2019年1月末にフランスを代表する映画音楽家ミシェル・ルグランが亡くなりました。その一周忌を記念して、国内編集盤として2枚組CD「エッセンシャル・ワークス」(3000円)が発売されましたので、早速入荷しました。

「シェルブールの雨傘」「ロシュファオールの恋人たち」「華麗なる賭け」等リリシズムに満ちたメロディーで映像に躍動感を与えてきたルグランの全貌を知るのに最適なCDです。

ルグラン自身がセルフカバーをした映画音楽集と、様々なシンガーやミュージシャンが彼の作品を取り上げたソングブック集に分かれています。1枚目には、ルグラン作曲の名曲がずらりと並んでいます。

映画を知らない人でも、十分に楽しめます。華麗なストリングスとロマンチックな旋律。このひとの音楽には、心をウキウキさせる魔力がひそんでいます。アメリカには、やはりウキウキさせる素敵な曲を書いていたヘンリー・マンシーニという巨匠がいますが、微妙に違うのです。フランス人ならではのイキなセンスが一杯です。私はルグランの音楽を聴いているだけで生きているのが楽しくなってくるのです。

2枚目のソングブックでは、よくもまぁ、こんなに多くのシンガーやミュージシャンが彼の曲を歌っているものだと感心しました。あのタイタニックのテーマ曲でおなじみのセリーヌ・ディオンも登場します。一時、日本でも大人気だったアンディ・ウィリアムスが歌った「おもいでの夏」は、ラジオでもよくかかっていたので、ご存知の方も多いと思います。スキャットボーカルグルグループ、スィングル・シンガーズが歌う「華麗なる賭け」のテーマ曲「風のささやき」などは、これ以上切なく、甘く、そしてシャレたバージョンはあり得ません。また、今やアメリカ映画界を代表する監督のクリント・イーストウッドが、70年代初頭に監督したラブ・ストーリー「愛のそよ風」の主題曲「ブリージーズ・ソング」の爽やかさも耳に残ると思います。

私のベスト1は、ブラジルの名シンガー、エリス・レジーナがフルオーケストラをバックに歌った「ウォッチ・ホワット・ハブンズ」。若干36歳で亡くなったエリスのチャーミングな歌いっぷりが素敵です。ルグラン自身、晩年このカバーをよく聴き返していたようです。旅先に持ってゆくも良し。家で、朝・昼・夜と選曲を変えて聴くも良し。試聴できますので、お聴きになりたい方は、ぜひどうぞ。

ルグランについては、音楽書専門の出版社アルテスから「ミシェル・ルグラン自伝」(新刊/3080円)があります。映画音楽ファン、フランス映画ファンには読んでいただきたい一冊です。この本には貴重な写真も多数あって、あのアラン・ドロンが「風のささやき」のフランス語版を歌うシーンを捉えた一枚を発見!しかし、この録音が日の目を見ることはありませんでした。ドロンが下手だったのでしょうか……….?

 

 

サウンドトラックのアナログレコードを、何点か入荷しました。聴いてもよし、飾ってもよし、というものをご紹介します。

リバイバル上映が決定した「危険な関係」(輸入盤4000円)。60年代の上流階級の退廃的な世界を描いた作品で、ジェラール・フィリップとジャンヌ・モローの、大人の雰囲気にしびれます。ふんだんにモダンジャズを使用していて、ジャケットデザインもスタイリッシュ。ドラムの御大、アート・ブレイキーの横顔の後ろにうっすら浮か上がるフィリップとモローの姿。ジャズと煙草とクールな恋の雰囲気が匂い立つようで、映画のポスターより、こちらの方が私は好きです。

もうひとつフランス映画、ミシェル・ルグランのゴージャスでジャズ感覚に溢れた傑作ミュージカル「ロシュフォールの恋人たち」(輸入盤2LP/8000円)。昨年、監督のジャック・ドミー追悼映画祭で、上映されていました。ドミー&ルグランコンビでは、「シェルブールの雨傘」が人気ですが、ミュージカルの楽しさを十分に味わえるのは断然「ロシュフォールの恋人たち」でしょう。主演の二人、カトリーヌ・ドヌーブ、フランソワーズ・ドルレアックの掛け合いは、フランスのエスプリ一杯です。一日を楽しく過ごすには、先ずこの音楽から(個人的な趣味ですが)。ジャケットを眺めているだけでも楽しい。

3枚目は、映画史上最も年齢の若い二人で演じられた「ロミオとジュリエット」(日本版500円)。レナード・ホワイティングとオリビア・ハッシーの演じる悲恋物語にうっとりされた方も多いと思います。表ジャケットは、オリジナルポスターをそのまま使用しています。二人の見つめ合う表情が初々しい。音楽は、巨匠ニーノ・ロータ。サントラには、一部、劇中の二人のセリフも収録されています。

最後にご紹介するのは、「男と女」のその後を描いた「男と女II」(輸入盤3500円)です。こちらもジャケットデザインがいいです。前作「男と女」で主演を演じた時と、十数年後の二人の横顔をレイアウトしてあります。恋に落ちた若き日の二人と、中年に差し掛かった二人。3枚の写真に時の流れを感じます。

レコードプレイヤーのない方にも、アート作品としてお部屋に飾ってほしいジャケットです。

店内で「危険な関係」のレコードを鳴らしていた時、来店された美しい方がこちら(→)です。ジャンヌ・モローのファンかもしれませんね。