贈り物の季節に、ぴったりの本が何点か入荷中です。

漫画家松本大洋と、詩人くどうなおこがコラボした「『いる』じゃん」(SWITCH/新刊1728円)。糸井重里が「赤んぼうでも、おとなでも好きになる。ささやくことばと、なでるような絵」と、賛辞を送っている絵本です。松本は、やはり詩人の谷川俊太郎とコラボした「かないくん」(ほぼにちの絵本/古書1400円)という傑作があり、詩人とのコラボ第二弾です。「かないくん」は切なく、ちょっと哀しいお話でしたが、こちらは冬の太陽に向かって歩き出したくなるお話です。

「地球はぼくを抱いてくれる」「地球 ぼくもあんたを抱いていたい」

という言葉が表現するように、この星と向き合う少年の思いが溢れています。絵本を読まない人に送っても、ちょっと元気でそうでいいかもしれません。書店のプレゼント絵本コーナーでもあまり見かけないようですが、勿体ない。

もう一点、絵本のご紹介。宮沢賢治原作、ささめやゆき絵による「ガドルフの百合」(偕成社/古書1100円)です。賢治作品として地味な作品を、モダンな画風で描いていきます。嵐の夜、雨を避けようとして飛び込んだ一軒の家で、主人公ガドルフが経験する幻想的なひと時。賢治作品の中では、鮮烈な色彩感覚を与える物語を、ささめやゆきが見事に絵本にしました。

「この屋根は稜が五角で大きな黒電気石の頭のようだ。その黒いことは寒天だ。その寒天の中へ俺ははいる。 ガドルフは大股を跳ねて、その玄関にかけ込みました。」

と賢治らしい言葉の使い方も、シンプルな構図で絵本の一コマになっています。なお、ささめやゆきの作品として「十四分の一の月」(幻戯書房/古書1500円)、詩人工藤有為子とのコラボ「異国の砂LE METEQUE」(ハモニカブックス/新刊2376円)も入荷しました。こちらもプレゼントに最適です。

絵本ではありませんが、童画界の重鎮武井武雄の版画作品を集めた「版画小作品集」(集英社/古書2000円)はいかがでしょうか。未刊行作品45点をすべて原寸で収録した作品集です。作者自身の手による詞文と共に卓越したセンスと楽しさ溢れる作品が楽しめます。

最後にもう一つ。「あかパン」(パイインターナショナル/新刊1296円)。赤ちゃんパンダの写真集といえば、内容はもうなんの説明も不要です。いやはや、ムフフと思わず笑ってしまう写真ばかりです。ブルーな日も、こんなパンダの姿を見たら、気分も少しは晴れてきそうです。

 

●レティシア書房のお知らせ●

 年始年末 12月29日(金)〜1月4日(木)休業いたします。

 

80年代半ば、アート系出版社として、ユニークな本を出していたリブロポートが 「うたの絵本」シリーズという子供向けのシリーズ本をリリースしました。

その第一作が「なかよしともだち」(初版900円)というタイトルで、装本が平賀甲賀、挿絵が武井武雄でした。「なかよし小道」、「どんぐりころころ」等の懐かしい唱歌12曲に武井の絵が付いています。どの絵も愛らしく、手元に置いて見ていたいものばかりです。北原白秋の「雨ふり」や、「かくれんぼ」(作者不明)に用いられている独特の鳥のデザインなどは、さすが洗練されています。

京都在住の版画家、木田安彦の2002年京都大丸で開催された個展の図録「異才・木田安彦」(1500円)が入りました。図録といっても400ページ以上あるぶ厚い一冊です。この個展では、木田が魅了されていた歌舞伎の舞台の臨場感あふれるスケッチが並んでいます。役者のダイナミックな動きをスピーディーに捉えた素描は、歌舞伎好きでなくとも面白い。木田のライフワークとなった「三十三間堂」シリーズ、日本の祭シリーズ等の傑作も収録されています。

 

歌舞伎絡みでもうひとつ。通称「武智歌舞伎」を立ち上げた武智鉄二の芸術と生涯を追いかけた森彰英著「武智鉄二という藝術」(水曜社1500円)も入りました。

昭和24年、彼の演出による実験的歌舞伎公演が行われました。これが、武智歌舞伎の始まりです。しかし、数年で活動は終息し、その名前だけが残りました。その後、映画界へ転出し、なんとハードコアポルノ映画「白日夢」でセンセーショナルな話題を世間に投げかけます。さらに、彼の監督作品「黒い雪」が猥褻文書図画公然陳列の疑いで訴えられ、「黒い雪裁判」に巻き込まれていくという波乱の生涯でした。伝統芸能の伝承者が、なぜポルノ映画を作り始めたのか、1人の芸術家の内面に迫ってゆくノンフィクションです。

 

 

 

★勝手ながら、5/8(月)、9(火)連休いたします。

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精神分析の専門家が書いた落語の本って、小難しそうな感じがあります。しかも版元はみすず書房という人文出版社の大御所となると……..。これ藤山直樹「落語の国の精神分析」(1500円)です。「孤独と分裂−落語家の仕事、分析家の仕事」なんて章から始まるので、尚更難しそうですが、著者の文章が平易で、トントンと頭に流れ込んでくるので、面白い一冊です。巻末には立川談春との対談も付いています。

