ホホホ座店主山下賢二さんの「喫茶店で松本隆さんから聞いたこと」(新刊/1540円)が、夏葉社から発売されました。

京都市内にあるお店、「ヤマトヤ」「イノダコーヒー本店旧館」「かもがわカフェ」「カフェ火裏蓮花」で、山下さんが松本隆さんにインタビューしたものをまとめた一冊です。これは音楽家としての松本隆を振り返る本ではありません。もちろん、音楽の話も登場しますが、本題ではありません。人生論?、このお二人で?? でも、ちょっとそんなニュアンスもあり、覚えておきたい言葉がたくさん出てきます。

「人と人ってすごく有機的だから、空気でも伝わるんだと思う。オーラも伝わるんだと思う。だから、できるだけ天才に会った方がいい。ものをつくる人はね、若いうちに。」

それぞれのカフェで、テーマを決めて話が始まります。例えばかもがわカフェでは、「賢さについて」。松本さんはこう言います。

「考える力というのは、その人が自分で鍛えないといけない。だから、若いときはとにかくたくさん暗記するのがいいと思う。ひとつでも多く単語を頭に入れておく。作詞力で言うと、それが語彙になる。」

どの章も難しい言葉はなく、簡潔にまとめられているので、スッと頭に入ってきます。インタビューは、もっと長い時間だったのでしょうが、ここまでシンプルにまとめた山下さんの手腕に拍手です。ポケットに入れて、ひょいと出して読む。何度も。それがこの本の読み方かもしれません。

なるほど、と思ったのは松本さんが作詞するときに気をつけていること。

「僕が使わない言葉は、言わなくてもいい人称代名詞。つまり『僕』とか『君』とか『あなた』。理由は字数の無駄だから。重要なところに『あなたに』なんて書いてしまうと、それだけで四文字も使っちゃう。それを言わなくてもわかるように書けばいいわけだから、必要最小限度にとどめる。そうすれば、ほかでいろんなことが言える。」

最後まで読んで思ったのは、この二人、よほど気が合ったんだなぁ〜。気取ったところも全く無いし。

「思えば、松本隆という人はずっと異色だったのかもしれない。誰も囲わない。どこにも属さない。まさにボヘミアンのように業界も居住地も自分の気分のよい方向へと進んでいく人。その突然変異的な足どりが、僕みたいな人間とも親しくさせてしまったのだろう。僕は、七二歳の青年と出会ってしまったのかもしれない。」

という山下さんの言葉でも、二人の出会いが幸せなものだったということがわかります。