今回は、写真集からご紹介します。

おっ、この本が古本市に出たか!と思ったのが本橋成一の「屠場」(2200円出店/居留守文庫)です。これは、一家に一冊常備しておいていただきたいと思う写真集です。屠殺場に送られてくる牛、その牛たちの解体の現場、そこで働く男たちの寡黙な姿を捉えています。私たちが、日頃口にしている肉はこうして運ばれてくるのだ、他者の命を喰らうことで私たちは生きている、ということを忘れないために。

星野道夫の大型写真集「Araska」(4000円/出品 古書柳)もぜひ持っておいて欲しい写真集の一つです。極北の地アラスカに躍動する、動物達の命を真正面から撮り続けた星野らしい写真集です。動物たちだけでなく、この地に生きる人々たちの逞しい顔も捉えています。こういう過酷な大自然の中で生き抜くと、こんな精悍で、素敵な顔になってゆくのですね。

 

個人的に、松田青子の小説「スタッキング可能」にはギブアップしてしまいましたが、彼女の書評集「読めよ、さらば憂いなし」(500円/出品 思いの外)はお薦めです。谷崎の「細雪」について、

「雪子ちゃんの顔のシミは何だろう。『細雪』の三女、三十を過ぎて独身の雪子ちゃんの顔に現れる『例のシミ』のことである。三十を過ぎた人間の顔にシミができるのは当たり前のことだと思うのだが、昭和十年代では、どうやらこのシミが大問題らしい。『細雪』は雪子ちゃんの顔のシミをめぐる物語であると言ってしまいたくもなるくらい、上中下巻にわたり、このシミのことばかり何度も取りざたされる。」

そうだったか??もう一度読んでみようかな。書評集の後半には映画評も収録されていますが、単なる書評、映画評に終らず、元気だして生きていこうというよと前向きな気分にさせる不思議な魅力一杯です。

もう古書で出るのか!と驚いたのが、「須賀敦子の手紙」(1000円/出品 とほん)です。1975年から1997年にかけて友人に送られた55通の手紙を、オリジナルと活字に直したものと同時に掲載した本です。71年、夫と死別し帰国した須賀が、親友に送った手紙には、一人暮らしの孤独、文章を書くことの喜び、不安、そして自分の病のことなどが語られています。書簡を公開するのはどうかな、と本が刊行された時には思ったのですが、一人の女性の生き方がみっちり詰まったいい本です。

★古書市は19日(日)まで。月曜定休。なお最終日は18時で閉店します。

★夏休みのお知らせ  8月20日(月)〜24日(金)休業いたします。