京都新聞の日曜版書評ページに、恵文社一乗寺店の鎌田さんが、一冊の詩集を紹介していました。個人的に好きな詩人以外、どちらかといえば詩は苦手です。でも鎌田さんの紹介は、とても正直ないい文だったので、読んでみようと版元を探しました。

それが「あさやけ出版」という小さな版元でした。岐阜県恵那市の古民家に移住してきた百瀬さんご夫婦が、「庭文庫」という書店を始められて、クラウドファンディングで資金を調達して出版社「あさやけ出版」を設立され、その第1作が、恵那市在住の石原弦さんの詩集「聲」(2585円)でした。(右下の写真は百瀬さん夫婦の「庭文庫」)

さて、「聲」の著者石原弦さんは、20年間山奥で豚を育ててきた人です。彼が生活の傍ら書きためた作品が一冊になりました。扉を開けたら、美濃手漉き和紙が一枚そっと挟まれた素敵な装丁で、76編の詩が収録されています。

「しんと静かで美しい言葉を、一人声に出して読んでいると、自然そのものと対峙しているように思えてくる」と鎌田さんは新聞に書いていました。

「古いレコードが/静かに回り始めたと思ったら/ぷつぷつと優しい音を立てて/針のように細かい雨がふっているのだ/六月の雨の夜は/大きな黒い円盤になって/ゆっくりと回り続ける/音楽は聞こえないけれど/それはとてもなつかしい/はるかむかし/水の中で聴いた音楽/細胞の中の音符/ 針音のように優しいノイズ/六月の夜に/古いレコードが/静かに回り始めたと思ったら…….」

鎌田さんがいう通り、「六月の夜のレコード」を音読してみると、静かな夜の満天の星空の下にいるような気分になってきます。

こんな素敵な詩集が、ひっそりと出版活動を始めた小さな出版社から発行されて、その紹介で今年を終わることができるのは幸せなことだと思います。来年も、このような出会いがあることを願っています。

★今年も一年間ありがとうございました。思いもよらぬコロナ禍の下、準備をしていただきながら、延期や中止をお願いせざるを得ない作家の方々には、この場を借りてお詫び申し上げます。また、そんな中ではありましたが、この小さな本屋のギャラリーで様々な展覧会にご協力いただいた皆様、お客様には心より感謝しております。人の繋がり、ご縁を大切にしてこれからも運営に努めます。2021年は、1月6日(水)より通常営業いたしますので宜しくお願い致します。(店長&女房)