

 

 

本日ご紹介するのは、お買い得コミックです。伊図透「銃座のウルナ」(エンターブレイン全8巻2300円/出品・ヴィオラブックス)です。主人公は、太陽の光が届かないような風雪の島リズルで狙撃手として戦場に立ち向かうウルナという女性です。魑魅魍魎正体不明の敵と戦う彼女の原動力はどこから来るのだろうか。宮崎駿の漫画版の主人公ナウシカを思い出してしまいます。蛮族による繰り返される残虐な行為にひるむことなく、撃退するウルナに待ち受ける過酷な運命。スケールの大きな物語、躍動する画面に釘付けになるコミックです。美しい故郷を捨てて、戦線に参加するウルナの愛国心って何?という物語の奥にあるテーマも見逃せません。

日本文学愛好者に人気の高い、小山清の傑作「落穂拾ひ」のオリジナル初版が出ています(筑摩書房 昭和28年発行5000円/出品・本と雑貨「福」)。小山は明治44年生まれの小説家で、太宰治の門人でした。昭和28年発表の本作で、私小説作家としての地位を確立しました。「小山君の小説は、どれを読んでも心暖まるものばかりだ。」と語ったのは亀井勝一郎でしたが、貧しい階級の生活を愛情深く描いた短編を送り出しました。本書にも七つの短編が収録されています。

「僕はいま武蔵野の片隅に住んでいる。僕の一日なんておよそ所在ないものである。本を読んだり散歩をしたりしているうちに、ひが暮れてしまふ。」だから、どうなんだ!と初めて「落穂拾ひ」を読んだ時、全然面白くなくて投げ出したものですが、数年前読み返した時、この作家が見つめる庶民への眼差しに心地よさを感じました。

歴史書を一点ご紹介、と言ってもこれは、キッチンの歴史です。ビー・ウィルソンの「キッチンの歴史」(河出書房新社2000円/出品・榊翠簾堂)です。サブタイトルに「料理道具が変えた人類の食文化」とあるように、古代ギリシャや中世の料理道具の変遷を辿りながら、現代的な最新の料理道具まで紹介していきます。歴史的事実の羅列に終始することなく、時にはユーモアを交えた文章で読者を食文化についての考察へと導いてゆきます。長い料理道具の歴史を論じた最後に登場するのが、著者の母親が作ってくれたオムレツの話です

「台所は素敵なことが起こる場所だと初めて私に教えてくれたのは母なのだから。」というのが最後の一文です。

 

 

★女性店主による『冬の古本市』2/16(日)まで。12:00〜20:00  (最終日は18:00)

神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などから女性店主の選書が集まっています。ぜひお立ち寄りください.

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。

 

今も人気の高い画家の金子國義。1960年代後半「O嬢の物語」の翻訳者である澁澤龍彦の依頼で挿絵を手がけ、翌年「花咲く乙女たち」で画壇デビュー。世紀末的デカダンの雰囲気が漂よう女性像を描きました。加藤和彦のアルバムジャケットや、多くの本の装丁でお馴染みで、古書でも高い値段が付いています。今回、一冊だけ金子の本が出ていました。「青空」(美術出版社2500円/出品・星月夜)は、油彩、水彩、ドローイングなどを収録した画集です。冒頭には「青空の部屋」と題した篠山紀信による写真も収録されています。金子國義自身による文章もあり、貴重な一冊です。

 

一冊だけだと思っていたら、金子がらみの本を見つけました。高橋睦郎「詩人の食卓」(平凡社1500円/ 出品・徒然舎)です。詩人、高橋睦郎のエッセイ集。7月から翌年6月まで…「海 – 生命の呼び声」「市 – 世界を糶る」「土 – 偶然の恵み」「森 – 自然の両義性」「水 – 自然を買う」「火 – 美しい日日」「厨 – 暗い 明るい」「店 – 食べると食べさせると」「茶 – 生の極み」「薬 – 病気に親しんで」「器 – 腹も身の内」「旅 – 歌と肉片」というテーマで綴られた文章は、古今東西の文化や出来事に想いが馳せられ、選び抜かれた言葉 … さすが詩を書く人のエッセイだなという感じを受けます。金子國義の挿絵は、先の「青空」に収録されている作品などが、モノクロで入っていて、それが際立ってしゃれています。

 

 

翻訳家の青山南の著書「ホテル・カリフォルニア以後」(晶文社1430円/出品・バヒュッテ)は、70年代アメリカ文学の内容のある解説書です。様々な混乱を起こしたベトナム戦争が終結し、アメリカ文学が新しい方向性を模索し始めた70年代を、著者はリアルタイムでレポートしていきます。ティム・オブライエン、レイモンド・カーヴァー、ジョン・アーヴィングなどわが国でも人気の作家が紹介されています。日本では、最近ほとんど名前の上がらないフィリップ・ロスにも言及されています。

ロスの原作を元にした映画「さよならコロンバス」に感激して、原作を読んだものの、その良さが全然理解できなかった大学時代を思い出しました。その後、「素晴らしいアメリカ野球」(在庫あり)も読んだのですが、”毒の強さ”にまいりました。

 

★女性店主による『冬の古本市』は2/5(水)〜2/16(日)です。月曜日定休。12:00〜20:00

最終日は18:00まで。神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などから女性店主の選書が集まっています。ぜひお立ち寄りください.

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。

 

 

 

 

洋書ですが、ベン・シャーンの画集が出ています。1906年移民としてアメリカに渡ってきたベン・シャーンは、 NYブルックリンで石版画職人として生計を立て、肉体労働者や失業者など当時のアメリカ社会の底辺にいる人々と接し、彼らに共感を持つようになっていました。やがて、社会の現実を描くリアリズム画家として戦争、貧困、差別、失業などをテーマにした絵画を描き始めました。悲惨な境遇の中で、しぶとく生きる人たちを力強いタッチで描いていて、個人的に大好きな画家です。

“Ben Shahn by james.T.Soby”(3000円/出品・花森書林)にも、多くの作品が収録されています。1939年に描かれた"Handball"は、ジャズのアルバムジャケットにもなった人気の一枚です。

リチャード・フラナガンの大作「奥のほそ道」(白水社900円/出品・Viola書房)は、映画「戦場に架ける橋」でも知られている泰麺鉄道建設に従事した一人のオーストリア兵が主人公です。第二次世界大戦の最中、日本軍はビルマ、タイ間を結ぶ鉄道建設に多くの捕虜を投入していました。捕虜の扱いを決めた国際条約を無視した軍部は、捕虜たちを容赦のない突貫工事に従事させ、多くの人間が惨死していきました。著者の父親アーサーは、その地獄から奇跡的に生還した一人でした。父親の実体験を元に、過酷な日々の中に浮き上がる生命の重みを400ページの長編にまとめあげたのが本書です。戦場の悲惨な日々をただ描いたのではなく、多くの登場人物の視線の交差を通して、変遷する世界の多様性を描いたという評価ゆえに傑作になったのでしょう。

日本美術を鑑賞する上で欠かせないテキストが赤瀬川原平の「日本美術観察隊」(講談社二冊セット3000円/出品・旅猫雑貨店)です。「この本では日本の美術作品を観察している。美術というものは本来鑑賞するものだけど、古典的な日本美術になると、素直に鑑賞しにくいものがあり、まずは観察するということになる。」と赤瀬川は、本書のスタンスを書いています。親しみにくいと思われる古典的美術を取り上げて、赤瀬川らしい観察で作品を解体していきます。山本芳翠の「浦島図」(二巻に掲載)を見て、「変な絵である。はじめて見て、うわっ、と思った。何だこの絵は。」という第一印象は私も一緒です。そんな一般人的感性で展開してゆくところが面白いところです。

「この本は、日本美術への近づき方のテキストだと思っている。近づいてしまえば、日本美術をどうつかまえるかは、各人の興味と力量にかかわってくることだろう。」

ぜひ、それぞれの近づき方を学んでください。

★女性店主による『冬の古本市』は2/5(水)〜2/16(日)です。月曜日定休。12:00〜20:00

最終日は18:00まで。神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などから女性店主の選書が集まっています。ぜひお立ち寄りください.

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。

 

 

 

97年に国内版が出た時にかなり方々で取り上げられて、人気の高かった美しい絵本が出ています。フレデリック・クレマンの「アリスの不思議なお店」(紀伊国屋書店2000円/出品・明楽堂)です。フレデリック・クレマンが、自分の娘の誕生日のためにつくったプレゼントを書籍化したとの事ですが、素晴らしい発想とセンスです。オブジェ、イラスト、コラージュ、が渾然一体となって読者を不思議な世界へと誘ってくれます。眺めているだけで嬉しくなってしまうような本です。外箱も洒落ています。

戦前から活躍し映画評論家の大御所、飯島正の「試写会の椅子」(時事通信社・上下2巻セット/出品・半月舎2000円)は、貴重な書物です。上巻「旺んなる青春1895-1952」、下巻「様々な出発1953-1972」とサブタイトルが入っています。「ぼくは1902年の生まれである。映画は1895年の生まれである。その差はわずかに7年である。」と書かれている通り、映画創世記から映画館に通っていた人です。植草甚一が「フランス映画はもちろんのこと、イタリア、スペイン、メキシコ、ハンガリーあたりの文学のおもしろさを原書や英訳で読む機会を与えてくれた。この本にはそういう思い出がいっぱいで」と著者との交流を語っています。映画青年には必読。

丸山太郎のことは、私も今回出品された「松本そだち」(秋櫻舎3000円/出品・甘夏書房)を手に取るまで知りませんでした。

柳宗悦の民芸運動に影響され、自らその運動に身を投じた人物です。昭和11年に駒場の日本民芸館を訪ね、雑器の美しさに触れたことがきっかけに民芸運動に開眼します。以来、柳宗悦を師と仰ぎ、松本の民芸運動の中心的存在としてすぐれた民芸品を蒐集。昭和37年に松本民芸館を開きました。本書は、「吾が家の歳時記」と「ちきりや閑話」の二つに分かれていて、前者では、著者の育った松本の町暮らしが静謐な文章で描かれています。後者は、見識を積んだ美意識で様々のことを語っています。文章が優しい。著者の品性が出ているのでしょう。

「松本民芸館は、私の生命をかけて作った館である。ただ入館料をもらうからということで、簡単にすまされない私の意地がある。私の見る眼と、観者の見る眼と合致した時の喜びは最高といってもよい。」と、自らが建てた民芸館について語っています。本の後半には、著者の初期木版画作品がたっぷり掲載されています。

 

 

 

★女性店主による『冬の古本市』は2/5(水)〜2/16(日)です。月曜日定休。12:00〜20:00

最終日は18:00まで。神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などから女性店主の選書が集まっています。ぜひお立ち寄りください

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐野洋子の私家版的な本ですが、「女の一生・1」(トムズボックス3000円/出品・徒然舎)は、セックスをして、人が生まれるという事を、かなりストレートな言葉と佐野らしいタッチのイラストでまとめた本で、限定998部という少量出版物です。佐野自身が「人類の始めから、この世に出現するには、男と女がみんなあれをしたのである。何くわぬ顔とは人類全ての顔だと思うのである。」と書き残しています。エロスと生の息遣いに満ちた小さな本です。これって、多分大手出版社からは出せなかったのでしょうね…….。

美術家の永井宏は、亡くなった後も若い世代に人気のある作家です。今回出品されている「雲ができるまで」(リブロポート1100円/出品・ba hutte)は、90年代初頭に永井が葉山にオープンさせた「サンライト・ギャラリー」を支援してくれた人たちに捧げられた本です。彼の活動を手助けした人たちが登場します。それにしても永井の文章っていいですね。こう、爽やかな風が体を吹き抜けるとでも言えばいいのでしょうか。ふと振り返った一瞬の光景を捕まえるのが、上手い。吉田篤弘のようなシニカルさはないけれども、好きになったら離れられない作家です。

 

あぁ〜、この本もこんなに安く出たか……。「村上春樹翻訳全仕事」(中央公論新社600円/出品・雨の実)。これの何が凄いって、村上が翻訳した全てのオリジナル海外版と翻訳版の書影と、その本への村上のコメントを収録しています。絵本作家オールズバーグの全作品を一堂に見ることもできます。さらに、「翻訳について語るときに僕たちの語ること」と題した柴田元幸とのロング対談が掲載されているのです。マッカラーズの「結婚式のメンバー」を翻訳したときに、「『心は孤独な狩人』がやはり最高作だと思うし、いつか翻訳したなと思っている」と書いてますが、彼の翻訳を読んでみたいと心待ちにしているのは、私だけではないと思います。

 

 

★女性店主による『冬の古本市』は2/5(水)〜2/16(日)です。月曜日定休。12:00〜20:00

最終日は18:00まで。神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などから女性店主の選書が集まっています。ぜひお立ち寄りください

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。


寒い中、古本市の初日から多くのお客様にご来店いただきありがとうございます。

さて本日最初にご紹介するのは、洋書です。かなり前に公開されたフランス映画「赤い風船」(1956年)。少年と風船のお話ですが、映画をご覧になってなくても、この映画を元にいわさきちひろが60年代後半に絵本にして、ベストセラーになったので、それでご存知の方も多いはず。

今回出品されているのは、その英語版”The Red Balloon”(1500円/出品・徒然舎)です。モノクロの映画のシーンがふんだんに組み込まれています。50年代の古き良きフランスの姿を捉え写真集としても貴重な一冊なのですが、さらにページをめくると、この本の持ち主が翻訳をしたのだろう?と思われる原稿用紙に書かれた訳文が入っているのです!少し古風な日本語ですが、なかなか素敵です。この一冊にだけ付いている翻訳文なのです。

古本好きにファンの多い、詩人、天野忠の短文集「耳たぶに吹く風」(編集工房ノア/1500円出品・マヤルカ古書店)を見つけました。「古いノートから」と題された短文集(1976年〜1983年)と自筆年譜の二つに分かれています、軽妙洒脱なユーモアに富んだ文章が収録されています。例えば「フランスの諺に『寺の鼠のように貧しい』というのがあるそうだが、現在の日本では『寺の鼠のように肥えている』という諺が出来そうだ」。こんな感じの文章が楽しい。天野ファンはぜひ!

1960年代後半からほぼ15年間放送され続けたラジオ深夜番組「パック・イン・ミュージック」。聞いていた方は多かったはずですね。昭和が生んだラジオ深夜放送革命とまで言われた「パック・イン・ミュージック」の製作関係スタッフ、パーソナリティー、そして投稿者たちへの綿密な取材、調査をベースに書き上げられた伊藤友治+TBSラジオ編著「パック・イン・ミュージック」(DU BOOKS/600円出品・ママ猫の古本屋)は、貴重な一冊です。ユーミンも吉田拓郎も、ここで聞いた!と思い出した方もおられると思います。ラジオ深夜放送は、混沌としていた昭和時代に生まれて多くの若者に指示されて育ってきた社会現象です。この番組が終了した時、なんと「パック・イン・ミュージック終了絶対反対」という横断幕を掲げたデモまであったのです。たかが深夜放送、されど深夜放送です。全500ページにも及ぶ大著ですが、あの時代の熱っぽさを垣間見せてくれる一冊です。しかし、安すぎる……….。

個人的には、高石ともやの「自衛隊に入ろう」「受験生ブルース」そしてフォーク・クルセイダーズの名曲を聴いたことが、高校時代の深夜放送の思い出となっています。

 

 

★女性店主による『冬の古本市』は2/5(水)〜2/16(日)です。月曜日定休。12:00〜20:00

最終日は18:00まで。神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などの女性店主の選書です。ぜひお立ち寄りください

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。

 

いよいよ始まりました、冬の古本市! 今回出品されている本は、例年になく面白いものが集まっています。絵本、児童書も通年の2倍!、と思えばUFO 、怪奇現象関係が数十冊、そして、店で置きたい本が沢山あります。

