「1995年3月、アイディタロット1800キロの犬ぞりレースに出場した僕は、最後の難関のトップコックヒルを無事クリアしようとしていた」

しかし、彼は油断していた。その後に起こる悲劇。猛吹雪の中で将来犬たちのリーダー格になる三才のペイデイが死んでしまう。因みに犬ぞりレースで犬を死亡させた場合、マッシャー(そりを引くリーダー)は厳しく責任を追求されます。

日本にいたペースで事を急ぎ、アラスカのペースに合わせなかった自分の過ちでパートナーの犬を死なしてしまった後悔。天国からペイデイが「あわてない、あわてない」と言ってくれている気がする。だから

「『あわてない あわてない』が今では僕たちの言葉になっている」

それから、数年後、1600キロを走破する最大の犬ぞりレース「ユーコン・クエスト」に参加する。人と犬が、限界に挑むレースです。

舟津圭三(文)&佐藤日出夫(写真)による「アラスカ犬ぞり物語」(七賢出版900円)は、アラスカに移住した著者と妻、そして彼らの最愛のパートナーの犬たちの日々を追いかけたノンフィクションです。ここには魅力的な写真が数多く収録されています。雪原を走る犬ぞりを捉えた作品ももちろん素敵ですが、秋の草原を疾走する姿に、私は引込まれました。人と犬と大自然がひとつになっているのです。
「ユーコン・クエスト」に関しては、このレースを完走した女性マッシャー、本多有香の「犬と走る」(集英社800円)という傑作が先行しています。2012年の「ユーコン・クエスト」を走破した本多有香は、本の最後を「今まで私に関わってくれた多くの犬たちのおかげで私はゴールすることができた。犬たちが私をここまで導いてくれた。」という文章で結んでいる。97年に走破した舟津圭三も、共に走った犬の名前を上げて、本を終わらせています。そして、著者と絶対の信頼と友情で結ばれた犬の写真を、そこかしこに配置しています。いい写真ばかりです。

次週9月6日より、動物保護団体「ARK/アニマルレフージュ関西」の写真展が始まります。グッズの販売もいたしますが、期間中の売上げは、すべてARKの活動援助のために寄付いたしますので、ぜひ見に来てください。