「洛中から守口(大阪府)は遠おすなぁ〜」と、いけずな京都人なら言いそう、とは大げさですが、京阪電鉄で、三条から1時間ほどかかりました。

なんで、守口まで行ったかと言うと、数ヶ月前にオープンした「たられば書店」のオーナー山本さんとお近づきになるためです。ちょうど「たられば書店」のギャラリーで開催されている小幡明×たられば書店「世界のかけらと守口雑貨」も見たかったので。

小幡明さんは、当ブログでも紹介しましたが、彼女が旅した世界の色んな町を

イラストで描いて、小冊子にまとめた「世界のかけら」(各330円)の作者です。当店でも扱っていますが、売切続出。再度バックナンバーを揃えて販売する予定でしたので、せっかくの個展に行かねばと守口の駅前に降り立ちました。

特急の停車しない守口は、ご他聞にもれず、商店街にあまり活気がありませんでした。駅前の横町に佇む「たられば書店」は古い二階建ての民家をそのまま書店にした感じで、一階の奥には、かつてここに住んでいたご家族の台所が残っていました。

急な階段を登って2階に上がると、冬の日ざしが眩しい明るい部屋。窓際の部屋は、子どもの遊び場として解放されていて、さながら児童図書館みたいです。お手製の小さなすべり台も備えてあります。きっと、午後は、子どもたちの歓声でにぎやかなことでしょう。

その反対側に小幡明さんの小冊子とポスターが並んでいました。雰囲気に妙に溶け込んでいる面白い展示です。彼女の作品を前に、山本さんが珈琲を入れてくれました。お店を始める前は何をされていたんですか?とお聞きしたら、「主夫」ですとキッパリ。子どもが大きくなったので、子育てから解放されて店を開かれたとの事でした。

1階の書店は、もう「ザ・古本屋」。買い取った本や、在庫が所狭しと並んでいます。さらに、その間にちくま文庫の新刊や、ミニプレスも顔を覗かせています。ここに座り込んで、のんびりと本を探していたら、あっと言う間に日が暮れそうな、居心地のいい本屋さんです。本には値段が付いていません。店主とお客さんがワイワイ言いながら、ま、こんなもんでしょうね、と決めていくみたいです。と言っても大阪っぽい「にいちゃん、もっとべんきょうしてやぁ〜!」みたいなノリではなく、もっとゆる〜い感じみたい。

珍しいものを発見しました。村上春樹原作の映画「ノルウェイの森」の10インチレコードサイズのパンフレットです。

レコードよろしく、ジャケットを取ると、「Norwegian Wood」とセンターに書かれたレコードが撮影されたパンフレットが登場します。きちんと配給元「東宝」のマークも入っています。

こんな店が、この町のあちこちに出来て、活性化するのが夢ですねという話などをしながら、店を後にしました。最初、活気がないと思われた(着いた時間が早すぎたか)商店街をよく見ると、素敵なカフェや、面白そうな店があるのがわかりました。特急は停車しませんが、若い世代が、盛り上げて新しい魅力が発信できたらいいですね。

当店の夏の古本市(8月)に、出店のお誘いをしてきました。楽しみです。

★2月8日(水)〜19日(日)レティシア書房恒例「女子の古本市」を開催いたします。

東京、岐阜、神戸、大阪、滋賀、京都から20数店の女性店主がセレクトしたステキな本が、所狭しと並びます。ご来店お待ちしています。

 

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瀬戸内沿岸の人々の暮しを見つめるミニプレス「せとうち暮らし」最新号は、このエリア一帯の本に関する特集です。

先ず、京都の古書善行堂店主が、壷井栄について書いたコラムで始まりです。「壷井栄を読むと、心はいつも小豆島に」なんて上手いなぁ〜。ここで紹介されている「坂道」を読みたくなりました。

次に紹介されているのは、瀬戸内が舞台の本です。私のお気に入りの、瀬戸内の島を舞台に繰り広げられるサスペンス一杯の池澤夏樹「アトミックボックス」は、もちろんリストアップされています。村上春樹の「海辺のカフカ」もここが舞台だったんですね。そして、小豆島を舞台にした角田光代「八月の蝉」。著者のインタビューも載っています。

60年代から80年代、瀬戸内の島々を巡り、本を届けた「文化船ひまわり」は、日本で唯一の船の図書館だったのです。この船のことを初めて知りました。就航から引退までの物語の前に、見開きでnakabanさんのイラストが目に飛び込んできますが、これがいい!港に着いた船に向かって一直線に、坂道を女の子が走って下りて行きます。本を読みたくてワクワクしている女の子の気持ちが伝わります。

