う〜ん、こんな新しい感覚の文学が、韓国から出るんですね。タイトルは「ギター・ブギー・シャッフル」(新泉社/新刊2200円)。著者はイ・ジン。タイトルから、懐かしい曲!と思われた方は音楽通かも。これ、ベンチャーズの曲がタイトルになっています。

朝鮮戦争で孤児になった青年が、ギター片手にショービジネスの世界で活躍するという「青春」ものです。すらすらと読める小説ですが、作家のいとうせいこうは「日本の市場にエンターテイメント小説が入ってきたことになる。だが、かの国の文学の特徴でもある社会と個人の軋轢は決して消えることがない。この辺は日本との大きな違いだろう」とその深さを語っています。

二十冊ほどですが、新しいアジア文学が揃いましたので、海外文学のコーナーに特集を組みました。以前、ブログで紹介したウー・ミンイーの「歩道橋の魔術師」や、イ・ヨンドクの「あなたが私を竹槍で突き殺す前に」も再入荷しました。

一方、韓国、済州島の詩人ホ・ヨンソンの詩集「海女たち」(新泉社/新刊2200円)も邦訳されました。日本統治下の済州島での海女闘争、出稼ぎや徴用といった悲劇的歴史を背景に、時の権力に立ち向かった海女たちの姿を詩という形で表現したものです。

そうかと思えば、これも紹介したことのあるクミ・ホンビの痛快な女性たちが登場する「女の答えはピッチある」(白水社/古書1300円)のようなエッセイも楽しむことができます。また「82年生まれ、キム・ジョン」のチョ・ナムジュが2018年に出した短編集「彼女の名前は」(筑摩書房/古書1200円)も読んでおきたい一冊です。28編の物語から、暮らしの中に潜む不条理に女性たちが声を上げています。

割と早くからアジアの文学書を翻訳していた九州の出版社、書肆侃々房から出ているチェ・ウンミの「第九の波」(書肆侃々房/新刊2090円)は、欲望渦巻く町で起こる奇怪な事件をベースにした社会派の小説で、私が今最も読んでみたい一冊です。カルト教団が蠢き、原子力発電所誘致を巡っての利権争い、監視し合う住民たちなど、どす黒い世界が舞台です。

 

★レティシア書房 年末年始の休み

12月28日(月)〜1月5日(火)休業いたします。よろしくお願いいたします。