沢朱女さんの絵は、妖艶で、可愛らしく、孤独だけれどそれが哀しくなく、夢の中に漂っているような幸せな気分になります。

待望の沢朱女作品展は、2014年に続き2回目となりましたが、今回は銅版画とアクリル画で、どの作品も何かしら物語性があり奥行きを感じます。

入口の壁には、秋に相応しく「竜田姫」が飛翔している作品が掛かりました。梨木香歩著「家守綺譚」の、紅葉の項にあるお姫様が竹生島へ渡っていかれる姿のようです。他にも、宮沢賢治から「グスコーブドリの伝記」「オツベルと象」(写真左)をもとに沢さん独自の解釈で銅版画が出来上がりました。本屋のギャラリーでの展覧会ということで、特に考えて頂いたのかもしれません。とても嬉しい!

DMになった「月と少女」(写真上)の夜空を見上げる少女は、きっと作家自身だと思うのです。さえぎるもののない雪の荒野に、小さな女の子のくっきりとした影を作る月は、子ども時代に見上げた月にちがいないと。そう思うのは、沢さんが初めてのエッセイ「飯場と月」に書かれていたからです。「その夜、さえぎるもののない荒地に建つ小屋の上に月光は煌々と降りそそぎ、屋根の下ではさえざえとした明るさのなかで、息をのむ子供がいた。」

「飯場と月」(ヒャクジツコウ舎1350円)は、父である日本画家、沢宏靱(さわ こうじん)との山での暮らし、貧しいけれど愛にあふれた、うらやましいほど心豊かな家族との日々が描かれています。以前店長日誌でも紹介していますが、作品展でも販売していますので、ぜひ手に取って見て下さい。

そして、たくさんの美しいポストカードは、ずらーっとギャラリーの台の上に並んで壮観です。心ゆくまで沢朱女ワールドをお楽しみ下さい。 初秋にピッタリの作品展にお運び頂けたら幸いです。(女房)

 

沢朱女作品展 10月10日(火)〜22日(日) 月曜定休日 12時〜20時(最終日は18時まで)

 

 

 

★安藤誠ネイチャートークショー「安藤塾」今年も開催決定しました。

北海道のネイチャーガイドで、釧路ヒッコリー・ウインドオーナー安藤誠さん(写真右・愛犬キャンディと)のトークショーを10月25日(水)19時30分より開催します。(要・予約 レティシア書房までお願いします) 

 

 

 

 

昨日のブログは吉田健一と娘、暁子との「父娘もの」でした。続いて、本日は、娘の朱女(しゅめ)が、父である日本画家、沢 宏靱(さわ こうじん)との生活を描いた「飯場と月」(ヒャクジツコウ舎1350円 新刊)を紹介します。

明治38年生まれの日本画家、沢 宏靱は、戦後「世界性に立脚する日本絵画の創造を期す」と宣言し、秋野不矩、上村松篁らと「創造美術」を結成しました。

昭和46年、住み慣れた京都市内から、比叡山山腹に移り住みます。朱女さんは、この時代の父と家族のこと、そして家の周りに広がる風景を叙情的に描いていきます。彼女はプロの文筆家ではありませんが、その情景がありありと浮かんでくるような文章です。「孤高の画家」と称され、自分の画業追求のために画室に籠った父親を見つめる優しい眼差しが、読む者を穏やかな気持ちにしてくれます。

タイトルにある「飯場」は、彼女が引っ越した時、まだ家が建ってなくて、住んでいた飯場同然のプレハブ小屋のこと。本来なら、えっ?こんな場所に住むの!?なんですが、子どもであった天真爛漫な彼女は、「だけど、あたしには毎日が夢のようだった。あたしは生涯一幸せだった。だって楽しいんである。毎日が、キャンプだよ。家族全員で」と嬉々として暮らします。

そして、あの頃を振り返って「遊びに遊んで、ひとかけらの心残りもない。あの絶大な幸福感は、いまも私のなかに満ちわたっている。たぶん、生涯の涯まで。」家族の愛情の中で、羨ましくなるくらい伸び伸びとした少女時代。