次は、島のブックカフェ、街の本屋さんの紹介と、必読の特集が続きます。高松の「なタ書」、岡山の「451BOOKS」、松山の「トマト書房」、広島の「DEADAN DEAT 」等々、行ってみたい本屋さんのオンパレードです。「トマト書房」の写真を見ると、書架の前にズラリとアナログレコードが並んでいるのが見えます。これだけで、もうこの店には行かなあかん、と血が騒ぎます。

さらに、島旅の達人、編集者、画家、古本屋店主達が、瀬戸内の島めぐりをする時に、読んでおいて欲しい本を各5冊選んでくれます。森山大道「何かへの旅1971−1974」、吉村昭「海も暮れきる」、内田麟太郎「みさき」など、店に置いておきたい本もありました。

年末年始に、ぶらり島巡りなんて行ってみたいものです。そんな時、この本はきっと役に立ちそうです。

★なお、2009年に誕生した「せとうち暮らし」は、次の21号から「せとうちスタイル」へと名前が変わります。乞うご期待!

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「まだどこにも紹介されたことのない日本全国のおもしろい本屋22店を現役の書店員22名が文章で案内」

と、帯に書かれた「まだまだ知らない夢の本屋ガイド」(朝日出版社1200円)という本。全国の本屋って、もう津々浦々まで紹介され尽くされているのではないかと思っていたので、「ほんまかいな?」と、読み始めましたが、「ほんま」にありました。

従来の書店紹介本では、おしゃれなセレクトショップや、オーナーの個性溢れるお店、或はイベントで、新しい顧客開拓にがんばっている店舗の紹介が主でした。しかし、この本に登場する本屋さんは、全く違います。

先ず、登場するのは「死者の選書」をする月蝕書店。ここは、亡くなった方のために本を揃えるという、故人が好きだった食べ物を供えるかわりに本をというサービスですが、故人の持っていた本を祭壇に飾るのではなく、亡くなられた方が、きっと読まれるだろうと思われる本を持っていくという珍しい提案です。

神戸にある書店も紹介されています。お店の名前は「GOKUCHU BOOKS」。えっ、「獄中ブックス?」。その通りなんです。つまり服役中の人から来た本の注文を受け、刑務所に配達するサービスを行っています。なんでこんなことを始めたのかについて、オーナーの北嶋さんは、徳島刑務所に服役中だった暴力団員の父親のもとに本を送り続けたことが原体験だと語っておられます。そして、父親と同じ組にいた方から、本の注文が入りそこから本格的に獄中にいる人に届ける業務が始まったとの事です。

出所した人が店に訪れて、(俗に言うお礼参りではありません)受け取った本のことについて語られたりすることもあるそうですが、最近出所した青年が、出版社を立ち上げました。刑務所の検閲にひっかからない受刑者向けの最高のエロ雑誌を発行するとか。頑張ってください!

読み続けると、驚くような本屋さんばかりなのですが、中でもウソみたいな話が、名古屋にあった「本屋の奥の秘密の本屋」です。メガ書店の地下1階の奥。什器に囲まれた壁面の奥にその扉はあります。しかも、この本屋の事を知っているのは、メガ書店の店長と数名のスタッフのみ。知らないスタッフには、その扉は開かずの扉としてしか認識されていません。そんな秘密の本屋にある本は、貴重な本ばかりだろうと推測しがちですが、なんとその大きな書店の中にある本からセレクトしたものが並んでいます。秘密のサロンめいた場所でゆっくりと本が読める場所らしいです。いちげんさんお断りの書店の極みのような場所ですね。

この本屋を取材された方が本の発売決定を連絡したところ、なんとその秘密の本屋は消えていました。

「メガ書店が入っていたビルの跡地には、建て替えと移転を知らせる看板が立っていたのだ……。」

その後、この書店がどうなったのかは誰も知らないというおとぎ話のような不思議な顛末です。

と言うように、従来の本屋訪問本の常識を覆してくれることは間違いありません。

 

 

 

 

子どもの本専門店「メリーゴーランド京都」店長、鈴木潤さんの「絵本といっしょに まっすぐまっすぐ」(アノニマスタジオ1620円)が発売されました。

鈴木さんとは、レティシア書房が店を始めた時からのお付き合いで、開店間もない頃に、店内でウクレレのライブもしていただきました。メリーゴーランド京都は、併設されているギャラリーも面白い展示が多く、いつも覗かせてもらっています。今回、発売された本は、彼女のブログを一冊にまとめたものです。最初から読んでいくのもいいですが、巻末に、この本で紹介された本の一覧が掲載されていますので、それを見ながら、興味ある本を探しながら、ページを捲るのも面白いかも。

例えば、モーリス・センダックの「うさぎさん てつだってほしいの」(冨士房600円)を見つけてページを開きます。

お母さんへのプレゼントの悩む女の子に、うさぎさんが適切なアドバイスを与えるという絵本です。本の紹介と、鈴木さんの思い出話がありました。小さい時、弟たちが母の日プレゼントに、八百屋できゅうりとお豆腐を選んだことを思いだして、こう書かれています。

「あの時は『はずかしい』と思ったのに、今は『誇らしい』と思います。」と。

あるいは、歯医者とそこへ治療にやってきたワニ君の抱腹絶倒のコメディー(私は歯医者の待合室で読んで、大笑いしました)を描いた五味太郎の「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」(偕成社400円)では、息子さんの口元から「こりこり こりこり」という不思議な音が聞えてきた、と書かれています。口の中には何もない?? そこで鈴木さんはもう一度、覗き込みます。

「あれあれ、上の歯ぐきから白いものが顔を出していたのです。『こりこり』の正体は歯ぎしりだったのです。」

おかあさんになられて、絵本の世界がまた一回り広がったような感じが素敵です。

そして、写真と詩をミックスした「子どもたちの遺言」(校成出版社800円)。谷川俊太郎が詩を書き、田渕章三が写真を撮った本です。赤ちゃんから青春真っただ中の若い人たちの横顔が次々と登場します。

「わたしは幸せです。でもわたしが幸せなだけでは、世界は良くならないと思うのです。違いますか?」と、図書館で本を読む少年が問いかけてきます。宮沢賢治が突きつけた永遠の課題を、この少年も背負っている、そんな風に見えてきます。この本の後書きに谷川は、「うまれたばかりの赤ん坊に遺言されるような危うい時代に私たちは生きている。そう感じているのは私だけだろうか」と書いていました。

おかあさんとして、鈴木さんが意識している今という時代の危機を感じました。

この街に、しっかりとした考えとセンスで本を選び、こどもたちに提供している本屋があることは、私にとって本当にありがたいことです。

30cm×21cm、厚さ2.5cmの大型ハードカバー、定価4100円もする「世界の夢の本屋さん」(エクスナレッジ2500円)が入荷しました。

ロンドン、パリ、ローマ、アムステルダム、ブリュッセル、ニューヨークの名書店30数軒を紹介した本です。

「いつの日か、こんな本屋さんを訪れてみたい、こんな本屋さんをつくってみたい」と思わせる書店ばかり。コンテンポラリーなお店もあれば、どっしりとした歴史の重みを感じる風格のある店もあります。前者ならば、ローマの「アリオン・エスポジツィオーニ書店」、曲線のフォルムを生かした書店なんて、日本にはないでしょうね。後者ならば、パリの「ジュソーム書店」。創業185年を迎える老舗で、パリ右岸側の文化を支えながら、この都市を見つめて来た書店というところです。店の外側から撮った写真だけで、中に入ってみたいとあこがれます。店内で本をみていて、ふと見上げると外は雪なんて光景に遭遇したら・・・幸せでしょうね。

どの店も魅力的ですが、そう思う一つの要因として、チープな書架を使っていないことがあります。私も、チェーン店勤務時代に、何度かほんのちょっと贅沢な書架のプランを出したけれど、すべて却下された思い出があります。まぁ、もっともあの低い利益率では致し方ないかもしれません。

海外に行かれる前に、この本でチェックされては如何でしょうか。(住所、電話、HP等の基本情報は記載されています)

国内ならば、岡崎武志さんの「気まぐれ古書店紀行」でしょう。これは98年〜2005年にかけて「彷書月刊」にて連載されたものをまとめたものです。古書店探索の旅に出た著者が、ここは!と思う店を紹介してあります。

「いい古書店に近づくと匂いでわかり、人は早足になる、という法則」

の通り、タッ、タッタと駆け込んだ日本全国の書店が網羅されています。古書店を見つけてワクワクする気分を、軽快なタッチで綴っていきます。海外はすぐに無理でも、国内なら明日からでもステキな古書店巡りが出来そうです。旅のお供には、やはり同じ著者の「古本病のかかり方」(筑摩文庫/絶版680円)がいいと思います。

この中に、大学時代京都で赤貧生活を送っていた頃を描いた「わたしの京都青春古本地図」というエッセイがありますが、お薦めです。アラン「精神と情熱に関する81章」を読んで、線を引いていたことを取り上げ、こう書いています。

「…….若いですねえ。線を引きながら、若き岡崎は何を煩悶していたのでありましょうか(何も考えていなかった可能性が高いが)」

青春の一コマです。

 

神戸元町の古書店「トンカ書店」が10周年を迎えて、記念のイベントをされているので、お祝いも兼ねて、今にも雨が降り出しそうな休日に出かけました。

まず、元町の手前、六甲道で途中下車。まだお訪ねしたことがなかった古書店「口笛文庫」へと向かいました。しかし、JRの駅から山手に向かって上がる、道の急勾配には参りました。どこだ?どこだ?と探していると、突然目の前のお店が出現。写真で見た通りの、通路にまで本がぎっしりで、古本屋さんの匂い満載のお店です。ちょっと暗めの照明が、気分を落ち着かせてくれます。

おっ、CDもある。お気に入りのブリジット・フォンテーヌの「ラジオのように」を発見。店にもあるのだけれど、迷わずゲット。フレンチポップスと、アバンギャルドジャズと、現代音楽を組み合わせたサウンドは、飽きさせない、永遠の傑作です。蛇足ながら、先日BS放送の桂米朝のドキュメント番組で、なんとこのアルバムからの曲を使っていました。古典落語にフレンチとは、製作者のセンスの良さに拍手です

山のように積み上げられた本を、一冊一冊触る至福の時間。前から読んでみたかった、アメリカの自然保護運動の父、ジョン・ミーアの生涯を描いた「森の聖者」(山と渓谷社)が、棚の下から、こちらを見上げていたので、引っぱり上げたりと楽しい一時でした。

店主としばらく話をした後、元町へと向かいました。「トンカ書店」さんとは、レティシア開店以来のお付き合いで、毎回一箱古本市にも参加していただいています。もちろん、来年2月に当店で開催する「女子の古本市」にも出で頂きます。

10周年イベントで、写真家永田収さんが撮影した神戸、姫路の古書店店主のポートレイト展を開催中でした。どの方も素敵な表情でした。灘駅近くの「ワールズ・エンド・ガーデン」の写真には、看板ネコちゃんもちゃんと登場していました。

レジ前には閉店した海文堂書店の閉店までの記録「海の本屋のはなし」(苦楽堂2052円)がど〜んと積まれていました。店主に聞いたところ、100冊買い取ったとか。太っ腹!さすがトンカさん!私なんか数冊仕入れただけですからね。

神戸の古書店の話を聞きながら、店内を物色。いぬいとみこ作、瀬川康男絵の「北極のムーシカミーシカ」をみつけました。今も文庫で発売されているロングセラー商品ですが、これは1974年理論社から出た初版のものです。一度、古本市で見た時、わりと高値が付いていましたが、今回ゲットしたものは、函付きで中身も綺麗です。いいもの見っけ!の気分です。(函に小さな破れがあるのが残念です)

イベントはこの後もドンドン続きます。12月11日(金)〜13日(日)の三日間、神戸BALで、口笛文庫さんと一緒に古本市を開催されます。私もお邪魔するつもりです。

神戸元町に、新しい古書店「1003」(センサン)がオープンしました。

店主の奥村さんとは、春の長岡天神の古本市でお会いして、その時にお店を開くことを聞いていました。ミニプレスも販売したいと、レティシア書房で何点かセレクトされていました。

さて、JR元町駅を降りて、たらたらと南に行くと、中華街の南京町西門が見えてきます。その側の小径を入ると、白い壁の古いビルがあります。一階は炭焼&ワインバル「9」(ナイン)というレストランで、平日はランチもあるらしい。(残念ながら、私が伺った月曜は定休でした)

細い階段を上がって、ドアを開けると素敵な空間が広がります。最初に目に飛び込んできたのは、懐かしい家具みたいな大きなステレオ装置です。しかも、そこから音楽が聴こえてくる(これには、仕掛けがあります)。

家具職人のご主人が製作された棚には、文芸書、絵本、エッセイ等が並んでいます。そして、店主好みの民族学の本の棚もありました。マタギの本を、手に取って読ませてもらいました。その棚で見つけたのが、生島圭三郎の絵による「カムイケチャップ」(福武書店)です。アイヌ語でシマフクロウを「カムイケチャップ」と呼びます。島の王という意味で、この王とシャチの群れとの交流を描いた絵本で、威風堂々たるカムイケチャップの姿が楽しめます。

オープンして、ほぼ一週間の印象をお聞きしていたら、後ろから元気な女性の声が響いてきました。振り返ると、いつもお世話になっている、元町の古書店「トンカ書店」の頓花さんではありませんか。開店のお祝いに来られたみたいです。暫くの間、三人で古書店談義に花がさきました。

今年10月で「トンカ書店」は、なんと10年だそうです。それを記念して、色んなイベントを店内でされるらしいのです。神戸の古書店ばかりを撮影した写真展も企画中だとか。

「1003」の書架は、まだまだ開発中で、どんな本がこれから集まってくるのか楽しみです。是非、来年の古書市には参加してくださいとお願いして、店を後にしました。

西村雅子編集による「”ひとり出版社”という働き方」(河出書房1300円)は、独立系出版社で苦労する出版人のドキュメンタリーなのですが、それ以上に働くということを根本的に見つめた素晴らしい一冊です。

ここには、当店もお世話になっている、タバブックス、夏葉社、サウダージブックス、ミシマ社、土曜社等の十数社が登場します。本の製作から販売、管理まで一人でやるなんて無謀といえば、無謀なんですが、皆さん、いや〜儲かりませんなどと言いながら、喜々として仕事に取り組んでおられます。

最初に登場する「小さい書房」代表の安永則子さんは、育児しながらフットワーク軽く好きな本を出されているから驚きです。夫のお金を使わずに、自分の貯金で事業を軌道に乗せるのに「三年では短すぎるし、十年では長過ぎる」だから5年を目処にがんばっておられます。

東京から京都に移ってきたミシマ社は、正確に言えば「ひとり出版社」ではありません。社員数名の小さな出版社です。本の大事な役割は、世の「小さな声」を拾うこと、と社長の三島邦弘さんは言い切ります。だから、大企業と同じ方法でやっても無駄、面白い人材を集めて、新しい企画を出していくことが役目。最近新たに刊行された「コーヒーと一冊」シリーズは、今までにない切り口の本ばかりで、松樟太郎「声に出して読みづらいロシア人」は当店でも人気の一冊です。

さて、小豆島から発信する「サウダージブックス」の浅野卓夫さんの経歴はちょっと変わっています。元々、文化人類学の研究者を志し、人類学者の山口昌男の書生だった方です。それが、彼が出会った三人の古老との体験(これが面白い)を通して、小さな島で出版社を立ち上げる道へと向かっていきます。プロレタリア文学者の黒島伝治作品を集めた「瀬戸内海のスケッチ」(2160円)や、被爆して、戦後自ら命を断った作家原民喜の短篇小説集「幼年画」(1728円)といった、あまり目立たない作家に注目したり、「焚火かこんで、ごはんかこんで」(1620円)、「感謝からはじまる漢方の教え」(1512円)と暮しに密着した本など、地方発の出版社としての理念を持った作品を出しています。

新刊書店に勤めていた頃、出版社の営業マンから「もっと、積んでくださいよ、いつでも返本していいですから」とはなから、いつでも返本してねという”ぬる〜い”営業が嫌でたまりませんでした。でも、これらの独立系出版社はそうではありません。真剣に、情熱をもって製作した本を、売れる数量を吟味して販売する。それこそ、真っ当な販売だと思います。

レティシア書房が続く限り、この本に載っているいないにかかわらず、一人、二人でがんばっている出版社は応援します!

 

本について語った本を探すのも、こういう古本市では楽しいものです。今回も沢山出ています。

恵文社一乗寺店長の堀部篤史さんが書いた「本を開いて、あの頃へ」(サンクチュアリ出版500円)は、彼が愛読した本の紹介がメインの内容ですが、読書への偏愛や、読書法まで語った一冊です。内外の文学は言うに及ばず、漫画、雑誌まで幅広く取り上げられています。2009年2月に休刊した「京阪神エルマガジン」が取り上げられていますが、ライブや、映画情報にいっぱい印をつけて、街に飛び出した記憶が鮮明に甦りました

一箱古本市の生みの親とでも言うべき南陀楼綾繁の「ほんほん本の旅あるき」(産業編集センター900円)は、今年5月発売のまだ新刊台に乗っている本ですが、古書として出されています。日本全国、面白い本を探して巡り歩いた記録をまとめた労作です。彼の文章は、旅に出たいなぁ〜とつくづく思わせてくれます。

装丁家、鈴木成一が自ら装丁を語った「鈴木成一装丁を語る」(イーストプレス800円)は発想、思考法等を、自ら担当した120冊を選び出し、解説した本です。奥田英明、吉田修一、桜庭一樹、東野圭吾等の人気作家の装丁をテキストに、いかに「演出」したか。装丁家を目指す貴方は必ず読まねばなりません。

コミック関連で、夜久弘「COMICばくとつげ義春」(福武書店1000円)は、84年から87年までの4年間に15号刊行された季刊誌に、つげが毎回作品を書いていた時代を振り返った一冊です。著者はその本を立ち上げた人物で、いかにしてこの雑誌を軌道にのせたか、その苦労話と、熱気に溢れた時代を語ってくれます。

そしてコミックがらみでは、山口昌男の漫画論集「のらくらはわれらの同時代」(立風書房800円)。白土三平、畑中純、杉浦日向子、萩尾望都等の漫画家との対談も掲載されています。古谷三敏「減点パパ」を論じる一方で、海外の翻訳コミック、例えばウィンザー・マッケイ「夢の国のリトル・モモ」を論じてみたり、児童文学者のモーリス・センダックの世界に踏み込んだりと、自由に闊歩しているところが楽しい一冊です。

 

もう一点、朴順梨「離島の本屋」(ここから800円)。礼文島から与那国島まで島にある本屋22軒をルポルタージュした傑作です。島の風情を味わいながら、旅する気持ちで島々の本屋さんをめぐるというステキな本です。「男はつらいよ」の寅さんが、「よう、おばちゃん、儲かってるかい?」とヒョイと顔を出しそうな書店ばかりです。

 

ビジネス書の一つのジャンルに、働き方の本というのがあります。時間の効果的使い方やら、体調管理の仕方まで様々な本が溢れていました。そういう本にヘキエキしていた私が、なんと店内に「働くことを考える本」というコーナーを作ってしまいました。

こんな本が並んでいます。

堀部篤史著「街を変える小さな店」(1400円)、 辻信一編著「GNHもうひとつの<豊かさ>へ、10人の提案』(800円)、 早川義夫著「ぼくは本屋のおやじさん」(800円)、 久松達央著「小さくて強い農業をつくる」(1300円)、 渡辺格「田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』」(1400円)、 森健著「勤めないという生き方」(1200円)、 矢萩多聞著「偶然の装丁家」(1300円)、 島田潤一郎著「あしたから出版社」(1450円)。

そして西村佳哲の「自分をいかして生きる」(950円)、「ひとの居場所をつくる」(1600円)、「いま、地方で生きるということ」(1200円)。「自分の仕事をつくる」(チクマ文庫450円)

等々です。

これらは、方向性は違っても、幸せに暮らすことを考える本です。ありもしない贅沢で豊かな生活のなんかさっさとゴミ箱に捨てて、社会にも、環境にも迷惑をかけずに、好きなことやってノホホンと生きていくために、どうゆう働き方がいいのかを示唆した書物です。

レティシア書房を開店して、この春で4年目に入ります。その中で、地味だけれど、自分に出来る事を理解して、仲間を増やし、楽しいことをシェアする考え方で働いている人やお店を開いている人たちに多く出会いました。もう、上だけを向いて突っ走るのではなく、穏やかに生きて行くことをチョイスする人が増えたのかもしれません。

誰もが、すぐにこんな生き方が出来るわけではありません。けれども、かくありたいという気持ちを、そんな人生の選択が間違いではないことを、教えてくれるラインナップです。出たばかりの新刊も多いので、中古でもあまり安くはありませんが、すべてお薦めの本です。

色々な生き方を選べるのは、選択肢の多い大都会だからと思っていたところ、そうでないことが分かりました。焼津から京都に来る度、いつも立ち寄ってくださるお客様から「『静岡』本のある場所』という本を頂きました。この中に掲載されている書店も、多分、好きな本に囲まれていれば幸せ、と感じられるところばかりです。

もしかしたら、全国で広がっているのかもしれませんね。善きことです。