森村泰昌という美術家、ご存知ですよね。1985年、ゴッホの「包帯をしてパイプをくわえた自画像」に扮した森村のセルフポート写真を発表し、その後も様々な人物に化けた作品を発表しています。

「自画像の告白」(筑摩書房/古書1600円)を開けて、大笑いしてしまいました。それはメキシコの女流作家フリーダ・カーロに扮した作品でした。似てるとか似てない以前に、ここまで出来るって凄いです。カーロに扮した森村が車椅子に座っています。彼の周りには、大きな花輪が並んでいて、その中にはカーロの作品を模写したものが組み込まれています。

本書には、彼が扮した12人の美術家が登場します。そして、それぞれに私自身を語り出すのです。え?ほんと?うそ???森村という作家を通して語られる大御所たちの真実。ゴッホが渋谷の繁華街をふらついている作品もお見逃しなく。なお、この本は、大阪国立美術館「自画像の美術史展」で発表された初の長編映像作品を書籍化したものです。きっと、映像も面白かったでしょうね。

もう一点、ご紹介します。こちらは画家、装幀家として本好きにはファンの多い金井田英津子の新作が入りました。泉鏡花の作品を装幀した「絵本の春」(朝日出版社/新刊2310円)です。萩原朔太郎「猫町」、内田百閒「冥土」、夏目漱石「夢十夜」などは、今でも集めている方が多い書籍です。(当店には「冥土」だけ在庫あり)

泉鏡花の世界は幻想的で美しい情景が漂っています。そこには得体の知れないものがいる異界への入り口が待ち受けています。この作品の絵を担当した時、金井田は「名文家の文章が喚起するものにひたすら向き合い悩んだ日々」と回想しています。深い闇に引きずり込まれそうになってきます。画本の傑作がまた誕生しました。