WOWWOWで放映された大島弓子原作のドラマ「グーグーだって猫である」を楽しみました。

映画は小泉今日子主演でしたが、今回は宮沢りえ。TV版も映画も監督は犬童一心ですが、連続ドラマと映画ではアプローチが全く違っていて、それぞれ面白かったです。猫と生きるマンガ家の、ストーリーのあるような、ないような日常を描いたドラマ版の方が、より原作に近い気がします。ラスト、主人公が、納得した表情で夜の公園を歩んで行くところは、こんな歩き方、大島の漫画で見た気がします。

同じ原作で主役を演じた、二人のアイドル出身の女優さんの表情が、どちらもとてもチャーミングでした。映画版ラストの小泉は、フィナーレに相応しい笑顔でしたね。

この二人に薬師丸ひろ子を加えた三人は、熾烈な芸能界を生き抜き、修羅場をたぶん幾つも乗り越え、歳と共に新しい魅力を見せてくれています。いや〜この年齢の重ね方はお見事です。

ドラマ版の音楽は、高田漣(高田渡の息子さん)、映画版は細野晴臣。これまたどちらも、脱力系の素敵な音楽でした。

残念ながら「グーグーだって猫である」の原作本は在庫してませんが、漫画といえば、ちょっと面白い「ガロ」が入荷しました。1995年9月号(1000円)です。特集は「宮澤賢治の世界」です。

ますむらひろしが「空飛ぶ賢治には、空で逢おう」でこんなこと言ってます

「60年代の終り、マリファナを吸って森で怠けていた者たちの書くミニコミ誌の中に、『宮沢賢治』に対する共感の言葉があるのを見た。朝から『飛んでいる』者は、賢治の童話のあちこちに『飛ぶ賢治』を感じた」

なんか、時代を感じる文章ですね。漫画としては、森雅之「星めぐりの歌」や、やまだ紫の「フランドン農学校の豚」、あるいは人気イラストレーターだった矢吹申彦が四コマで「賢治ずいぶん」を書いています。

驚くべきは筑摩書房版「新校本・宮沢賢治全集」の編集者へのインタビューが掲載されていたことです。この全集、一冊に本文篇と校異編が入っている密度の濃いものでした。私も何巻かは購入しましたが、なんせ高額商品だったので途中挫折しました。その全集に携わった編集者のひたむきな熱意の溢れるインタビューでした。

 宮澤賢治については、もう数えきれない程の本が出ています。しかし、このシリーズは知りませんでした。全5巻の「宮沢賢治漫画館」(潮出版社/昭和60年初版発行)です。今回、第2巻のみ(950円)入手しました。漫画化では、ますむらひろしの一連のシリーズは有名ですが、これは多くの漫画家が賢治の作品を一つずつ描いています。参加している作家は、こんな面々です

「菜の花畑のむこうとこちら」の樹村みどり、大長編「石の花」の坂口尚、ご存知スズキ・コージ、「まんだら屋の良太」の畑中純、「ほえろポポ」の村野美、そして、当店でも人気の「しんきらり」のやまだ紫。

確か、このシリーズは、やまだ紫の作品集を調べている時に見つけたのですが、彼女が取り上げたのは、地味で、シビアな「フランドン農学校の豚」という屠殺される豚のお話です。おそらく、この作品がコミックされたのは初めてではないでしょうか?独特の繊細な線で滑稽で哀しい世界が展開されます。原作の最後は、

「とにかく豚はすぐあとで からだを八つに分解されて 厩舎のうしろに積みあげられた 雪の中に一晩漬けられた 月はだまって過ぎてゆく 夜はいよいよ冴えたのだ」というものです。

やまだ紫も冷え冷えとした三日月のコマで締めくくっています。

彼女の作品「性悪猫」(小学館1200円)も入荷しました。その一篇「さくらに風」の猫の独白は、極めて文学的です。

「たいていのやさしさは あとで寒いもの わたしなればにげてしまうよ たといひとときなれど 日向はぬくいもの ぬくいところがいいよ お日様をにらみつけるなど 誰しもできまいもの」

 

さて、賢治の漫画の絵の面白さでは、やはりスズキ・コージが抜きん出ていますが、「風の人・宮沢賢治を求めて」というエッセイと一緒に独特のタッチの木版画作品で彼のファンタジーワールドを表現した畑中純も忘れがたいものがあります。

 

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漫画家ますむらひろしの描いた宮沢賢治関連のコミックは、当店では人気で、まとめてにマーケットに出ることもなく、見つける度に仕入れて出すと、直ぐに売れてしまいます。

彼の人気は、「銀河鉄道の夜」の世界を猫に置き換えて映像化したアニメ「銀河鉄道の夜」のヒットも大きいと思います。音楽は細野晴臣が担当、無国籍音楽の典型みたいな心地よきサウンドでした。

ますむらと賢治コンビは、大判コミック、ハードカバー、文庫と多く出ています。今回、ハードカバー版の「ますむらひろし宮沢賢治選集」の第2集と第3集が入りました。

第2集は「銀河鉄道の夜」。これには初期形「ブルカニロ博士編」というのがあります。親友カンパネルラを亡くして悲しみにくれるジョバンニの前に登場する、愁を帯びた眼を持つ、知性と優しさを兼ね備えた猫は、原作を越えた造形です。多分、彼なら平和に生きて行ける共同体の設計やら、新しい時代のあるべき姿も教えてくれそうです。「科学も信仰も同じだ」それが人間全体の幸せになるならば、と大胆な考えの持ち主だった賢治の分身みたいですね。「銀河鉄道の夜 最終形」も収録されていて、その微妙な違いも楽しめます。個人的には初期形の方が好きです。


