50代、60代前半のおっちゃん達、御同輩のみなさん、貴方がニキビだらけの中学生の頃です。みんなひし美ゆり子に萌えたはずですよね。知らない?それは人生最大の損失かも……..。

ひし美ゆり子?誰だったかなぁ〜と思い出せないオヤジ殿には、この台詞であぁ〜あの人かと思い出すでしょう。

「アンヌ、僕は人間じゃない。M78星雲から来たウルトラセブンだ」

そうです。円谷プロが制作した30分TV番組「ウルトラセブン」(1967年放送開始)の名シーンです。自分がウルトラセブンであることを告白したウルトラ警備隊のモロボシダンとそれをじっと聞く女性隊員アンヌ。背景の廃墟が急にロマンチックな海辺風に切り替わり、シューマン作曲ピアノ協奏曲イ短調作品54が流れ出すという、とんでもないラストシーンに貴方も、私も涙しました。

そのアンヌ隊員を演じたのがひし美ゆり子で、彼女の女優人生とTVに押されて映画界が急速に元気を失ってゆく時代を描いた樋口尚文の「万華鏡の女」(ちくま文庫/古書600円)を入荷しました。この本、単行本はかなり高値で取引されていて、文庫本化大歓迎です。筑摩書房にも、ファンがいたのかも…….。

当時の少年達は、この別れのシーンに涙する一方で、アンヌ隊員のボデイコンシャスな制服に萌えたはずです。著者は「あの隊員服のアンヌは凄くトランジスタグラマーで、われわれ子どもの視聴者はドキドキした」と語っています。元々、この役は他の女優が演じる予定でしたが、急遽、ひし美がやることになったのです。しかし、隊員服のサイズが、予定の女優のサイズだったために、ピチピチになってしまったという逸話が出てきますが、おかげで我々は彼女の一挙一動に釘付けになったわけです。

当時の「ウルトラセブン」には優秀な脚本家、気鋭の演出家が揃っていて、先住民の問題、核兵器開発のこと、侵略される側の悲惨、過去の悲しい戦争のことが、それとなく描きこまれていました。誰だか忘れましたが、「ウルトラセブンで反戦を学んだ」と言っていた学者がいました。そのあたりのことも彼女の口から語られていきます。

このインタビュー集が優れているのは、彼女が女優として生きた、映画からTVへと変わってゆく時代が見事に再現されていることです。斜陽になった映画界は日活がロマンポルノに、東映が実録映画へとシフトし、エログロ路線を走り始めます。そして彼女もまた、そんな世界に飛び込んでいきます。傑作として名高い「紅色元禄㊙︎物語」は、この時代の彼女の主演作でした。若き日の井原西鶴に色を教えるという滅茶苦茶な設定でしたが、映画作品としてよく出来ていて、えらく感動したのを覚えています。その後、実録映画「新仁義なき戦い 組長の首」にも登場していました。

この時代の東映エログロ路線・実録映画は、ほぼ観ていたので、ひし美ゆり子は、私にとってはずっと現役女優でした。当時人気のあった五月みどりの「かまきり夫人」シリーズのソフトポルノよりも、根性の据わった役柄を体当たりで演じていて、小気味よかったものです。

映画・TV界のトップ女優の一代記ではありませんが、子供向け特撮番組から、TVドラマ、そしてエロ映画を経て、この業界の浮き沈みを見てきた人間の生の声が聞ける貴重な文庫だと思います。

大学の時、ファイルに挟んでいたアンヌ隊員のブロマイドを見たガールフレンドに、「ばっかじゃない」と笑われたことも、この本を読んでいて思い出しました……….。

 

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