京都市西域で、四条大宮、嵐山、北野白梅町を結ぶ「京福電気鉄道嵐山線」が走っています。通称「嵐電」と呼ばれている私鉄です。この嵐電を舞台に製作された映画が、タイトルもズバリ「嵐電」です。沿線の駅や住宅を中心に撮影されました。製作の中心になっているのは、京都造形大学(現在は京都芸術大学)。監督の鈴木卓爾はこの大学の准教授で、出演者も大学で映画演劇を学ぶ学生が中心です。物語は三組の恋愛の行く末を描いていますが、それを追っかけていると、本作の面白さを見失うと思います。

観ているうちに、なんだか懐かしい感情が湧き上がってきました。それは、京都府立医大出身の大森一樹や、先日なくなった大林宣彦、という助監督を経験しないで映画監督になった彼らが、本格デビュー以前に撮っていた実験映画の手作り感を思い出したからです。実験映画には、アバンギャルドなものと、ごく私小説的に身の回りの世界を描いたものがあります。「嵐電」は後者に当たります。だから誰が観ても、わかれへ〜ん、てなことはありません。

主役は、もうこれは嵐電ですが、電車オタクの映画ではありません。監督は、この映画製作についてこう述べています。

「嵐(あらし)と、電(いなづま)という文字を持ったこの電車は、線路を走っていたかと思うと、自動車と一緒に大通りを並走したりして、ひっきりなしに人を運んでいます。人を運ぶという事は、きっとその人の抱えているものも丸ごと運んでいます。誰かに対する想いも運んでいます。嵐電がすれ違うように、互いに偶然の交差を繰り返すたび、嵐のように電のように、物語がそこから立ち上がる、一瞬一瞬の光景を真冬の一時、掴みたいと思いました。」

京都の人なら、あ〜あそこ知ってる、ここで降りたなぁ〜などと画面を見ながら、現実の空間を思い起こしつつ、映画が作り出す非現実的な空間を行ったり来たりします。現実の御室仁和寺駅が、まるで幻想空間の駅に見えたりしてきます。映画の不思議さであり、魅力です。普通の街並み、風景、町の雑音が、演出家の手により切り取られることで違う世界へと変貌する楽しさ。

学生と映画のプロフェッショナルとが一緒になって制作される映画学科の劇場公開映画制作プロジェクト「北白川派」で製作された本作には、映画を学んでいる学生たちの、映画を作るという楽しさ、熱気があふれています。

当店も以前、京都芸術大学の学生たちの製作する映画のラストシーンに使っていただきました。学生映画やから機材も簡単なものだろうと思っていたら、本格的でした。助監督はカチンコ持って走りまわり、店の前の通りを交通整理したり、プロの現場さながらでした。そしてスタッフ、キャスト皆さん嬉々として動いおられました。

大学時代、8ミリ映画クラブに在籍していたのですが、阪急梅田駅の雑踏でロケしたり、中之島地下道をモデルガン持って突っ走っておまわりさんに怒られたり、挙句、上映会でボロクソ批判されたりした頃を思い出してしまいました。

願わくば、大学で映画を学んだ彼らが、卒業後も映画の現場で働き、生活できるような文化政策が実行できる国になって欲しいものです。

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