ヴィルヘルム・ハンマースホイは、1864年生まれのデンマークの画家。彼の絵画の大部分は室内風景画で、住んでいたコペンハーゲンのアパートの室内を描いたものが多く、生活感や物語をうかがわせるものが、ほとんどありません。描かれている人物は後ろ向きであることが多く、鑑賞者と視線を合わしません。さらには無人の室内を描いた作品も、少なくありません。白と黒を基調としたモノトーンに近い色使いと静謐な画面は、ハンマースホイ独自のもので、観るものを不思議な世界に引き込んでいきます。東京で開催されたハンマースホイ展の図録「ヴィルヘルム・ハンマースホイ静かなる詩情」(5500円・出店者/葉月と友だち文庫)が出品されています。これは、個人的に欲しい図録です。最終日まであれば…..。

これとは正反対のエログロナンセンスの極みみたいなのが「新天地第一巻」(500円・出店者/トンカ書店)です。昭和26年発行のこの雑誌、表紙に「独身者読むべからず奇抜事件特集号」などと書かれています。ページをめくると「ああ だれにやろうか知らこの身体」などという文句と共に、水着姿の女性が写っていますが、今時のエロ写真に比べれば健康そのものですね。

次にご紹介するは、絵本「浦島太郎」(400円・出店者/旅猫雑貨店)です。なんで、今さら浦島太郎、と思われる方が多いはずですが、面子が凄いのです。文章は物理学者の中谷宇吉郎、影絵の第一人者、藤城清治が絵を、写真を松本政利が担当しています。出品されているのは、平成15年に復刊されたものです。藤城の見事な影絵が楽しめます。発行元は暮らしの手帖社。後書きには、この三人が藤城の影絵作品をみているところが写っています。

女子の古本市は3月4日(日)まで

★壁面では「松田敏代素描展・彼女たち」を同時開催中です。合わせてお楽しみ下さい。

 

 

 

昨日の続きで、21日(水)から始まる「女子の古本市」に出品される本の紹介です。

「週刊新潮は明日発売です」というテレビCMをご存知でしょうか。50代以降の方の記憶にはあるかもしれません。だいたい、テレビで週刊誌の宣伝やってたなんて信じられますか?画面に「週刊新潮」の新しい号の表紙が映ります。当時、その表紙を描いていたのは、谷内六郎。おそらく、私が最初に名前を覚えた画家です。日本の各地の風景、人々の姿を描いたノスタルジックな作品が印象的でした。

「没後25年谷内六郎の軌跡 その人と仕事」という図録(1500円)が、出品されています。週刊新潮時代の作品も数多く収録されています。愛らしい子供たちが登場する表紙絵は、今見ても美しく輝いています。ほかにも、絵本、挿絵、装幀、企業の広報誌、舞台のポスターまで、谷内の多彩な画業がわかります。幸田文「笛」、深澤七郎「笛吹川」、小松左京「闇の中の子供」など店にあった小説も彼の装幀でした。

この図録を見て、谷内はノスタルジックなものばかりでなく、ポスターや企業の広告等モダンな作品も残していたことを知りました。或は、「夜の公衆電話」や「最終バスの客」などのファンタジー空間は、宮崎アニメ「隣りのトトロ」に相通じるものがあります。

 

村上勉「ペインズグレイに誘われて」(小峰書店1000円)も味のある画文集です。兵庫県出身の村上は、児童文学の挿絵を多く担当する作家です。細部までリアルな描き込みつつ、デフォルメされたデッサンが独特の世界を醸し出す画風を持っています。児童文学者、佐藤まさるとのコンビが多く、デビューも佐藤の「だれも知らない小さな国」でした。

ヨーロッパ各地を旅した時、出会った様々な職業のおっちゃんの肖像画がシブい味を出しています。荷車を引くスペイン、アビラのムッシュ。モロッコ、マラケシの水売りのじいさん。その紅い衣裳が、暑い大地を伝えます。極めつけは宮沢賢治全集を読み終えた直後に描いた「私のイートハーブ」。宮沢の小説に登場する人物がズラリと並び、狸、フクロウ、狐、猫、象など印象的なキャラクターも一緒です。チェロを弾いているのは、ひょっとして賢治? 村上はこの作品が気に入ってたみたいです。美人も二枚目もない、まるでじゃがいもの品評会みたいな、しわとでこぼこのオンパレードの作品を、「人それぞれの生き様が、一つ一つのしわやでこぼことなり、『よう頑張ってきたんだね』と声をかけたくなる。」と書いています。

 

★お知らせ 19日(月)20日(火)は古本市準備のため連休いたします。

 

 

次週21日(水)より、「女子の古本市」が始まります。これは、毎年2月に開催しているもので、出店者を女性に限定しているレティシア書房の冬の恒例行事。東京・横浜・岐阜・滋賀・京都・兵庫・大阪から参加して頂いている、女性店主セレクトの面白い本がいっぱい。勿論、お客様は老若男女どなたでも、気楽にご来店くださいませ!ちょっと早いのですが、到着した本の山からいくつかご紹介をします。(店頭に並ぶのは21日から。お楽しみに!)

