本日よりレティシア書房「夏の古本市」がスタートしました。本日先ず紹介するのは、らむだ書店さんが出品している武井武雄の画集三点です。

童話の挿絵として軽視されていた子供向けの絵を「童画」と命名し、芸術の域にまで高めた武井武雄は、今も大人気の作家です。今回出ている本は全て限定出版で、ネットではかなりの高値で取引されています。

昭和39年に発行された豪華版「武井武雄童画集」(らむだ書店出品/盛光社/7000円)は、35cm×30cmの大型の版型の画集で、1000部限定の452番目のシリアルナンバーがついています。50年代から60年代にかけて描かれた絵が、16枚。一枚ずつ貼り付けてあります。2点目は「廃園の草」(らむだ書店出品/中央公論社/5000円)で、著者サイン入りです。こちらも限定680部の販売です。最後の一点は、「昼の王と夜の王」(らむだ書店出品/筑摩書房/7000円)。二重函入り、起毛クロス装、「昼の王」と「夜の王」の紙、印刷方法が使い分けられ限定1000部発行で693番目のシリアルナンバーが記載されています。どれも、決して安い本ではありませんが、武井ファンは是非、この機会にお買い求めください。

京都新聞を読んでいる方は沢山おられると思いますが、新聞の夕刊に「現代のことば」というコーナーがあります。京都在住の文化人に、テーマを設けずに、自由にエッセイを書いてもらうコーナーで、田中美知太郎、貝塚茂樹らの人文学者、末永博、猪木正道らの社会学者、志村ふくみ、八木一夫らの芸術家、瀬戸内寂聴、邦光史郎らの小説家、さらには片岡仁左衛門、桂米朝らの芸能人までが書いています。1966年からスタートし、95年までの30年間に掲載されたものの中から、180篇を選んだのが「現代のことば1966-1995」(古書ダンデライオン出品/700円)です。知の巨人たちの時代へ投げかけた言葉を一気に読めるアンソロジーです。(もちろん絶版です)

 

京都在住のエッセイストといえば、人気のあるのが山田稔です。彼の作品も二点出ています。「幸福へのパスポート」(古書柳出品/1000円)、「影とささやき」(古書柳出品/500円)とリーズナブルな価格設定です。前者は、特に彼のフランス留学時代に出会った様々なふれあい、情景を見事に描きこんだ散文の傑作。オススメです。

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

その後19日(月)〜23日(金)まで休業いたします

 

 

 

 

 

 

次週21日(水)より、「女子の古本市」が始まります。これは、毎年2月に開催しているもので、出店者を女性に限定しているレティシア書房の冬の恒例行事。東京・横浜・岐阜・滋賀・京都・兵庫・大阪から参加して頂いている、女性店主セレクトの面白い本がいっぱい。勿論、お客様は老若男女どなたでも、気楽にご来店くださいませ!ちょっと早いのですが、到着した本の山からいくつかご紹介をします。(店頭に並ぶのは21日から。お楽しみに!)

愛読者の多い野呂邦暢。彼の随筆をまとめたシリーズの第2巻「小さな町にて」(みすず書房4500円)は、持っていたい一冊。1977年から80年にかけて発表された随筆、65年から80年にかけて発表された書評を、原則として発表順に編集したものです。500数ページ、定価7000円の大作ですが、頭から読む必要はありません。お気に入りの文章、あれっ?と感じた単語が飛び込んできたら、そこから読むのでいいと思います。名手の手にかかるとこうなのかと感嘆します。

中に、小林信彦の「ビートルズの優しい夜」がありました。60年代から80年代にかけての芸能界を描いたこの小説を「小林信彦氏は芸人と芸を愛しているのだ。芸人をタレントとい安っぽい言葉で私は片付けたくない。かんじんな点はここの所で、氏の芸人に関する見方の鋭さはみな深い愛情で支えられている」と書かれています。

同じ、みすず書房から「大人の本棚」シリーズという地味ながら、シブいセレクトの文学集が出ています。その中から、傑作二点をみつけました。野呂邦暢「愛についてのデッサン」(1200円)、山田稔「別れの手続き 山田稔散文選」(1200円)です。この装幀、帯の落ち着いた色合い、触っているだけで本好きなら幸せな気分ですね。当店のお客様で、全部コレクションして棚に並べるのが夢とおっしゃった方がおられましたが、さてコンプリートされたかな?

