村田らむ著「樹海考」(晶文社/新刊1674円)を読むと、樹海に分け入ってみたくなります。

富士の裾野に広がる青木ヶ原樹海。「樹海」という名称がくっ付くだけで、なにか邪悪な呪いの渦まく異界のイメージを持ってしまいそうです。入ったらでられないとか、コンパスが狂うとか、その手合いの都市伝説がまかり通っています。しかし、樹海のある山梨県南都留郡富士川口町近辺には、キャンプ場にゴルフクラブ、レストラン等の観光施設が建ち並んでいます。では、どこから怪奇めいた伝説が生まれてきたのでしょうか、という素朴な疑問からこの本はスタートします。

自殺の森=樹海というイメージですが、この青木ヶ原は、樹海にある洞窟観光のメッカで、多くの人が訪れます。樹海の中には散策路もあり、深い森の雰囲気を味わうこともできます。その一方、近辺には富士山を信仰の対象とする浅間神社が多数存在し、パワースポットなどともてはやされています。

また、得体のしれない新興宗教の道場があり、筆者はそこへ乗り込んで話を聞きました。「乾徳道場」というところには、老夫婦が住んでいましたが、何度もここを訪れた筆者も、2度しか夫婦には出会ったことがなく、いつのまにか引き払ったらしく、樹海で生活するのも大変そうです。しかし、道場自体は古くからあるらしく、暗い洞窟で修行の跡がみつかっています。樹海の宗教施設が、一躍クローズアップされたのがオウム真理教です。樹海を突っ切る71号線を南下するとサティアンがあった場所にぶつかります。ギリギリ樹海に入る所で、教団が施設を作りたくなるような何かがある場所なのですね。

樹海へ100回も入っている著者は、落とし物、もしくは廃棄物の多さにまず驚きます、大量のアダルトビデオ、テント、ゲーム機器に、CDプレイヤー、車両(これは自殺者の乗っていたものみたいですが)。一番奇妙だったものはというと、「散策中にふと上を見上げると、かなり高い位置の樹の枝にブーツが片方だけ引っ掛けられていた。枝にヒモで括ってある。しばらく歩くと、もう片方も掛けられていた。」ちょっと、気味悪い光景です。

さて、後半は、死体のお話です。自殺者の死体を探すマニアが登場します。40代半ばのサラリーマン。彼が樹海散策で、ゾンビ映画にでも出てこないようなグロい死体が木にぶら下がっている現場に遭遇します。それから、何故か、死体探しにハマり、週末には必ず樹海に入っているのだとか。そんな彼と一緒に入った時に、ほぼ白骨化、上半身の骨はバラバラ、頭蓋骨は見当たらないという悲惨な現場に遭遇します。このあたりから、本書は死体の話が盛り沢山になってきます。

首を吊った死体にウジが湧いているのを見た時のすさまじい体験も語っていますが、ここから後は本書をお読みください。それだけ自殺者が多いことが、怪奇な物語が流行る温床になっているのかもしれません。自殺できなかった人たちが作った村がある、殺人鬼がいて侵入者を殺す、野犬の群れが人を襲う等々、オンパレードです。

とはいえ、自殺者は減りません。筆者は『自殺スポット』とメディアが取上げると、自殺者が急増すると書き、その番組を見た人達が「『樹海=自殺の名所』と認識し、自殺場所として樹海を選ぶ」と断定しています。樹海の誤ったイメージに捉われている人は多いと思いますが、この本を読んでリアルな姿を見てください。

 

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