愛読者の多い野呂邦暢。彼の随筆をまとめたシリーズの第2巻「小さな町にて」(みすず書房4500円)は、持っていたい一冊。1977年から80年にかけて発表された随筆、65年から80年にかけて発表された書評を、原則として発表順に編集したものです。500数ページ、定価7000円の大作ですが、頭から読む必要はありません。お気に入りの文章、あれっ?と感じた単語が飛び込んできたら、そこから読むのでいいと思います。名手の手にかかるとこうなのかと感嘆します。

中に、小林信彦の「ビートルズの優しい夜」がありました。60年代から80年代にかけての芸能界を描いたこの小説を「小林信彦氏は芸人と芸を愛しているのだ。芸人をタレントとい安っぽい言葉で私は片付けたくない。かんじんな点はここの所で、氏の芸人に関する見方の鋭さはみな深い愛情で支えられている」と書かれています。

同じ、みすず書房から「大人の本棚」シリーズという地味ながら、シブいセレクトの文学集が出ています。その中から、傑作二点をみつけました。野呂邦暢「愛についてのデッサン」(1200円)、山田稔「別れの手続き 山田稔散文選」(1200円)です。この装幀、帯の落ち着いた色合い、触っているだけで本好きなら幸せな気分ですね。当店のお客様で、全部コレクションして棚に並べるのが夢とおっしゃった方がおられましたが、さてコンプリートされたかな?

もう一点、夏葉社が出した復刻版関口良雄「昔日の客」(900円)。尾崎一雄、上林暁、三島由紀夫たちに愛された古本屋「山王書房」店主が綴る古本と文学への愛に満ちた一冊です。老舗古本屋の店主による文学の話って小難しい感じがしますが、これは平易な言葉で語ってくれます。心休まる文章とは、こういうものかもしれません。

 

★お知らせ 19日(月)20日(火)は古本市準備のため連休いたします。

レティシア書房、冬恒例の「女子の古本市」が始まりました。

東京、岐阜、大阪、兵庫、滋賀そして京都市内から28店舗が出揃いました。本日より最終日まで、毎度お馴染みの「こんな本を見つけた」をブログで開始します。

さて、最初にご紹介するのは、宮沢賢治の「よだかの星」(リブロポート1000円)です。これ賢治の童話に、玉井司の絵をつけた絵本なんですが、これに、あがた森魚が朗読し、彼自身の作詞による「よだかの王冠」を歌ったCDが付いているところが注目の絵本です。

 

数年前に亡くなったイラストレーター、フジモトマサル(亡くなった後、のきなみ著作が値上がり、今でもネットでは高額のものが沢山あります)が歌人の種村弘と組んだ「にょにょにょの記」(文藝春秋700円)は、種村の日記にフジモトがイラストを付けたもので、ユーモアに富んだ世界。モグラのような、アライグマのような不思議なキャラが魅力的です。種村弘の本では、安西水丸と組んだ「いじわるな天使」(アスペクト400円)も出品されています。イラストレーターを比べながら読んでみるのも面白いかもしれません。安西水丸が村上春樹と組んだ「うさぎおいしいフランス人」(文藝春秋1000円)も出ています。これも最近見かけなくなった一冊かもしれません。

種村の歌集が、一点出ていました。タイトルは「シンジケート」(沖積舎1000円)。

「耳で飛ぶ像がほんとにいるならおそろしいよねそいつのうんこ」

デイズニーのダンボのことを歌った作品ですが、確かに、空からうんこが降って来たら….。

 

如何にも古本屋という風情の写真満載の、東京の盛林堂が出した岡崎武志×古本屋ツアー・イン・ジャパンの「古本屋写真集」(1600円)は、非常にレアな写真が見られます。あの銀閣寺の古書店「善行堂」の名物店主が写っていますが、なんと髪の毛が黒い!若〜い日の店主の横顔が拝めます!