もう一点、夏葉社が出した復刻版関口良雄「昔日の客」(900円)。尾崎一雄、上林暁、三島由紀夫たちに愛された古本屋「山王書房」店主が綴る古本と文学への愛に満ちた一冊です。老舗古本屋の店主による文学の話って小難しい感じがしますが、これは平易な言葉で語ってくれます。心休まる文章とは、こういうものかもしれません。

 

★お知らせ 19日(月)20日(火)は古本市準備のため連休いたします。

恒例の夏の古本市です。今回は28店ご参加いただきました。さてどんな本が出ているか、最終日まで紹介していきます。

京都在住のエッセイスト、山田稔の本は必ず一冊は出品されます。今回も「太陽の門をくぐって」(編集工房ノア3000円)がありました。アンダルシア、シチリア等ヨーロッパ各地を旅した時のエッセイ集です。ふとした風景や、街中の雑踏を見つめる山田の文章は、技巧を凝らしたものではありませんが、魅力的です。

この人の紀行文も、魅力に溢れています。池内紀の「小さなカフカ」(みすず書房800円)です。これ、カフカの周辺をぶらりぶらりと巡りながら、等身大のカフカに迫ってゆく趣向の文芸エッセイでもあります。カフカと宮沢賢治が同世代で、二人とも、数多くの動物物語を書き残していたという指摘から、二人の作家の本質に向かう「動物物語」には驚かされました。

さて、かつて「フォーククルセイダーズ」という才気溢れるフォークバンドがありました。「帰ってきたヨッパライ」や「イムジン河」等のヒット曲を残して解散しました。そのメンバーの一人で、現在は精神科医の北山修が、昭和46年に発表した詞詩集「ピエロとサム」(ブロンズ社500円)は、珍しい本です。巻頭には、ヒットした「白い翼に乗って」、「青春のわかれ道」、「戦争を知らない子供たち」等が譜面付きで掲載されています。オジさん、オバさん歌えますね?

変わった雑誌も出ています。「グラフィックマガジン 世界の秘境」(双葉社700円)です。「最後の秘境ニューギニア」、「世界の海底に秘められた財宝」、「漂流船その戦慄の記録」、「裸族 大アマゾンの謎を探る」など、各号度肝を抜かれそうな特集です。発行されていたのは昭和40年代。今は「未開人」なんて呼称は、使えませんね。

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」開催。個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)

暑い日が続きますが、お立ちよりください。

8月21日(月)〜25日(金)は、夏期休業いたします。よろしくお願いします。


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夏の一箱古本市も、残すところ三日となりました。出店して頂いている箱を、毎日楽しみに覗き込みながら、取り上げてきた本たち。

さて、別に骨太の物語があるわけでもなく、或は社会への鋭い視線に満ちた文章があるわけではないのに、思わず引き込まれる文章を書く作家として、私の一押しは、京都在住の山田稔さんです。

最新の「天野さんの傘」(編集工房ノア1600円)も、堪能させてもらいました。書名になった詩人の天野忠からもらった傘をめぐる微笑ましいエッセイには、亡くなった詩人への思いが溢れています。

その天野忠のことを書いた傑作、「北園町九十三番地」(編集工房ノア900円)が出品されています。

「何時でも閑な、自由な身に私をしてくれたのは天野さんだ、と私は思っている。その天野さんがもういない。そのさびしさを、閑な身に日々感じる。」

そのつらい時間を乗り越えるために、作家は過去への旅を開始する。そんな一冊です。二冊とも、京都市内のフツーの場所が沢山登場して親しみを覚えます。

この作家のエッセイを読んだ後、気持ちの良い風に誘われて、静かに青空をみているだけで幸せな気分にさせてくれるのが、デビューした頃の松浦弥太郎の「くちぶえサンドイッチ」(DAI-X出版500円)です。昨今は、人生の達人みたいなポジションの立場からの文章が多く、全く読んでいませんが、この本は素敵です。生きることへの限り無い優しさに溢れた名作だと思います。

今では絶対に出版されないようなエッセイ集がありました。野坂昭如編集の「けむりの居場所」(幻戯書房750円)です。野坂の序に「煙草は人生の句読点」と書かれていますが、これ、愛煙家によるタバコエッセイという、今や極めてマイナーになった人達の短い話がズラリ掲載されています。開高健、藤沢周平、田中小実昌、古井由吉といった文学者。市川昆、鈴木清順、三国連太郎、高峰秀子等の映画人と各ジャンルから、趣味のいい文章を書く人を集めたアンソロジーです。もちろん、編者の野坂のものも最後に掲載されています。

 

 

★レティシア書房一箱古本市は、23日(日)までです。

尚24日(月)〜27(木)まで休業いたします。