天才的な童画作家、武井武雄の長女三春が父のことを綴った「父の絵具箱」(ファイバーネット800円)もいい本です。お父さんの七回忌を機に、脳裏に浮かんでくる父親の側面を描いた武井武雄の一生です。もちろん、多くの武井作品が掲載されていています。「一生の持ち時間を、父は父流に生き、悠然と使い切ってさっさといなくなってしまった。死ぬ用意など全くしなかった。父らしい引き際であったと思う。」と三春は語ります。中程に収集した郷土玩具に囲まれてニンマリしている武雄の写真をみ見ていると、幸せな時間をいきたからこそ、誕生した多くの作品だったのでしょうね。

ジェーン・グドールという霊長類研究者のことをご存知でしょうか。星野道夫ファンなら、彼の「ゴンベの森へ」に登場する学者だなとお気づきの方もおられるかもしれません。そう、星野がわざわざ会いに、アフリカまで出かけた学者です。チンパンジーと共に生きた彼女の生き方を、自ら文章にしたのが「森の旅人」(角川書店600円)です。「わたしのささやかな思想と信仰のどこかに、読者がなにかをみつけてくださり、人生の旅路の行く手を照らす小さな光として役立てていただければ」と書いています。アフリカの奥地の過酷な環境の中で、チンパンジー達と生きた彼女の魂の遍歴。掲載されている穏やかで、知性的な面立ちの彼女の写真の撮影者は星野道夫でした。

グイグイと小説の世界に引込む力を、最も発揮しているのはたぶん小川洋子だと思います。私は、彼女の本を買って、損をした、時間の無駄遣いをしたという記憶がありません。彼女の長編「ミーナの行進」(中央公論社650円は出品されたお店の熱意が溢れています。)にはポップが二つ付いていて、一つにはお店のブログで紹介したこと、そしてもう一つには、小説の中に登場する司書の青年のこんな言葉が書かれています。

「何の本を読んだかは、どう生きたかの証明でもあるんや」

こんな台詞見たら、読みたくなるよね。

「女子の古本市」は19日(日)まで。最終日は18時で閉店いたします。


 

 

 

1894年生まれの武井武雄は、童話の添え物扱いされていた子供向けの絵を「童画」と自ら命名して、芸術の域にまで高めました。大胆な構図、幾何学的な線が、モダンで奇妙な感覚を感じさせてくれる作品群は、今なお高い人気を保っています。

今回入荷した「青の魔法」(弥生書房/1992年発行/初版/帯付き1500円)は、詩人として、また思想家としての一面を捉えた本です。あとがきで、息子の三春氏が「今回おさめられた童画、版画、及びそれにそえられた詩の作品群は終戦後住んだ板橋区南常盤台で製作されたもので父の一生の中では比較的後半生の属するものである。」と語られています。本業は絵描きだが、武井の文章や詩は素晴らしく、創造は留まるところなくますます広く深かったようです。

童画に詩をつけた作品群の中の「落日」の詩は、

「朝日よりも夕日の方が 何かと人に語りかける。 だんだん小さくなって 遠くへ行ってしまう 太陽に人の心は いつまでもついてゆく 西方に浄土があるという のは満更嘘でもない。」

とくに難しい表現があるわけではありません。沈みゆく太陽に人は付いてゆくという見方はそのままイメージできます。

また「星曜日」ではこんなことを表現しています

「遠い星を見ている者は幸である。星に着陸してその無惨な肌にさわるものは不幸だ。もしも愛するものがあったなら遠くにおいて手を伸ばさない事にしょう。征服は又の名を惨敗という。仰ぎみよ、星はいつも君たちの上に居て、春夏秋冬はこの星空と、君たちのベッドとの間を静かに流れていく。星曜日こそ星空の最も美しい日なのだ」

なんて野尻抱影ファンなら、いいなぁ〜と思われるでしょう。この中に「征服は又の名を惨敗という」というドキッとするフレーズがあります。宇宙に進出することも、未開の大地を開拓してゆくっことも、それは人間にとって「惨敗」なのだという考え方は、極めて今日的ではありませんか。

昭和10年から、亡くなる直前まで、武井は小型の私刊本を、百数十冊製作しています。その中から、何点かが採録されています。グロテスクなんだけど、陰惨ではないお化けが登場する「お化け退場」(昭和34年)、88歳の時、製作した「鶏遣いの乙女」は、切り絵を手作業でやらずにレーザー光線カットで光線が自動的に抜いてしまう技術を駆使した実験的作品です。

昭和2年に出された児童書「おもちゃ箱」の中の作品群は、まさしく武井調の人物が並んでいます。これを説明できる言葉を私は持ち合わせていません。ぜひ、作品をご覧になって下さい。昭和2年にこんな絵を書いていたとは…..。武井は戦時中はどうやって暮らしていたんでしょう。生きにくい日々だったでしようね。

 

