夏葉社の新刊「サンライト」(2160円)は、永井宏の初のアンソロジーです。彼の著作はほぼ全て読んでいます。この人の言葉は、人を一歩前に押し出して、さぁ、楽しもうよ!という気持ちにしてくれます。後書きで、、やはり彼に後押しされて出版社「アノニマスタジオ」を立ち上げた丹治史彦が、永井宏のことをこう表現しています。

「一番最初に先ず『励ます人』という言葉が思い浮かぶ。『背中を押す人』『けしかける人』『種をまく人』、言い方はいろいろあるが、永井さんはとにかく人に何かをすることを勧めるのが上手だった。」

私が初めて読んだのは、大きな書店を任されて、にっちもさっちもならない時だったと記憶しています。「がんばれ」とか「諦めるな」とかそんな野暮なことを言わず、気持ちよく仕事をして、毎日を暮らすコツを教えてくれました。

永井宏は1951年東京に生まれました。美術作家として様々なジャンルの作品を発表しながら、80年代には「ブルータス」の編集にも携わります。しかし、99年、都心を離れ神奈川の海辺の町に引っ越し、生活に根ざしたアートを推進する「サンライト・ギャラリー」を運営しつつ、著作を発表していきます。

アノニマスタジオが活動し始めた頃に創刊された「クウネル」、「天然生活」に関係していたライター、編集者にも永井さんと交流があった人がいました。「くらし系」に出版物発行に、影響が少なからずあったみたいです。

「その夏は、トマトの初々しい緑との対話の日々が続いた。そしてそれは、だんだんと自分が望むようになってきた。光と水と土を見つめながら暮らすような、ささやかな生活の始まりでもあったような気がする。」

多くを求めず、日々の暮らしに価値を見つけるライフスタイルは、たくさんの支持者を生んでいきました。トレンドを素早く自分のものにする器用さではなく、今、ここで生きている意味を見つめ続ける愚直さを、軽やかに提唱した人だったと思います。

「気持ちが良いにしても悪いにしても太陽の光はいつもあるのだから、それを毎日どう受け止める生き方をしているかということが基本なのだ。」

そんな思いを持ちながら、ワークショップやらポエトリーディングを開催、多くの若者を背中を押し続け、2011年59歳の若さで天国へと旅立っていきました。惜しい、本当に惜しい人でした…….。今こそ、再評価される人物です。

先ずは、この散文集をお読みになって、いいなぁ〜、この人と思われたらぜひ彼の著作をお読みください。

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2011年4月、美術作家の永井宏が60歳でこの世を去りました。

彼は日々の暮らしの中に、アートを取り込むことに情熱を傾けていました。と言っても、高価な作品を買ってお部屋に飾る、という類いのものではありません。彼のポリシーはシンプルです。

「誰にでも表現はできる。ぼくたちの暮らしそのものが、ひとつの表現になる」

日々の暮らしと向き合った中で出てくる自分だけの表現。それは、自分がたてた一杯のコーヒーでも、或は、苦労して焼き上げたパンでもいい。

別に海辺の綺麗な家に住まなくても、大都会の真ん中にも自然はあります。街角を吹き抜ける風、ひょっと咲いている花等々。それらのちいさな自然を感じながら、自分の居場所を確認して、ゆっくりと暮らしてゆく生き方を、彼は「ネオ・フォークロア」と呼びました。「フォークロア」という言葉は、60年代にヒッピームーブメントを経験したアメリカの若い世代が、より身近な自然に添った生き方を志向した時代を象徴する言葉です。バブル経済が幕を閉じて、地に足をつけた生き方を模索すべき時代に提唱したのが、この「ネオ・フォークロア」でした。

彼の本は決して、人生論ぽい、小難しいものではありせん。「雲ができるまで」(リビロポート900円)、「夏の仕事」(メディアファクトリー1100円)はシンプルに生きる気持ちを見事に表現しています。

「ゆっくりと口に入れてゆっくりと飲む。そんなことが平凡な毎日の精神を支えてくれる」

1992年の春、葉山に1軒のギャラリーがオープンしました。永井宏が主宰する「SUNLIGHT GALLERY(サンライト・ギャラリー)」です。出展者の経歴は不問、作品の事前審査もなし。ただ、出展したい人が、大げさではない、その人らしい姿を表現しているかがだけが基準とされていました。

「ロマンチックに生きようと決めた理由」(アノニマ・スタジオ700円)はこのギャラリーに参加した人達の記録です。カフェオーナー、アーティスト、フード・コーディネーター、編集者等々様々な人達が集まっています。

「ジャズブックス」(2160円)という素敵なビジュアルJAZZ本を出された、焙煎珈琲屋の中川ワニさんも参加されていますね。

もう二度と右肩上がりの時代なんか来ないのに、また来るぞ!とはしゃぐアベちゃんとお友だちには、早々にお引き取りいただいて、日々の暮らしをゆっくりみつめる「ネオ・フォークロア」的生き方を学びたいものです。

カフェと音楽についてのエッセイをまとめた「カフェ・ジェネレーションTOKYO 」(河出書房700円)は、音楽好き、そしてお気に入りの一冊を持ってカフェに入る時間が、この上なく楽しい人にはお薦めの一冊です。