まぁ、そんな中からのご紹介です。

これは、レア!と手が出そうになったのが、佐伯俊男の「最初期画集」(青林工藝舎3000部限定・サイン入り12000円/出品・花森書店)です。佐伯は画家として、イラストレーターとして活躍した作家で九州出身の大阪育ち。60年代末に上京し、寺山修司や澁澤龍彦に後押しされて、70年に雑誌「平凡パンチ」でデビューします。 エロス、ユーモア、ホラーを織り交ぜた独特の作品が人気になります。72年には、ジョンレノンとオノヨーコのアルバム『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』にイラストレーションが起用されました。そんな彼の初期作品を集めたのがこれです。

 

ガラリと変わりますが、宮本成美写真集「まだ名付けられていないものへ または、すでに忘れられた名前のために」(現代書館1800円/出品・1003)は、写真家が水俣病患者支援に関与し始めた1970年代から90年代後半までの写真が収めれています。水俣病患者の悲惨な状態の写真ではなく、むしろ生きる希望を持った人々の姿、そして彼らを支え続けた仲間たちの姿が捉えられています。多くの人々の人生を奪った水俣病は環境問題の原点です。その上に立って、今の生活があることを忘れないためにも、持っておきたい写真集です。

 

 

安西水丸の、ちょっとレアな作品を見つけました。それは、「日々」(COWBOOKS500円/出品・甘夏書店)という小さな本です。2011年COW BOOKS主催で開かれたリトルプレスフェアにあわせ製作された、安西水丸による画文集の復刻版です。嵐山光三郎によるあとがきによると、うちあわせや会話の合間にすらっ描き上げたようなライブ感あふれた一冊です。ページを開いて安西さんとの会話を楽しんでください。しかも安い!

アンソロジーものとして、知的刺激に満ちた一冊が、「龍の物語」(新宿書房900円/出品・クロアゼイユ)です。島田雅彦「龍人誕生」玉木正之「龍腕伝」草森紳一「龍の棲み家」パトリシア・A. マキリップ(井辻朱美訳)「ホアブレスの龍」などなど龍をめぐる12の物語がぎっしりと詰まっています。中には、香港の映画スター、ブルース・リーを論じたものもあります。ブルース・リーの本名は李小龍。「李小龍、なんというしゃれた名前であろうか。この名前は神話的なひびきを伴っている。神話的なスターには神話的な名前が似合う。龍は神格化された動物であるが、李小龍は人格化された龍である」と厲河が論じていきます。挿入されている図録も、なかなか神秘的なものです。

 

★女性店主による『冬の古本市』は2/5(水)〜2/16(日)です。月曜日定休。12:00〜20:00

最終日は18:00まで。神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などの女性店主の選書です。ぜひお立ち寄りください

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

第八回の「夏の古本市」も、いよいよ明日が最終日(18時まで)。というわけで「『夏の古本市』こんな本あんな本」も本日が最終回となりました。紹介した本が次々と旅立ちました。読んでいただきありがとうございました。

小島信夫著「こよなく愛した」(らむだ書店出品/講談社2200円)。個人的読書体験ですが、小島の本は最初に全3巻にもなる「別れる理由」にチャレンジして、途中で挫折して以来、読んでいませんでした。老夫婦の暮らしに流れる孤独、不安、そして愛すべき人生を綴ったエッセイのような短編集ですが、一筋縄でいかない所が、小島の世界です。この人の小説って、スルスルとは読めません。会話のズレや、食い違いを楽しみましょう。最晩年に書かれた「養老」は、かなりユニークな小品です。

文芸評論家の饗庭 孝男が、京都の古寺を歩いて、その風景を綴った「中世を歩く 京都の古寺」(本は人生のおやつです出品/小沢書店1000円*著者献呈署名本)は浄瑠璃寺、神護寺、仁和寺などの古寺を歩きながら中世文学と思想への思いを込めながら、思索したアカデミックな一冊です。

「灰色の空から雪が舞い落ちてくる。その白さに咲きはじめた梅の紅色が入りまじり、黒ずんだ北野の御社の堀がその背後の幻想のようにうかんでいる。これは二月も半ばの、昔からの北野の風景であるが、本殿に続く石畳の道をわが子の合格を祈る母たちが足しげく通ってゆくのは今日の風景であろう。」

