1986年から89年にかけて発行された古い「暮しの手帖」が数冊入ってきました。今、店頭にある2007年以降のものと読み比べました。

古い方は、表紙を開くと、小さな目次。そこに描かれている、時計台のある木造建築のイラストが可愛いです。89年6.7月で、「なぜ太るのでしょうか」というドキッとする見出しと一緒に、懐かしい体重計とご馳走のイラストが飛び込んできましが、洒落ていますね。ちょっと、笑ってしまったのは86年3.4月号の「今年こそサイクリング」という特集で、自転車の乗り方を懇切丁寧に書いてあることです。シティバイクも普及していない時代ですが、なかなかお洒落な自転車が登場です。

新しい方も負けていません。2012年4.5月号の連載「今日の買物」では、大阪が舞台で、民博の館内の写真がズラリ並んでいたり、「食い倒れ一歩手前」なんていう、思わず座布団一枚!の記事があったりとユーモア精神抜群です。そして、連載記事の「わたしの仕事」はなんと大手書店の文芸書担当の方が、自分の仕事について語られています。

「開店前や閉店後の誰もいない書店にいるのが大好きです。たくさんの本に囲まれて、独特の香りと空気が漂う。その中にいると、心が澄んでいくような気がして、ほっとします」

と書かれていますが、これは書店員の至福の時間ですね。また、常盤新平の「変わらない雑誌」というコラムで、雑誌「ニューヨーカー」について語っているのですが、これがまたいい文章なんです。

新旧いずれにも「私の読んだ本」という、一般読者からの投稿による面白い書評がありました。女性建築技術者の会編による「ダイニング&キッチン」なんて本は、フツーの書評には絶対上がってこない本でしょう。

ところで、89年度版には、沢木耕太郎による映画評が掲載されていて、シブイ作品が並んでいます。監督が「真夜中のカーボーイ」のジョン・シュレシンジャーで、主演がシャリー・マクレーンの「マダム・スザーツカ」は、全然知らない作品だったので精読してしまいました。

価格はすべて300円です。時間が空いた時や、ちょっとやる気の失せた時なんかに、パラパラめくるといいかもしれません。

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新刊書店で勤務し始めた頃から、本や本屋さんに関する本を読んできました。その中で、最も共感して、読んだ後に、心を軽くしてくれたのが松浦弥太郎でした。2002年に中目黒にオープンした彼の「カウブックス」まで足を運びました。そして、06年。彼は「暮しの手帖」の編集長に就任します。その後の活躍は、ご存知の通りです。

その「暮しの手帖」に連載していた「編集長の手帖」、「こんにちはさようなら」と、定期購読者対象の付録「編集長日記」が再編集されて「暮しの手帖日記」(暮しの手帖社900円)という書名で一冊の本になりました。

「『暮しの手帖』が新しくなりました。これからも、暮しにまつわる新しい工夫と発案で、少しでもみなさまの暮しに役立てるようにがんばります。」という挨拶で始まる4世紀26号から、58号までが掲載されています。

「今日もていねいに」

という文章でいつも終わるのですが、どの号も、その日、その日を慈しむ気持ちに満ちていて清々しい気分になります。私が好きなのは、「随筆とエッセイの違い」という文章です。エッセイ、随筆好きの老紳士との会話がメインの話で、丸ごと引用したいぐらいです。最後はこう締めくくられています。

「随筆とは役に立つ実用の文学。いい言葉です。」

彼が編集長をやり始めた頃からの「暮しの手帖」(各300円)も取り扱っています。こちらも合わせてどご覧下さい。

 

「健康のために、邪気を近づけず、溜めない。明るくはつらつとした、無邪気な暮しを努力しましょう。無邪気な暮しは、あらゆることを前進させてくれるでしょう。」

これは、「暮しの手帖」という雑誌の持っているポリシーなのかもしれません。

 

 

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