日曜日の夜10時、NHKBSドラマ「昨日のカレー、明日のパン」って7回連続ドラマやってますが、ご存知でしょうか。女房に付き合ってなんとなく見ていたら魅き込まれていきました。

TVの連続ドラマって、一部を除いて、私にはつまらない極みです。オーバーな感情表現、予定調和で、意外性のないエンディング。そんな中にあって、このドラマは新鮮でした。まず登場人物がユニークです。夫を亡くした女性と、夫の父親という二人きりの家族を中心に、隣家に住むキャビン・アテンダント。彼女は微笑む事ができなくなって仕事を辞め、引きこもっています。逆に笑顔を止められない産婦人科医、患者の来ない歯科医など。

ストーリーは一応あるのですが、見事にドラマの基本を外して、バラバラのエピソードをぶちまけながら進んでいきます。台詞の可笑しさ、突然な場面転換と、まるでオフビートです。しかし、先週(3回目)あたりから、まき散らした断片を少しずつ拾いながら、ジグソーパズルを完成させるかのように進行していきます。

きらっと光る台詞は多いのですが、息子の嫁に「ギフ」(義父)と呼ばれる鹿賀丈史演じるやもめ男が、嫁の同僚の女性と山に登りながら、こんな事をいいます。

「自分で背負った荷物なんて、自分で下ろせばいいんですよ」

これが、凡庸のドラマだと、心に重い荷を背負いながら一人孤独に歩む男と、見守る女性というパターンに陥りがちですが、このドラマに限ってそんなことはありません。

ひょいと肩の力を抜かせるシナリオは見事です。森絵都の小説に「宇宙のみなしご」(角川文庫350円)という佳作があります。真夜中に他人の家に忍び込んでは、屋根に登り空を見上げる少年、少女のお話です。この小説も多くのエピソードをまき散らして、見事なエンディングに向かっていきます。物語の最後に待っている幸せを予感させるようなドラマです

シナリオは木皿泉。ドラマ「すいか」「野ぶた。をプロデュース」等の人気作家です。主演の仲 里依紗も表情がホントに素敵です。「昨日のカレー、明日のパン」は先に小説として出版されて、今回ドラマ化されたものです。

泣け!笑え!驚け!なんて野暮な事を視聴者に求めていません。ちょっと不思議な人達が織りなす日々を、一緒に楽しみませんかというドラマのようです。偏った登場人物ばかりなのに、頷くところが多く、上手いですね。