 

「ブルカニロ博士編」の最後にこんな台詞があります。

「何かいろいろのものが 一ぺんにジョバンニの胸に集まって 何とも言えずかなしいような新しいような気がするのでした」

賢治は、人生を、日々悲しいような、日々新しいようなものと捉えていたのかもしれません。

 

第3集は「風の又三郎」、「雪渡り」、「十石の金剛石」他が収録されています。「十石の金剛石」は、殆ど植物が主役の物語ですが、原作で読んだ時よりも深く心に染み込んできました。ラストのいばらを外す猫の王子の姿は忘れられません。

「風の又三郎」ですが、大判のコミック(朝日ソノラマ)もあります。ますむららしい猫キャラの動かし方を楽しむなら、こちらをお薦めいたします。このシリーズは全六巻発売されていますが、なんとか揃えていきたいものです。

 

★ 勝手ながら6月30日(月)7月1日(火)と連休させていただきます 。よろしくお願いいたします。

 

 

 

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元旭山動物園飼育係、現絵本作家のあべ弘士さんが、なんと21mのヨットで北極海へ出かけました。ホッキョクグマを求めて3000キロの旅の始まりです。その旅をスケッチと文章で綴ったのが「こんちき号北極探検記」(1400円)です。

こんちき号のクルーは日本人8名と外国人クルー3名の11名で、一路ノルウェーを目指します。到着して、先ず買い込んだのがお酒。買える量に制限があるため、大丈夫かと不安になる。他に、もっと心配することあるだろうに、と笑ってしまいます。そして、著者の誕生日に目出たく、北極へ向かって出航。(ここでも笑ってしまう事件あり)

その後、航海の間、ひたすらスケッチを続けていきます。シロクマのデッサン、上手いなぁ〜と見ほれてしまいました。いや、さすが絵本作家の第一人者。どの絵にも飄々とした味わいと、クスクス笑えるユーモアが絶妙で、ドンドン読んでしまいます。そして、北緯80度を超えます。悪天候の中、みんなゲロゲロ状態ですが、作家はスケッチブックを離しません。極地探検の本は沢山出ていますが、これ程、ユーモアとホイホイ気分と、酒の話に満ちたものはないでしょうね。なんせ、後書きにもこう書かれているぐらいですから。

「いまは静かに旅のあれこれを心の中で熟成させ、香り豊かな日本酒に醸し」

本にも出てくる、スコッチの名酒「フェイマス・グラウス」でもちびちび飲みながらゆっくり楽しみたい一冊です。

彼の絵本も何点か集めました。表紙がかっこいい宮沢賢治の「なめとこ山の熊」(1850円)はお薦めです。ラスト、死んだ主人公の狩人を見送る熊たちの場面、狩人の周りに集まる熊を大きく描く絵本が多いのですが、ここでは、遥か山の彼方から見ているようなロングショットで描かれています。澄み切った悲しみが見事に表現された絵だと思います。

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WOWWOWで放映していた三谷幸喜脚本・監督の「大空港2013」には、十分に笑わせてもらいました。この作品、ワンカット、ワンシーンで90分撮り上げている実験映画です。ワンカット、ワンシーン。つまり、カメラが回り出したら、一回も止まらずにラストまで行くという、スタッフにもキャストにも失敗できないプレッシャーがかかる作品です。

飛行場の待合室を舞台に、地上客室乗務員と、ある家族のドタバタを一気に見せます。役者が実にうまくて、(竹内結子・香川照之など)「ワンカット、ワンシーンですよ」なんてわざわざ言わなくても、楽しめます。

なぜ、こんな実験映画を作るのか。それは、その場で登場人物と一緒に右往左往するスリルが味わえるからです。かつて、ヒッチコックが、一室で起こる殺人の謎解きを描く「ロープ」という映画で挑戦しました。近年では、ロシアのエルミタージュ美術館を舞台にしたA・ソクーロフ作品「エルミタージュ幻想」が、90分ワンカット、ワンシーンでした。(これは疲れました)

「ワンカット、ワンシーン」で、脳裏を過るのは宮沢賢治です。彼がこんな映画的手法を知っていたわけはないと思いますが、読んでいると、これって、ワンカット、ワンシーンだよな、と思ってしまうような作品に出くわします。「注文の多い料理店」などは、ワナにはまった人間達が、奥へ奥へと向かう様をこの手法で描いていますし、「やまなし」も水中から見上げる蟹の視線が途切れる事なく描かれています。また、長編詩「小岩井農場」は、主人公が駅を降りてから、どんどん牧場を歩く様子を心象風景を織り込みながら、最後まで読者を引っぱり回します。(だから、この詩の通読は、やはり疲れます)

写真の詩集は、ソノシート付きで北大路欣也が「雨ニモマケズ」を朗読しています。(角川書店800円)

作り手の力量が問われますが、またこんな手法で作ったものは、きっと観てしまいそうです。

 

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