東京の書店「Title」店主辻山良雄さんの「ことばの生まれる風景」(ナナロク社/2484円)は、とっても素敵な本です。辻山さんの文章は、本への愛情に満ち溢れています。そこで紹介されていた作家の多くは、うちの店長のリスペクトしている方々で、レティシア書房店長日誌に思いをこめて紹介しました。そのブログをコピーして辻山さんに送ったそうです。そうしたら、なんと辻山さんからご連絡をいただき、「nakaban(なかばん)さんの原画展を全国で巡回していますが、そちらでされますか」というご提案をいただきました。願ってもない話に我々は飛びつきました。

そうして実現したnakabanさんの原画展が、本日より始まりました。

ナナロク社の担当川口さんとメールのやり取りを重ね、「ことばの生まれる風景」の中の全ての原画を見てみたいという欲望を抑えて、選んだ12点の絵画。本の印刷もレイアウトも素晴らしいのですが、改めて原画の持つ力強さに、なんというか心打たれました。重ねられた色の深さ、筆の運び、ことばの中から一枚の風景を描くという力技。

店の扉の近く一番初めには、星野道夫「旅をする木」を飾りました。これは、星野道夫が大大好きな店長のたっての希望です。古本屋の本棚の前で手に取ったアラスカの写真集に見入る青年の姿。その周りにはアラスカの大自然が広がり、彼の未来が見えています。夏目漱石「門」は、都会の車窓の景色。原画で見るとより暗がりの深さが際立ちます。深沢七郎「楢山節考」の雪景色は寒さが滲みます(私はこの絵が大好きです)。エンデ「モモ」は、より身近に感じたくて柱に掛けました。夜、一人で建物の中に座り静けさに耳を傾けるモモを満天の星が見守っています。どの作品もいつまでも見ていたい。願わくはずーっとここに居て欲しい。

初日に辻山さんが来てくださって、一緒にゆっくり展示を見て「京都だから『方丈記』を入れても良かったですね」と言われ、迷った末にやめたことをちょっと後悔しました。

展示前の日曜日には、nakabanさんも立ち寄ってくださいました。実はnakabanさんの原画展(やはり辻山さんとのコラボです)は「誠光社」さんでも、昨日から同時開催中なのです。日曜日はそちらの搬入だったのだそうです。それにしてもnakabanさんの原画展を私たちの本屋で出来るとは思ってもいなかったので、とてもとても嬉しいです。さらに「ことばの生まれる風景」の著者お二人ともにお会いできて、幸せでした。店長日誌を辻山さんにお送りして本当に良かった。発信してみるもんですね。(女房)

●nakabanさんオリジナルスタンプを、しおりに押してお持ち帰りいただけます。このスタンプは、原画展をされた各書店のイメージに合わせてnakabanさんが作ってくださいました。ちなみにレティシア書房のデザインは女性の横顔。いいでしょ!

 

♫トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。

                     075−212−1772(レティシア書房)

 

 

今、一番お会いしたい書店「Title」店主、辻山良雄さんの新刊「ことばの生まれる景色」(ナナロク社/新刊2484円)を入荷しました。店主が選んだ大切な本40冊に簡潔な文章と、著者の本への深い愛情を汲み取って、絵を描いたnakabanさんの作品がセットになっています。

ブログに書こうとして困りました。ご紹介したい本を読む時、必ず付箋を横に置いて、ここぞという箇所に貼付けていました。しかし、この本を読了してふとみると付箋だらけ、いや付箋が猛烈な勢いで増殖した感じになっているのです。それ程、どこを取上げても心に沁み込んでくるのです。nakabanさんの絵が、著者に深く寄り添っているのも見逃せません。

もう一つ、この本で取り上げられた本は私の愛読書が多く、さらに当店でもお好きな方の多い作家ばかりなのです。星野道夫、須賀敦子、メイ・サートン、石牟礼道子、谷川俊太郎、永井宏、今村夏子、宮沢賢治、高橋源一郎、武田百合子、庄野潤三、ブローディガン、アーヴィング、そしてブルース・チャトウィン等々。

著者の書物に対する真摯な、奥行きのある文章を前にすると、私の書くものの未熟さばかりが目立ってしまいます。最もリスペクトしている星野道夫がトップというののも嬉しかったのですが、星野の本質をこんな風に書かれています。

「星野道夫は、終始<失われていくもの>の側に立ち続けた人であった。その土地に根付く自然や文化、風習を根こそぎ破壊していく西洋文明には懐疑的であり、何千年も前から引き継がれた先住民の偉大な智慧とそれをいまに残す人に、心からの敬意を払った。」

メイ・サートンを語る時には、茨木のり子の詩を重ね合わせ、彼女たちが見つめた孤独をこう書いています。

「一人でいることが淋しいのではなく、その淋しさを紛らわそうとする心が淋しいのだと、この東西の女性詩人たちは考えていたようだ。」

と、こんな具合で書き出すと切りがないので、是非本を手に取って下さい。最後に一つだけ。本のラストを飾るのはエンデの「モモ」です。

「閉店後、誰もいなくなった本屋のなかに一人で立つと、自らの時間を取り戻した本が、小さな声でつぶやきはじめる瞬間がある。店のなかには、人が出入りし慌ただしかった日中とは別の時間に切り替わり、静かであるが濃密な空気が次第にあたりを満たしはじめる…….。」

同じ様な瞬間の体験、私にもあります。「小さな声でつぶやき」というより、本の呼吸している音が聞こえる瞬間が。店ってそうゆう風に育ってゆくのかもしれません。とにかく、幸せな読書の時間でした。本好きには最高のクリスマスプレゼントになこと間違いなし。ありがとう、辻山さん、nakabanさん。

★連休のお知らせ 12月17日(月)、18日(火)

★イベントのお知らせ「宮沢賢治 愛のうた 百年の謎解き」

2019年1月18日(金)19時より、「新叛宮沢賢治 愛のうた」を出された澤口たまみさんとベーシスト石澤由男さんをお迎えしてトーク&ライブを行います。ご予約受付中(1500円)