本日、ご紹介するのは池澤夏樹「異国の客」(マヤルカ古書店出品/集英社350円)です。池澤が、フランス在住時代に書き留めた文章を単行本にしたもので、その時代の彼の思索の跡を辿る一冊です。元々、雑誌「すばる」に連載されていて、当時から少し読んでいました。フランスに暮らしながら、日々感じたこと、発見したことが理知的に表現されていて、小説とはまた違う顔を見せてくれます。

「形ばかりの仲良しごっこや、歯止めのない妥協に実効的な意味はない。次々に生じる意見の相違、利害の対立、感情的反発を一定の範囲内に収める。そのために普段から行き来して互いを知る。ある意見が相手方から出てきた時に、その背景まで理解するよう努める。どんな場合にも突き放さない。敵対しかねない相手を理解しようとする努力も姿勢そのものが一つのアピールである。平和というのはそういう手間の成果だ。」

言いたい事だけ言い放ってしまう首相に聴かせたいものです。

このタイトル、なかなか人前では言えません、という衝撃的な小説こだま著「夫のちんぽが入らない」(古書星晴堂出品/扶桑社600円)は、タイトルと中身のギャップがすごい小説です。知合いの新刊書店の方に感想を聞いた時、これはいい本ですというお答えでした。20年に及ぶ夫婦の傷だらけの人生を丸ごと描き出した物語で、強靭な精神に感動します。

「ちんぽが入らない人と交際して二十年が経つ。もうセックスしなくていい。ちんぽが入るか入らないか、こだわらなくていい。子供を産もうとしなくていい。誰とも比べなくてもいい。張り合わなくていい。自分の好きなように生きていい。私たちには私たちの夫婦のかたちがある。少しづつだけれども、まだ迷うこともあるけれど、長いあいだとらわれていた考えから解放されるようになった。」

自分の好きなやり方で生きて何が悪いねん、という社会の常識への批判がこの過激なタイトルに現れています。出産が女性の仕事と言い放つおバカな政治家の鼻先にぶら下げたい本ですね。

 

もう一点、女性が、自分の身体について書いた本を。内澤旬子「身体のいいなり」(林海寺社出品/朝日新聞社300円)です。38歳で乳癌と診断された著者は、癌治療の副作用を和らげるつもりで始めたヨガで、全く予想もしていなかった体質の変化を経験し元気になります。乳腺全摘出を決断し、その後の乳房再建手術で、彼女が見つめたものとは……..。癌の診断以降、何故か健やかになってゆく自分を見つめたエッセイです。

 

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(12日(月)は定休日。)

その後19日(月)〜23日(金)まで休業いたします