イタリアを代表する作家、イタロ・カルヴィーノは、50年代半ばに全国を巡って200編の民話を集め、「イタリア民話集」という本を出版しました。その中に「梨といっしょに売られた女の子」という一編がありました。そのお話に魅せられたのが、絵本作家の酒井駒子でした。そして関口英子の翻訳、酒井駒子の絵で発売されたのが「梨の子ペリーナ」(BL出版/新刊1760円)です。

梨の木に守られた女の子ペリーナの冒険物語。勇敢で、かしこいペリーナは、王の命じた難題に立ち向かいます。満月の下、彼女が梨の木の上に寝ている絵がそれはそれは美しい。旅先でペリーナの前に現れる不思議なおばあさんのおかげで、様々な難関を突破していきます。彼女が助けた人や犬たちが、手を差し伸べてくれる描写も素敵です。酒井駒子さんの優しく繊細なタッチの絵が、ペリーナの優しさを際立たせています。酒井駒子ファンは、持っていてほしい作品です。

もう一つ。以前ヒメネス作「プラテーロとぼく」という、ロバのプラテーロと少年の物語をご紹介しましたが、ヒメネスの物語から28点を選んで、山本容子が銅版画で描いた「プラテーロとわたし」(理論社/古書1600円)もとても美しい本です。

山本は、銅版をオレンジ色の絵の具を塗布したキャンパスに刷っていて、「オレンジ色のベースは、ヒメネスとプラテーロの素肌のあたたかさと、太陽があたためた大地の色、信頼関係の色。」と書いています。

確かにプラテーロの背中や、顔がとても優しい。切なく、もの哀しい世界が広がってゆく一冊です。なお、ギター演奏と朗読による「プラテーロとわたし」というCDも発売されています。

 

★ARKの犬猫カレンダーも販売中!(大・1000円 小・800円 税込)こちらは売り上げをARKに寄付いたします。(壁掛けタイプが少なくなってきました)

 

 

版画家山本容子が、谷川俊太郎の詩を16作選び、谷川賢作が曲を付け、出来上がった曲を声楽家の波多野睦美、シンガー&ソングライターの村上ゆき、そして大御所石川セリ達が歌い、俊太郎自身が朗読する。さらに、その音楽に触発された容子さんが、なんと三十数点の絵を描きました。

これ、ライブペインティングではありません。CD付きの本「あのひとが来て」(マガジンハウス1800円)です。本のタイトルになっている「あのひとが来て」には、こんなフレーズがあります。

「あのひとはいつかいなくなる/私も私の大切な友人たちもいつかいなくなる/でもあの木はいなくならない/木の下の石ころも土もいなくならない」

これ、波多野睦美がどう歌っているのか、聴きたい!しかし、CDが入っているケースは未開封。さらに、この本もとても綺麗で、新品みたいです。定価は5452円が、なんと1800円!もうお買い得としか言いようがありません。

何点か山本容子の本が入荷しています。

見て楽しいのは、「わたしの時間旅行」(マガジンハウス1500円著者のサイン入り)。これは、2001年表参道のビル工事現場の工事用仮囲いに、一年間365日、新しい絵を加え一年後に全貌を表すという野外アートの実験に使用された絵を集めてあります。どこから見てもOK。机の横にでも置いて、好きな場所を開けて、楽しそうな登場人物たちとちょっと会話をして閉じる。それを365日繰り返す。そんな見方などいかが?

じっくり読むなら「アリスの国の鏡」(講談社950円)。ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に潜む数々の謎を調べてゆく、物語りの奥にあるものを読み込んでゆく楽しさを満喫できる一冊です。原作の重要なモチーフであるチェスの解説から始まります。物語とチェスの棋譜を検証しながら、この不思議な世界に入ってみてはどうですか。さて、チェックメイトまで辿りつくか?

もう一点、読み物をご紹介。「山本容子の食べた物語り」(清流出版1050円)タイトル通り、食べ物に関するエッセイと絵が一杯の楽しい一冊ですが、やっぱ大阪、と拍手したのが、ホテルニューオータニ大阪のルームサービスにはたこ焼きとお好み焼きがあるというお話。ちょっと飲んで帰ってきて、深夜小腹がへった時に、これは重宝するみたいです。一度試してみては?

山本容子著「本の話 絵の話」(文藝春秋/初版1000円)を読んでいると、彼女が本の装幀に関わるきっかけが書いてありました。

1978年、それまで自分で物語を作っていたのと反対に、他人の物語を作品に仕上げることを始めます。その最初の作家が、好きだったトルーマン・カポーティでした。「冷血」のように極めて暴力的であるかと思えば、「ティファニーで朝食を」みたいに繊細な都会小説を書くカポーティに、彼女の資質が合ったのでしょうか、様々な作品を装幀していきます。それがある編集者の目に止まり、村上春樹が翻訳するカポーティの「おじいさんの思い出」、「あるクリスマス」、「クリスマスの思い出」の三冊に銅版画をつけることになり、ここから本格的に本の世界に関わっていきます。(三冊とも在庫あります)

というふうに、本と作家の話があれこれ語られていきます。随所に彼女の作品が挿入されていて、それを比べながら読むと引き込まれます。「人の話」篇では、多くの文人の顔と短い文章が添えられています。私がいいな〜と思ったのは、石川啄木。「言葉づかいより、筆づかいのほうが、活発だったように思う」で始まる啄木の印象は、たしかにね、と思わせます。啄木の前の項は、チャペックです。「笑顔が素敵。特に仔犬のダーシェンカを見守る時と、サボテンを見つめる目。」。そうですね、ダーシェンカを見つめる視線は素敵です。こんな風に72人の内外の文士が登場しますが、中でも立原正秋の銅版画には笑えます。

山本容子の作品を楽しみながら、多くの文学作品も楽しめ、ちょいと読んでみようかという気にさせる一冊です。犬好きの容子さんらしく、随所に犬が登場してそれもまた楽し。我が家の三女ラッキーもご満悦です。

 

Tagged with: