左京区浄土寺にある「ホホホ座」は、皆さんよくご存知の書店。この店を切り盛りする二人、山下賢二さんと松本伸哉さんの本「ホホホ座の反省文」(ミシマ社1944円)は、最初、なんや二人の愚痴本かいなぁ〜、なめんとんなぁ〜、などと思いつつ読み始めたところ・・・・・。

読み進めてゆくと、実に面白い。

「『わざわざ言いたいためだけに、遠回りをする』ことは、意識的にやっているわけではないのですが、なぜか、ホホホ座では多い気がします。日頃、無駄話ばかりしているからでしょうか。面白い表現は、合理性から離れたところから生まれる。そんな気もしています。」とか、「あらゆる物事は、自然発生的に始まることが、一番長続きし、強い。と僕は考えています」という山下さんの文章に出会うと、そうだよな、と納得します。

ホホホ座開店への道、そして京都市左京区という特殊な環境下で、どのようにしてホホホ座を育ててゆくか、二人の考えが明らかにされていきます。ホホホ座が開店したビルの二階で、元々古本屋「コトバヨネット」を営んでいた松本さんは、2000年前後から書店業界でのナチュラルな暮らし・生活を目指す流行に対して、こうぼやきます。

「ひたひたと忍び寄る『暮らし・生活系』の足音に、お店の存続をかけて歩調を合わせながらも、時として、その道に、バラバラと画鋲をまき散らしたくなることもあります。それは、常に人生の脇道に追いやられていた、サブカル者としての怨念と、燃えカスのようなプライドがもたらす、屈折した感情なのかもしれません」

「バラバラと画鋲をまき散らしたくなる」というご意見、私も同感です。その手の本一色に染まってゆくことへの苛立ちは、今もあります。

これは素晴らしいと思った山下さんの考え方を見つけました。子供が買って欲しいとねだった本を、親が難しいからもう少し大きくなってからと拒む、よく見かける光景に対して彼はこう書いています。

「その本に『大きくなってから』出会うチャンスは、決して多くはありません。そもそも、本は可能性を開拓するためにあるので、今この時点で、理解できるかどうかは、たいして重要ではないのです。

可能性しかない子どもが、直感で『面白そう』と思った本は、なるべく買ってあげるべきだと、僕は考えています。」

ぼやき本かと思っていたら、深く考えさせる。あるいは、こんな新しい仕事のやり方ってあるんだと驚かせてもらえる刺激に満ちた本でした。二人の中年男の今後に嫌が応にも期待度アップ。

ところで、版元のミシマ社が作ったポップが素晴らしい出来!

「もはや夢も希望もなく それでも毎日店あけてます。」

そして帯の文章

「『ていねいな暮らし』『セレクトショップ』『夢を持とう』…..そういうものに疲れてしまったすべての人へ。」

お見事!座布団一枚です。

 

 

トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

 

 

大阪にあるBOOKLOREから、「耳の人」(1620円)、「言の森」(1575円)など数冊の詩集を出している詩人、西尾勝彦が編集「旅人と詩人の雑誌 八月の水」の最新5号(BOOKLORE/1296円)が入荷しました。

この雑誌が作られたのは、東北大震災と、その後の世間の混乱が切っ掛けでした。これからどんな時代になってゆくのかという不安を越えて、こんな時代になってほしいという思いを雑誌という形にしたものです。

創刊の言葉にこうあります。「『旅人』と『詩人』が見直される時代になってほしい、と思ったのです。目先の利益ではなく、はるか遠くをみつめる『旅人』と『詩人』の存在が、今後、重みを持つはずだと思ったのです。彼らのまなざしの強さ、そして優しさによって、少しでも時代がおだやかになればと希望しています。」

その思いで5号まで発行されてきました。詩を中心にしたミニプレスはあまり動きが良くないのですが、例外的にこの雑誌はほぼ完売します。飾らない文章とシンプルな本作りがいいのだと思います。「ホホホ座」の山下店長が、毎回素敵な詩を発表されていて、今回も三作掲載されています。「おおみそか」という短い詩の後半が、いい雰囲気です。

「師走気分の人も、関係ないという人も 子どもだったおおみそかをよぎらせ 寒さを顔にたくさん受けて 冷たいほほの街

よいお年を ノーサイドの言葉で 皆 家路を歩く」

今年5月レティシア書房で紅型染めの個展をしてくださった、絵本作家ほんまわかさんも、毎号寄稿されています。絵本の仕事のこと、そして沖縄の市場のことを書いています。住まなくてはわからない沖縄の面白さが伝わって来ます。

紀行エッセイでは、大西正人の「ターナー島」が本好きにはお薦め。伊予鉄高浜線の最終駅、高浜に降り立った著者と妻は、そこでターナー島を見つけます。ターナー島とは漱石の「坊ちゃん」に登場する島です。そこから小説「坊ちゃん」の世界に入るのですが、松山を舞台にしたこの小説、「実際作中に出て来る地名などは、そのほとんどが実在しない。」と著者は指摘します。松山が舞台とは言っても、これは漱石が作った架空の松山なのです。それは、知りませんでした。

さらに、著者が再読して驚いたのが「『マドンナ』が実はほとんど登場しないという点である。登場する場面も少なければ。一言の声すら発しない。まちがいなくキーパーソンの一人でありながら、当人はほとんど現れないのだ」という事なのです。

そうだったか?とお思いの方、「坊ちゃん」を再読しては如何でしょうか。

なお、「八月の水」は2号〜4号まで各1冊づつ在庫がございます。

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カレンダーの犬や猫たちついては、撮影者の児玉さんのブログに上がっています。