多くの古書が入荷してきました。文学史的に貴重なものというより、ほほぉ〜こんな本出ていたんだぁ〜と驚くようなものがワンサカあります。価格はワンコイン、あるいは、それにちょっと+(プラス)といった価格です。数回に分けてご紹介(全部一度に出せないので間があきますが)してまいります。

最初にご紹介するのは、京都の料亭、和久傳が出した「桑兪」(そうゆ)です。これ、京料理の紹介やら、観光地の案内ではありません。執筆陣が凄いです。渡辺淳一、杉本秀太郎、石川九楊、福岡伸一、宮本輝等11名。杉本はさすがご当地だけに、祇園祭の山鉾巡行のことを書いていますが、それぞれが好きなテーマでエッセイを寄せています。生物学者の福岡は、彼の本に出て来る「動的平衡」の言葉を解説しながら、狂牛病やハチの大量死についてこう書いています。

「狂牛病をこれ以上拡大しないために私たちは何をすればよいか。それはシンプルなことである。牛を正しく扱う。つまり牛を本来の草食動物として育てればよい。ハチを大量死から守るためにどうすればよいか。ハチの多様性を尊重し、できるだけハチの習性を大切に、ハチを物品ではなく、本来の生命体として扱う。」(500円)

料理屋が、単に宣伝や販促のために出した類いのものではないようです。

 

飲食がらみでいうと、キッコーマン醤油が昭和49年に出した松本延昌著「キッコーマン奥様大学特別シリーズvol.3和飲物語(700円)は、なんと函入りで、装幀が平野甲賀、挿画は鈴木康司という豪華布陣です。日本のワインの普及のために書かれたもので、サンケイ新聞に連載されたそれらの記事を中心にまとめられています。因みに「和飲」は「ワイン」を漢字に当てたものです。とても、一企業が作った本とは思えない程立派ですよ。

ガラリと変わりますが、日本画家、熊谷守一を見つめた画商、向井加寿枝の「赤い線それは空間」(岐阜新聞社900円)をご紹介します。熊谷との30年にも及ぶ付き合いで見て来た画家の姿を 綴った本ですが、晩年一歩も家を出ずに、庭にくる虫などを書き続けた画家の日常風景や、自宅の様子が撮影されています。庭には16カ所に及ぶ腰掛けが作ってあり、そこに坐ってじっと時を過ごしている姿も収録されています。また、パリのダビッド・エ・ガルニエ画廊で開催された個展の写真などもあり案外貴重かもしれません。彼のファンなら是非持っておきたい一冊です。