絵本の解説本や、書評本は沢山出版されていますが、本日ご紹介する寺村摩耶子「絵本をたべる」(青土社1200円/出品・ハニカムブックス)も、そのジャンルの一冊です。芸術系雑誌「ユリイカ」を出している青土社から、絵本の解説本が出ていることは知りませんでした。2010年11月発行の「ユリイカ」で特集された「100万匹のねことともにー絵本のなかの猫たち」が本書の原型になっているとのことです。かと言って、ねこの絵本の紹介本ではありません。「夜」「感覚」「森」「動物たち」「変身」「祝祭」「ねむる」という”ユリイカ”らしいタイトルに分けて、絵本が紹介されています。「感覚」の項目では、どんな本が選ばれているのかと見てみると、雨、風、雪、夕日などの子供にとって身近で不思議な自然現象を捉えた作品が紹介されています。書影も載っていますので、絵本探しに役立ててください。

ノルウェイーの児童文学の傑作トールモー・ハウゲン「夜の鳥」(河出書房新社700円/出品・マヤルカ書房はオススメの一冊です。ハウゲンは73年に最初の小説を発表、75年に出した本作は高い評価を受け24カ国語に翻訳され、いまだに読み継がれているロングセラーです。

アパートに潜む悍ましい秘密や家庭の不安におびえる少年ヨアキムの繊細な心理を抒情的で印象深い文章で描いています。ノルウェーの風土はきびしく、人々の暮らしも、そんなに裕福ではありません。そんな大人たちの日々の厳しい生活が、子どもたちの世界にも密接に反映されていきます。明るい未来なんてどこにあるのかという世界なのですが、それでもヨアキムは一日一日を生きていかなければなりません。

「ぼくは自分の生徒たちが怖いんだ」とヨアキムの父親は、しばらく先生の仕事を休むことになります。そしてときどき、夜中にふらりと、いなくなってしまいます。探しても見当たらない。父親はどこへ……..。そんな時、あの鳥が、ヨアキムの夜を覆います。北欧の美しい自然を背景に、心の病に悩む父親に小さな胸を痛める少年の不安を、ファンタジーとリアリズムを融合させた手法で描いていきます。表紙の絵は酒井駒子です。

 

 

「飛ぶ教室」等で、我が国でも人気の児童文学作家、E・ケストナーの「家庭薬局」(かど書房1000円/出品・半月舎)は、ケストナー作品では異色であり、かつ重要な作品です。ご承知のように、ナチス政権誕生後チェコで出版された本書は、その他の自由主義的作家の作品と共に、好ましからぬ著作とされました。独特の着想、風刺、諧謔、パロディーが渾然一体となった詩が集められています。しかし、ケストナーが一番訴えたかった反軍拡、反戦、平和主義的メッセージは割愛されました。そこで本書では、巻頭に「平和が脅かされてきたら」という本にはないものを付け加えています。険悪な政治的情勢と暗く退廃的な世相の渦巻く中で、ケストナーが本当に望んだものが、ここにはあります。

 

★女性店主による『冬の古本市』2/16(日)まで。12:00〜20:00  (最終日は18:00)

神戸・大阪・岐阜・東京・御殿場・神奈川・京都などから女性店主の選書が集まっています。ぜひお立ち寄りください.

勝手ながら2/17(月)〜2/20(木)まで連休させていただきます。