沖縄、那覇の市場通りにある日本一狭い本屋「ウララ」の店主、宇田智子さんの「市場のことば、本の声」(晶文社/古書1200円)を入荷しました。

宇田さんの「那覇の市場で古本屋」(ボーダーインク/古書850円)は、大きな新刊書店から、畳三畳分のスペースしかない小さな古本屋店主へとなった経緯が中心に描かれ、軽妙な文章で楽しく読みました。

単行本第二作となる「市場のことば、本の声」は、廃刊となったミニプレス「BOOK5」の連載コラムや、その他の小冊子に書かれていた文章を集めたエッセイ集です。沖縄に憧れて、移住し、地元で地元沖縄の本を売り出して9年の間に、沖縄の人々のこと、考えてきた本のことが、一杯詰まっています。

「沖縄時間=ウチナータイム」という言葉をご存知でしょうか。

「沖縄には独特の時間が流れているとよく言われる。確かにこうして市場で人を見ながら時間をはかっていると、多少のずれはどうでもよくなる。営業時間を明記している店のほうが少ないし、腕時計をしている人も見ない。業者との打ち合わせでも、何時に、と約束している人はほとんどいなそうだ。店は待つのが仕事であるから、相手にはいつ来てもらってもかまわない。こちらは開けたら閉めるまでそこにいる、それだけだ。」

そういう風土のもと、このお店には様々な人達が訪れます。日本中を回っている船乗りは、沖縄に寄港する度に、この本屋に立ち寄るお客さんで、船室に一杯ある本を譲りたいと申し出ます。「あした出航して今度は北海道から東北にまわって、次に沖縄に来るのは来年なのですが。」と、時間のかかる話です。でも著者は、「来年は、船旅を終えた本たちに会えるかもしれない」と楽しみに、その日を待つ事にしました。

きちんとお盆をやりたいという奥さんを亡くした男性に、「沖縄の冠婚葬祭祭」の本を売った話、市場通りの店舗にはトイレがなく、遠くの、しかも早く閉ってしまう公共施設まで行く不便さの話など、本を通して触れ合った人たち、市場通りの商店で、商いを営む地元の人達との交流がスケッチ風に描かれています。ですから、古本屋店主が書いた本とはいえ、けっして古書のウンチク本ではありません。素敵な、或は面白い人達に囲まれて、身の丈サイズで生きている一人の女性の幸せな日々報告と言ってもいい本です。

「ものを片づけて手入れをするのは、すぎた時間に向きあうことであり、さらなる時間を迎えるための準備でもある。掃除して洗濯して、時間は一日ずつ刻まれていく。どんなに断捨離しても家事は終わりにできない。勇ましい三文字よりずっと地味な日々が、死ぬまで続く。」

いい文章ですね。

安曇野発の沖縄紹介リトルプレス「ぱぴる文庫」1〜3号が入荷しました。
ページを開いた瞬間、眩しい!と感じるリトルプレスですよ、これは。
そして、各号で紹介されている沖縄野菜の写真やら、お料理を見て猛烈な食欲が襲ってくるアブナイ本でもあります。「ゴーヤーのサラダなんとなくベトナム風」、「タイ風かぼちゃのオレンジカレー」「ナーベラーとエビの卵炒め」(ナーベラーはへちまの事です)等々、名前を聞いただけでお腹が減ってきますね。
連載記事もユニークです。題して「沖縄おべんとうウォーズ」。1号の巻頭文にこうあります。
「ここに記すのは、沖縄おべんと修行の記録である。真夏の暑くて倒れそうな日も、台風の暴雨風が吹き荒れる日も、北風が吹きつけ凍え上がる日も、毎日毎日ここにたたずみその熾烈な争いを乗り越えてきたのだ。たかがおべんと、されどおべんと、たったひとつのおべんとの中にも、さまざまなドラマが詰め込まれているのである。」
と、日々灼熱の沖縄のストリートで繰り広げられるおべんとの顧客争奪合戦をレポートしてあります。その涙ぐましい努力。もちろん、写真入り。これが、また胃袋を刺激します。調査した久茂地交差点のマップと、どこでどんなおべんとを売っているかまで網羅されています。「今日のランチボックス」というコーナーでは、レシピも載っています。もう拍手、拍手です!
で、こんな沖縄100%の雑誌が、沖縄ではなく信州の安曇野発というのが面白い。このリトルプレスの主催者の方が、沖縄に移住し、また故郷に戻って来られたという経緯が創刊号に書いてありました、なるほどね。
そして、ここからもう一冊「くっきりと安曇の光の中で」という本も出版されています。循環型エココミュニティ「シャロムコミュニティー」を丸々紹介した本です。大地とともに共生し、自然と共に行きて行く実践の場としてのコミュニティーの姿が、美しい写真と共に掲載されています。こちらは、全く沖縄とは違う自然が楽しめる一冊に仕上がっています。
Tagged with: