1984年、小西康陽は「ピチカート5」というバンドを結成、一躍日本のポップミュージックの最前線に踊り出ました。彼が紹介した音楽や映画は、同世代の若者に絶大な支持を得ていきます。

時が流れて、今年「ピチカートワン」というソロプロジェクトで、「わたくしの二十世紀」(2300円)というアルバムを発表しました。

彼が作詞作曲したものを、多くの歌手が歌ったものですが、暗澹たるこの時代を映すような曲ばかりで、その歌詞の深い意味に、引き込まれていきます。

YOUが歌う「戦争は終わった」

「電話のベルの音 鳴り止むのを聴いて 目を醒した 午後二時過ぎ 雨が降っている」というユーミンばりの歌詞で始まり3番まで続くのですが、各々の歌の最後に

「戦争はどうして終わらないのかな 戦争はどうして終わらないのかな」、「戦争はきょうも終わらないもかな 戦争はたぶん終わらないのかな」、「戦争はどうして終わらないのかな 戦争はたぶん終わらないのかも 戦争はたぶんなくならないのかも」

という不気味な歌詞が繰返されます。

おおたみえりの歌う「聴こえる?」では、のっけから「私が死んでも泣いたりしないで」と「死」が登場し、「明日も世界は変わらないのだし、みんないつかはさよならするだけだし、みんないつか死ぬの」と、「死」に覆われます。

やはり同じように、かまやつひろしが朗読する「ゴンドラの歌」で「もしもゆうべ観た夢が本当になるのならぼくはたぶんもうすぐ死ぬかもね」で始まり、「人は生まれて そして誰かを愛して そしてつまり死んでゆく すべてはくりかえす」で終わります。

全曲「死」に彩られたアルバムではありません。でも、典型的な失恋ソングで、市川実和子が歌う「あなたのいない世界で」でも、後半「あなたのいない世界で 私は週末の夜 薬を服んで眠った」で、彼女が不幸な死に遭遇したのではないかと思ってしまいます。

アルバムの表紙は雪に覆われた街を捉えた写真で、何の音も聞こえてこない静寂の風景。そして、小さくタイトルの「わたくしの二十世紀」と書かれています。沈黙の支配する世界に聞こえてくる、音楽のつぶやきとでも表現すべき音楽です。

「戦争は終わらないのかな」という甘いささやきには、批判もあろうかと思いますが、それはお門違い。こんな時代なんだけれど、ロマンチックに生きたいよね、という気持ちは大事にしておきたいものです。今年聴いたアルバムでは、ベスト1ですね。雪の日に延々と聴いていたいものです。

「冬の日の曇り空を 見上げると死にたくなる」という「日曜日」のおセンチさにクラクラしてきます。