個人的に注目している漫画家に宮崎夏次系がいます。手塚治虫や石森章太郎に親しんできた人間には、この崩した線で描かれる人物造りに、拒否感もあると思います(私もそうでした)。しかし、「夢から覚めたあの子とはきっと上手に喋れない」(250円/出品・viola)は、世の不条理を描きつつ、明日の希望を登場人物たちが見つけてゆく素敵な物語です。本の帯の「言葉に出来ず葬ってきた感情に光をあてた」という言葉、上手いこと言うなぁ〜と感心しました。同じ作家の「僕は問題ありません」(250円/出品・viola)も出ています。

私の世代にとって、植草甚一は、アメリカ・ヨーロッパの新しい文化を教えてくれた人です。新しい映画も音楽もアートも彼の口から語られたものは、すべて観たい、聞きたいと思ったものです。1975年に出版した「いつも夢中になったり飽きてしまったり」(1200円/出品・榊翠簾堂)は最近文庫されましたが、彼のポップな感性と新しいものへの飽くなき好奇心を、読者に提供した傑作です。「やさしい本ばかり読んでいた」では、海外の雑誌やら洋書の面白さを教えてもらいました。ジャズ、ロックに興味をお持ちの諸氏にはこの本必読です。どれだけ多くのレコード買ったことか。

ますむらひろしが、宮沢賢治作品の作品漫画化したものは、さまざまな出版社から出ていますが、朝日ソノラマが賢治没後50年記念で出版した「賢治に一番近い」シリーズが、今回まとめて出品されています。「雪渡り+十力の金剛石」、「風の又三郎」、「銀河鉄道の夜(初期形)ブルカニロ博士編」、「銀河鉄道の夜」、「グスコーブドリの伝記」、「猫の事務所+どんぐりと山猫」(各1200円/出品・明楽堂)。大判のコミックなので、ますむらの細かいタッチもよく解ります。個人的趣味ですが、「銀河鉄道の夜」は「初期形ブルカニロ博士」の方が、感動的だと思います。ぜひこの機会に、初期形、本編とも読んでみて下さい。これら大型版はすべて絶版です。

もう一点ご紹介。ヘェ〜、五味太郎の俳句!と驚いた「俳句プラスアルファ象」(600円/出品・石英書房)。「冬の日は 帽子眼深かに 過ぎゆけり」「熔け崩れゆく 仕様にて角砂糖」「月の皿 銀の魚を盛りつけて」などの俳句に、彼のイラストを組み合わせた作品集です。

「春風は けものの腹のあたたかさ」 この作品集の中で好きな一句です。