もちろん、岡崎さんもお若い姿で写っておられます。

なお、壁面には女子の古本市向けに、松田敏代デッサン作品「彼女」も展示してありますので、ご覧下さい。

 

★「女子の古本市」は19日(日)まで開催です。月曜定休日。最終日は18時まで。

 

 

 

 

 

「女子の古本市ってどーゆー意味ですか?」

はい、女性店主による一箱古本市でございます。

「女子しか買えないの?」そんな事はありません。誰でも買えます。

3年前に第一回目の「女子に古本市」を開催して、地元新聞社さんからの取材もあって、多くのお客様においでいただきました。今回は店舗数も大幅に増えての開催です。参加して頂いたお店は下記の皆さんです。

東京からは、古本石英書房、古書ますく堂、駄々猫舎、旅猫雑貨店、ママ猫の古本やさん、甘夏書店、大阪からは、本は人生のおやつです、兵庫からは、トンカ書店、1003、おひさまゆうびん舎、日課牧歌、古本ハレクモ、岐阜からは徒然舎、滋賀からは半月舎、伊勢から、古本うみうざぎ堂京都からはマヤルカ古書店、nowaki、榊翠簾堂、ヴィオラ書房、ブックスダカラ、明楽堂、星月夜、クロアゼイル

と並びました。また応援団男子(?)として、善行堂、古書ダンデライオンに参加していただきました。明日から、また細かく商品を紹介していきますが、コミックから文芸書までズラリと並んでいます。お値段も安く設定されていますよ。

さて、同時開催で、上仲竜太「girls」展も始まりました。当店では、5回目の個展です。今回は古本市に合わせて、女性を描いたイラストが十数点並びました。

彼のイラストはくっきりした線と、クリアーな色で、ユーモラスな動物などの明るい軽快な絵が多かったのですが、今までのカラフルな作風とは趣きを変えて、様々な女性の姿を撮った写真から、黒ペンで、描いています。真摯に対象を写し取ろうという、原点回帰の試みのようです。

黒人女性の物思いにふける横顔、年を重ねた女性の顔に刻まれたしわなど、美人画ではなく、その人の人生を描き込もうという静かな闘志を感じました。こちらの個展は、古本市と同じく21日(日)までです。

もう一つ、小さな個展を開催しています。猫山青汰さん描くボブ・ディラン肖像画展です。彼女とは、神戸のトンカ書店に行った時に、出会いました。丁度、トンカさんで個展の開催中で、色々とお話をしているうちに、CDコーナーでミニ展示しませんかとお誘いしました。音楽暦の長いディランの表情を、的確に捉えた作品が8点程並んでいます。もちろんこの際CDも揃えました。3枚組CD”tthe Bootleg SeriesVol.1−3”の横に物思いに耽るディランが並んでいます。こちらのミニ個展は2月末までです。(店長&女房)

 

来週2月9日(火)スタートの「女子の古本市」に参加のお店から、ドンドンと本が届いています。本日から、その予告として、届いた本を紹介していきます。

今日はその第一回目です。先ずは、和田誠ファンなら持ってぜひ持っておきたい「IMAGICA SCREEN GRAFFITI」(IMAGICA)です。縦30cm×横22cmの大きさの画集です。中身は、彼が愛した映画を、ハロルド・ロイドの「用心無用」(23年)から、ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(84年)まで網羅した作品集です。どれも絶妙なタッチで楽しませてくれます。「夫婦善哉」の森繁久弥や、「座頭市」の勝新太郎なんて、その役者の真髄を捉えた作品ですね。映画としては退屈だった「八十日間世界一周」のワンカットは、作品を観ているだけで気球に乗って大空に行く気分です。

この作品集は89年に発行されましたが、元々はIMAGICA のカレンダー用に彼が書いた作品をまとめたもので非売品です。貴重な一冊で、お値段は8000円と高価ですが、入手の困難さを考えると安い買物です。

図録でちょっと面白いものを発見しました。「象徴派ー夢幻美の使徒たち」です。19世紀末ヨーロッパ、特にフランス、ベルギーで活発だった象徴主義芸術を取り上げた図録です。夢、幻想、グロテスク、永遠への憧憬等々様々な言葉が、ポンポンと出てきそうな作品ばかりです。モロー、ルドン、ゴーギャン、ムンク等、人気の画家達の作品が登場してきますが、私がここで取り上げたのは、マックス・クリンガーの作品が掲載されていたことでした。

と言っても、この作家の名前を知ったのはこの図録のおかげでした。ずっと前にヨーロッパのロックバンドのCDのジャケットに彼の「手袋2.行為」(右図参)という作品が使用されていて、音楽以上にその不思議な感覚に惑わされたことがあるので、こんなところで再会するなんて驚きでした。独特の幻想美は、20世紀のシュルレアリスムに影響を与えたみたいです。こちらの図録は2500円です。

 

今回はコミックも色々と登場してきますが、セットものをご紹介。萩尾望都の「残酷な神が支配する」(小学館文庫全10巻セット3500円)。定価で買うと6000円少々ですから、約半額です。性的虐待、近親相姦、同性愛、ドラッグ等々泥沼のサイコサスペンスに挑戦してみてはいかがでしょうか。「第1回手塚治文化賞優秀賞」を獲得した作品でした。

「女子の古本市」 2月9日(火)〜21(日) 15日(月)定休