「恥ずかしい料理」(新刊/1980円)って何?と、先ずそんな疑問が頭を過ぎります。でも、これ一応レシピ本なんです。トーストの上にキュウリを切って絞っただけの「キュウリトースト」っていう超簡単レシピも含めて。

本書の著者は梶谷いこさん、写真を担当したのは平野愛さん。そして発行元は誠光社。こういうアプローチで家庭料理に愛を込めた本なんて、きっとなかったはず。うん、面白く読みました。

著者の梶谷さんは、友人や知人に頼み込んで、家に上がり込み、そのご家庭の日常にの料理を見せてもらいます。著者はこう言います。

「見せてもらった”恥ずかしい料理”たちはどれもキラキラ輝いて、手を合わせて拝みたいくらいでした。わたしの知らない”いつもの料理”をする淀みない手付き、思いも寄らないところから出てくる意外な道具、お願いして開けてもらった冷蔵庫のドアの内側、それはわたしが子どもの時からずっと探していた、台所の謎の答えだったような気がします。 台所という場所は、一体何をするところなのか?そこには、淡々とした日々の繰り返し、うんざりするような難題、それから、今のわたしではとても言葉にならないようなおかしさや味わいがありました。」

長々と引用しましたが、彼女は、入いり込んだ家庭の台所の匂い、佇まい、そしてそこに住む人々が口にする日常の食事を文章に吸い上げていきます。レシピと一緒に、その家庭への思いのこもったエッセイが掲載されていますが、そちらがとても良いのです。

誠光社で開催されていた発行記念の平野愛さんの写真展を見ましたが、やはりここに登場する家庭料理に対する愛情があふれていました。本書の表紙にもなっている「キュウリトースト」を撮った作品には、ファインダーを覗きながら、微笑んでいる写真家の気持ちが乗り移ったかのような素敵な仕上がりでした。

もちろん、ここに登場する人たちは気取りがなく、ナチュラルな人たちばかりであるのはいうまでもありません。自分にとって何が大切で、何が不要かをよく知っている方々ばかり。これは簡単なことではありません。

そうそう、当店ご近所にお住いの方ならご存知の「寿司割烹ふじ吉」さんも登場します。