ささめやゆきの絵本「椅子」(BL出版/古書1650円) は、様々な人生を「椅子」になぞらえて絵と文章で綴った大人向け絵本です。

絵本は「ぼくたちには座る椅子が用意されている。しあわせの分量も かなしみの分量も きまっているんだ。」と誰も座っていない椅子の絵から始まります。その後、様々な国の色々な職業の、お年寄りや子どもと、その人が座る椅子が登場します。

画家は立てかけたキャンパスに向い、ボクサーは、3分間闘っては1分間パイプ椅子に腰をおとし、映画監督は自分の名前の入った椅子にどっしりと座って、演出を始める。どんな人にも、座る椅子が用意されています。その人の人生になくてはならない椅子の物語があります。

表紙は、編み物をするおばあさんが座っている椅子。「祖母の座った藤の椅子、母の座った藤の椅子、おばあさんになった私が座る。祖母のくらしたこの家に、母のくらしたこの家に、おばあさんになった私がくらす。椅子もテーブルも壷までもそのままで、ただ人だけがかわってゆく。祖母がしたように母もしたように。」

学校の椅子、会社の椅子、行きつけのバーのいつもの椅子、そして自宅で寛ぐ時の椅子と、人生に寄り添う椅子が誰にも用意されていることに気づきます。

「西14丁目狼通り38番地 ステージの音をかき消す大笑いの酔っぱらい。それでもピアノにむかう人。汗まみれのYシャツの襟もと、曇ったままのメガネのレンズ。だれがきこうがきくまいがその音色には気品があって、この人は、ここを愛している。自分の場所だというように椅子をぐっとひきよせた。」

これは、ピアノに立ち向かうジャズマンですが、流れるようなサウンドが聞こえてきそうな絵は、レコードジャケットのよう。

もう一点、椅子を主人公にした素敵な絵本があります。池谷剛一「椅子」(パロル舎/古本900円)です。レストランに置かれた椅子が、何故だが誰も座ってくれず、その事に腹をたてたレストランのオーナーは、この椅子を路地裏に捨ててしまいます。誰も通らない路地で椅子は孤独な時間を過ごします。しかし、ある雨の夜、ずぶ濡れの猫がやってきます。「 猫はゆっくりと僕の下にもぐると まるで暖かい毛布でも見つけたかのように 気持ちよさそうにくるまり 降り続く雨空をときどき見上げながら 冷たく濡れた身体を休め いつしか深い眠りにつくのでした。」

その後、この椅子には猫が集まり座るようになりました。「僕は椅子。座ってもらうことが幸せです」という文章でこの絵本は幕を閉じます。優しいタッチの絵が魅力です。

秋の夜長、いつもの椅子に座ってこんな絵本を読みたいものです。

 

 

★釧路ヒッコリーハウスオーナー安藤誠の「ネイチャートーク」が決定しました。10月27日(土)19時スタートです。参加費は2000円です(要予約)