★レティシア書房 年末年始休業のお知らせ

12月29日〜2017年1月4日まで休業いたします。新年は1月5日から平常通り営業いたします。

 

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絵本がたくさん入荷しました。まだ整理中ですが、お薦めの本を、何度かにわけてご紹介します

先ずは、20世紀アメリカを代表する画家、ベン・シャーンが絵を描き、詩人のアーサー・ビナードが、文章を寄せ、全体の構成を担当した「ここが家だ」(集英社1600円)。サブタイトルに「ベン・シャーンの第五福竜丸」とあるように、かつて、ビキニ環礁で操業中だった漁船第五福竜丸が、アメリカの水爆実験で被曝した事件を絵本にしたものです。

明るい内容の絵本ではありませんが、放射能に犯された漁民たちの苦しみを、ベン・シャーンが力強いタッチで描いていて、特に今、福島の原発事故を見た者にとっては、迫ってくるものがあります。「空からふった、あの灰には 生きものの からだを しずかに こわしてゆく 放射能が たっぷりと はいいっていた。」というページの、真っ黒な人物が醸し出す悲しみは強烈です。

次にご紹介するは、武井武雄が絵を書いている「とうもろこし どろぼう」(フレーベル館・絶版2000円)です。童話に添えてある絵を、一個の作品として芸術にまで高めた武井の作品は、どれも子どもへの愛情と、児童文学への深い思いに満ちた作品ばかりです。以前、京都高島屋の彼の展覧会で、一堂に集まった作品をみて、そこにいるだけで、豊かな気持ちになれたことを思いだします。

この本は「キンダーおはなしえほん」シリーズの一冊として、昭和49年に発行されたものですが、元々はメキシコ民話で、西本鶏介が文章にして、武井が絵を付けました。鮮やかな色彩感覚で、メキシコの伝統的な衣裳に身を包んだ男たちが描かれています。全く、色あせないとは、こんな作品のことをいうのでしょう。

もう一点、ご紹介します。チャールズ・L・ブラッド&マーティン・リンク作、ナンシー・ウインスロー・パーカー絵による「ブランケットになったやぎ』(童話屋・絶版2000円)。

「わたしはやぎ。ジェラルディンという名前です。グレンメイというナバホ族の友だちと岩窓のそばにすんでいます。」という文章ではじまるこの本は、やぎのジェラルディンの一人称で、グレンメイが彼女の毛を使ってナバホ・ブランケットを完成させるまでが書かれています。織りをされている方は、よくご存知のように、やぎの毛を刈って、洗って、紡いで、染めて、織ってゆく様子が丁寧に描かれています。ゆっくりと時間をかけて、人の手を使って作り上げて行く作業が、子どもにもわかるように語られていますが、大人にも読んでいただきたい一冊です。初めに「ナバホ織の名人 グリー・ナスバにささげる」と書かれていますが、この絵本に描かれているような名人だったのでしょうね。

 

★連休のお知らせ  誠に勝手ながら5月9日(月)〜11(水)3日間休業いたします。

★ライブ決定 世田谷ピンポンズ「COMEBACK FOLK」

                 5月25日(水)19時30分  1500円(予約受付中)


大人になってからのこと、ある日、武井武雄と聞いて、忘れていた「キンダーブック」という名前を思い出しました。子ども向けの薄い雑誌です。そうしたら、小さい頃、部屋にあった木製の小さな本棚の色や形までも甦りました。ただし、キンダーブックがその本棚に並べてあったわけではなくて、きっと幼稚園の本棚だったかと、儚い記憶・・・・。

古本屋を始めてから、改めて武井武雄と出会い、この人は童画だけの人ではなかったと認識しました。どこかで古くさいと思っていた色合いのモダンな事!店にある「ラムラム王」(銀貨社1000円)のページをもう一度めくりました。

今回「「武井武雄の世界展」に行き、画家武井武雄のすばらしい絵の数々に感動しました。「風曜日」「星曜日」をはじめとする作品群の中で私は「青の魔法」の青い色が好きです。そこには

『青の魔法をかけられて   昔の空は青かった。

青の魔法をかけられて   昔の海も青かった。

魔法使いの居ない今    空と海は灰色だ。

地球は廻っているけれど  青の魔法を知る人は

みんな僕らを見限って   月の世界へ行ったのだ。』

とリズミカルな詩が添えられていました。ユーモラスで怖い、そして優しくて辛辣。繊細で大胆、わかりやすく、懐かしくて新しい。生と死がいつも重なりあう。

一緒に展覧会を見た店長は、やはりというか、武井さんの作った本に、感動していました。本の装丁とか挿絵だけでなく「本」そのものを美術品のように、こんなにたくさん作っていた人だと初めて知りました。

そして私は木版画に魅かれました。木目の美しさを生かした何とも言えないいい色合いの、素敵な木版画にいっぱい出会えました。感謝です。

ちなみに、もう一冊「父の絵具箱」(900円六興出版)という、娘の三春さんが書かれた本も在庫しています。

武井武雄の世界展〜こどもの国の魔法使い」は京都高島屋で5月19日まで。お薦めです。(女房)

 

 

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