正方形のスタイルがユニークな「歩きながら考える」最新9号を入荷しました。(1080円)

柴田元幸ファンは絶対買いです!彼の結構長めのインタビューが掲載されています。翻訳業の傍ら、柴田さんは全国各地で積極的に朗読会を行なっています。その仕掛け人のignition galleryの熊谷さんとの共同インタビューで、なぜ、今、朗読会なのかを語っています。

「都道府県はどこでもいいんだけれど、会場がインディーズだということがとても重要ですね。」と柴田さんのおっしゃる通り、個人経営の書店やギャラリーや店舗を中心とした活動です。

熊谷さんは、朗読会の良さを「その時を一緒に生きているというのが一番大きいんじゃないですか。一緒に物語を共有しているということは、その時間だけ、人々の想像力が一緒になって過去も未来もひっくるめた現在を生きていることだと思います。それはひとりで本を黙読しているのと違う。」と話されています。当店で宮沢賢治の朗読会をしていただいた澤口たまみさんの朗読を聴いた時、そんな風に感じました。

後半で、柴田さんが、アメリカには車に乗らない作家がいる、例えばリチャード・ブローディガン、ジョセフ・コーネル、写真家のソール・ライターなのですが、彼らについてこう指摘しています。

「車に乗らないということは、移動を含め、何でも自分の力でする、Self-Reliance(自立)というか、『自分で自分の世界を動かしていく』というアメリカ的な姿勢に背を向けているということ。」

アメリカでは圧倒的に少数派ですが、面白い見方です。

さて、もう一冊。横浜の酒飲み文化をひたすら紹介する「はま太郎」(1728円)の16号が出ました。凄いなぁ〜、自分たちの町と飲み食いのことをメインに16号まで出すなんて!!今回の特集は「横浜下町文化は南区にある」というディープな研究です。ここらあたりは、ヨコハマのヘソで、豆腐屋、うどん、そば、餃子などを販売する小さな食料品店、米屋さん等々、横浜を代表する商店街が集まっており、独特の文化が育っているのだそうです。南区に点在する和菓子屋の最中図鑑などという甘党好みの企画にも会えます。

横浜には市民酒場というお店があるらしい。これ、「横濱市民酒場組合」に所属する飲食店のことです。結成は古く、1938年。戦争末期、食料調達が難しくなってきた時に、「まっとうな料理と酒を、まっとうな価格」で提供することをモットーにしてきた組合です。組合結成の地が南区だっだことから、市民酒場が数多く存在しています。酒飲みにはこたえられない特集ですね。

その一方で、南区は美味しいナポリタンが味わえる店も多くあるようです。日本ナポリタン学会会長田中健介が「京急沿線は必ずといっていいほどに駅前によい喫茶店がある。つまりよいナポリタンにありつけることを意味する」と前置きして、紹介していきます。

トレンドなイメージの横浜とはまた違うイメージの地域紹介誌ですが、これはとても面白く、お腹も空いてくるし、ビールを飲みたくなってる一冊です。(バックナンバーも扱っています)味のあるイラストも健在です。

 

先日16日夜、鳥崎典子さんによる朗読会「藤沢周平『雪あかり』を読む」を、当書房で開きました。

午後7時30分、鳥崎さんの息子さんのギターが静かに奏でられ、下級武士の生き様を描く藤沢らしい小品の世界が、ゆっくりとしたリズムで始まりました。眼をつぶって聴いていると、雪道を照らす大きな月と寒い冬の夜の情景が浮かんできます。藤沢の文章は美しく、凛としたスタイルがありますが、まるで静謐な音楽を聴いているような一時間でした。

小さな店に満員のお客様で、席が窮屈だったことを申し訳なく思います。けれども、鳥崎さんの美しい朗読には、ご満足いただけたのではないかと思っています。残念ながら当夜は満月ではありませんでしたが、その余韻に浸りながらお帰りいただけたことでしょう。古本屋での朗読会は、いつかしてみたい事の一つでした。お寒い中、皆様本当にありがとうございました。こういう静かな時間をまた持てたらいいな、と思います。

さて、朗読に合う本というのは、なかなか探すのが難しいと、鳥崎さんもおっしゃっていました。こんな朗読会に合う作家って誰がいいのだろう、と考えました。女性に朗読していただけるなら梨木香歩の「家守奇譚」(700円)などどうでしょう

「遠くから微かに夜行列車の汽笛が聞こえる。ぼんやりした輪郭の向こう側で、意識がこれは夢だと再び告げる。外は雨が降っているようだ。雨の日は汽笛が良く聞こえるのだ。意識は幽明の境にあって今ならまだ夢に戻れそうだ」

こちらの世界とあちらの世界を繋ぐ物語を読んでいただきたいですね。男性の声なら、沢木耕太郎「一号線を北上せよ」(2000円/沢木さんサイン入り)あたりですね。

「もしかしたら、誰にも『北上』したいと思う『一号線』はあるのかもしれない。」

「たぶん『北上』すべき『一号線』はどこにもある。ここにもあるし、あそこにもある。この国にもあれば、あそこの国にもある。私にもあれば、そうあなたにもある」

なんて滑り出しから、未だ見ぬ国へ連れ出してもらいたいものです。

ところで、朗読の伴奏曲は、エリック・クラプトンの「いとしのレイラ」のイントロでした。よく似合っていました。

 

21日(金)午後4時ぐらいから「はちはち」のパン販売です。

 

2月25日(火)から星いっぺいさんの「ねこ絵展」開催。この展覧会は3月2日までの1週間です。 

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