で始まるのは北野神社の風景です。観光客でごった返す昨今の古寺の風情と違う、静謐で、ゆっくりとした時間の流れる古寺を著者と共に散策するような名著です。

誰これ?という興味津津の本がありました。若林純著「謎の探検家菅野力夫」(徒然舎出品/青弓社800円)。明治末から昭和初期にかけて世界中を探検した男です。表紙(写真左)のように、探検家ルックでポーズを取り、手には骸骨を持っている姿を写真に撮り、それを絵葉書にして売っていた男。経歴不明、どんな探検を行ったのかも明らかになっていない菅野に興味を持った著者が、彼の足跡を丹念に追いかけるノンフィクションです。彼の撮ったフィルム5700枚、探検旅行を集めたアルバム20冊、膨大なスクラップに旅の記録。膨大な資料の山に挌闘しながら、この怪人の姿をあぶり出していきます。

絵葉書コレクターの間では、菅野の絵葉書は有名なのだそうです。

★「夏の古本市」は明日18日(日)の18時まで開催しています。

勝手ながら、19日(月)〜23日(金)まで休業いたします。

 

 

 

 

 

 

 

台風が近畿地方に近づきつつある不安定な天気ですが、古本市は今日も開いております。

京都市左京区にある書店「ホホホ座」は、本好きなら知らない人はいないほどの有名店です。絵本「やましたくんはしゃべらない」(葉月と友だち文庫出品/岩崎書店1000円)は、「ホホホ座」店主の山下賢二さんがユニークな自らの少年時代を描いた素敵な絵本です。彼は小学校に入学してから、卒業するまで学校内で一言も喋らなかったのです。別に病気だったわけではありません。絵を描いた中田いくみが、俺は喋らないと決めた山下くんの表情を生き生きと見せてくれます。固い決意で最後まで押し通す山下くんですが、卒業式の微笑ましく、ちょっと切ないエピソードが素敵です。著者のサイン入りです!

食に関する本は、今回参加しているどの店からも出品されているのですが、最もユニークだっだのがこれです。熊田忠雄「拙者は食えん!サムライ洋食事情」(榊翠廉堂出品/新潮社600円)。この本は、日本が開国し新しい時代を迎えた明治初期、海を渡った幕府の各使節団や、諸藩が海外に送った留学生たちが、初めて目にする洋食といかに向き合ったかを調べ、未知の食文化をどのようにして受け入れていったのかを描いたノン・フィクションです。

米と魚と野菜を食べて育ってきた彼らが、いきなりパン、肉、乳製品に出会った時には、とんでもないカルチャーショックを受けたと思います。著者は、そんな彼らの心情を丹念に拾い出していきます。拒否感の多かった西洋料理ですが、当時日本にはなかったアイスクリームだけは、「たちまち解けて誠に美味なり」と絶賛だったそうです。ユニークな視線で開国当時の歴史を見つめた一冊。

村山槐多と共に大正画壇で活躍し、20歳で亡くなった画家関根正二の生涯を追った「青嵐の関根正二」(徒然舎出品/春秋社600円)は、とてつもなく面白い本です。著者が村山槐多の作品を見に美術館に出かけた時、こんな経験をします。

「『俺を見よ!』 おかしい。ぼくの他には誰もいなかったはずである。横を向くと、黒っぽい服を着た三人の男女が描かれている一枚の肖像画があった。

『?』空耳だろう、絵がしゃべるはずがない、と思い直し、また槐多の絵の世界にひたっていると、今度ははっきりと聞こえてきた。 『俺を書け!』」

まるで小説の滑り出しみたいですが、これが著者と関根正二の出会いでした。「新宿鮫」でお馴染みの大沢在昌が、「この本にあるのは、純粋に、己が目で確かめようとする作家の姿勢だ。問いかけ、答を胸で喰み、さらに素朴に次の問いへの答を探してゆく。美術にはまったくの門外漢である私にも、目がはなせない。」と、帯に推薦の言葉を書いていますが、本当に目が離せない伝記です。

 

 

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(最終日は18時まで)

勝手ながら、19日(月)〜23日(金)まで休業いたします。