昨今は夏といえば、「酷暑」「猛暑」とネガティブなイメージですが、私たち世代(彼女は10歳ほど年下ですが)、夏は子どもにとって天国でした。

その嬉しさはこうです。「きりりと冷たい高原の朝のラジオ体操 ヘブンだったプール! 着替えのパンツを忘れてスースーするお尻の帰り道 日没を待ちかねて山々から降り注ぐ蜩の声 漆黒の空から舞い降りる星々の光り」

思いだします、幼かった夏の日々を……。

この家には、TVがなかったそうです。で、食事時間は様々な話に花が咲きます。その中で、前の戦争のことが話題になります。戦争中、日本軍が何をしてきたかを彼女は父から聞かされました。亡くなったお兄さんが「親爺が毎日さもいやそうにゲートル巻いて工場にいくんや」と言っていたと、戦争嫌いの姿も描かれています。このお兄さんも生涯反戦を貫いたという気骨のある一家でした。

ところで、彼女は小さい時「しめちゃん」と呼ばれていて、へんな名前!と父に訴えると、いやいや、狂言師の茂山さんも「七五三」と書いて「しめさん」と読むんやとのお答え。茂山さん(後の千作さん)は父親のあそび友だち。「沢宏靱を偲ぶ会」で狂言を演じてくれた関係です。その茂山さんも、平成14年5月、この世を去りました。今頃は天国で、やあやあとお酒をくみ交わしているかもしれません。

私がこの本で最も好きなフレーズはこれ。

「むかし、元日の朝の空気は『お正月の匂い』がした。幾つくらいまでだが、毎とし。」

最近はそんな匂いもなくなりましが…….。

ところで、朱女さんは水彩画、銅版画の制作をする作家で、一昨年、当レティシア書房ギャラリーで個展を開催(左写真)、今年は10月11日より第二回目の個展をお願いしています。またここでご案内します。

 

今年最後の個展「レティシア書房で贈り物」展が始まりました。

2012年に開店してから3年半の間に、たくさんの作家さんたちに個展をしていただきました。その中から6人の銅版画作家さんの、素敵な作品を集めました。クリスマスやお正月のちょっとしたプレゼントにぴったりの小さな作品を販売しています。

6人の作家さんを簡単にご紹介します。

★江川智洋さん。ちょっと歪んだ線が、何とも言えない表情と物語性を醸し出しています。(写真右)銅版画作品と共に、可愛らしいブローチも出していただきました。(ブローチ1000円)

★オダアサコさん。繊細なタッチで、女性のセーターから羽根がはえるというような、ちょっとシュールな作品世界を見せてくれます。日常の隙間の怖さとファンタジーを感じます。(右下)

★北岡広子さん。ユーモラスなセンス溢れる「うさぎの読書」は本好きの方への贈り物にはぴったり。お馴染みの「アリスシリーズ」に加えて、新しく「待つ女」シリーズを展開中。ポストカードも、ご一緒にどうぞ。(左上)

★沢朱女さん。カフェに集まる人達の楽しそうな雰囲気を伝える「Cafe」(下中央)、本屋さんで、好みの本を探す人達の様子を描いた「libroire」など、どれも奔放な線が豊かなイメージを広げてくれます。ミニ額の作品も沢山ありますよ。

★たかせちなつさん。可愛いくて、少しセンチメンタル。独特のたかせワールド(右)は、プレゼントにぴったり。「呼吸」という作品など、ベッドサイドに置けば、いい夢見れそうです。手づくりメッセージカード(650円)もあります。

★ハセガワアキコさん。 こちらはモノトーンの世界の奥深くに広がる静寂の世界を、垣間見せてくれるような作品(左)が並んでいます。磁石で挟むタイプのユニークな「栞」(150円)もあります。

これだけ多くの作品が並ぶと、作品同士、本と作品、お互いに何だかワイワイ、ガヤガヤやっているようで、店の中がにわかに楽しそうな雰囲気になりました。暮れの忙しい時期ですが、ぜひ素敵な作品との出会いで、ひと時和んでくださいませ。

展覧会は12月30日(最終日は18時まで)までしております。もう、プレゼントはここで買うしかない!かな?