神戸元町の古書店「トンカ書店」が10周年を迎えて、記念のイベントをされているので、お祝いも兼ねて、今にも雨が降り出しそうな休日に出かけました。

まず、元町の手前、六甲道で途中下車。まだお訪ねしたことがなかった古書店「口笛文庫」へと向かいました。しかし、JRの駅から山手に向かって上がる、道の急勾配には参りました。どこだ?どこだ?と探していると、突然目の前のお店が出現。写真で見た通りの、通路にまで本がぎっしりで、古本屋さんの匂い満載のお店です。ちょっと暗めの照明が、気分を落ち着かせてくれます。

おっ、CDもある。お気に入りのブリジット・フォンテーヌの「ラジオのように」を発見。店にもあるのだけれど、迷わずゲット。フレンチポップスと、アバンギャルドジャズと、現代音楽を組み合わせたサウンドは、飽きさせない、永遠の傑作です。蛇足ながら、先日BS放送の桂米朝のドキュメント番組で、なんとこのアルバムからの曲を使っていました。古典落語にフレンチとは、製作者のセンスの良さに拍手です

山のように積み上げられた本を、一冊一冊触る至福の時間。前から読んでみたかった、アメリカの自然保護運動の父、ジョン・ミーアの生涯を描いた「森の聖者」(山と渓谷社)が、棚の下から、こちらを見上げていたので、引っぱり上げたりと楽しい一時でした。

店主としばらく話をした後、元町へと向かいました。「トンカ書店」さんとは、レティシア開店以来のお付き合いで、毎回一箱古本市にも参加していただいています。もちろん、来年2月に当店で開催する「女子の古本市」にも出で頂きます。

10周年イベントで、写真家永田収さんが撮影した神戸、姫路の古書店店主のポートレイト展を開催中でした。どの方も素敵な表情でした。灘駅近くの「ワールズ・エンド・ガーデン」の写真には、看板ネコちゃんもちゃんと登場していました。

レジ前には閉店した海文堂書店の閉店までの記録「海の本屋のはなし」(苦楽堂2052円)がど〜んと積まれていました。店主に聞いたところ、100冊買い取ったとか。太っ腹!さすがトンカさん!私なんか数冊仕入れただけですからね。

神戸の古書店の話を聞きながら、店内を物色。いぬいとみこ作、瀬川康男絵の「北極のムーシカミーシカ」をみつけました。今も文庫で発売されているロングセラー商品ですが、これは1974年理論社から出た初版のものです。一度、古本市で見た時、わりと高値が付いていましたが、今回ゲットしたものは、函付きで中身も綺麗です。いいもの見っけ!の気分です。(函に小さな破れがあるのが残念です)

イベントはこの後もドンドン続きます。12月11日(金)〜13日(日)の三日間、神戸BALで、口笛文庫さんと一緒に古本市を開催されます。私もお邪魔するつもりです。

2013年9月30日、神戸元町にあった「海文堂書店」が閉店しました。

この書店は、私の好きな新刊書店ベスト3に入ります。店の規模としては、まぁ大きいとはいえ、ナショナルチェーンの図体ばかりでかい書店に比較すれば、小振りです。この店の素晴らしさは、何よりも本に対しての愛情が溢れていることです。一人よがりにならず、お客様のちょっと前を見つめて選書してあるので、本棚を見る楽しみに時間を忘れます。

海文堂書店は、実は創業は古く、1914年(大正3年)に初代、賀集喜一郎が開業した「賀集書店」がその始まりです。1926年、屋号を「海文堂」に改め、今日まで営業を続けてきました。神戸っ子だけでなく、全国の本好きに愛された本屋が閉店を迎えるまでを綴ったのが「海の本屋のはなし」です。

この本を出版しているのは。2014年神戸に出来た独立系出版社、苦楽堂です。著者は平野義昌さん。2003年に同書店に入社して、最後の日まで見つめた方です。

「『売る者』と『読む者』がつながり、『読む者』同士がつながりました。『売る者』と時には『読む者』ともつながり、そして『作る者』も『売る者』とつながりました。その場所が『海文堂』でした』

そんな幸せな場所が何故消えていったのか?その事を検証するのがこの本のテーマではありません。この場所に集い、データに頼らずにいい本を集めた仲間たち、そんな彼等を支援してくれたお客様。その楽しく、充実していた時代の記憶を振り返る一冊です。

私は、いい店というのは個々の商品が充実しているのではなく、それらが集まってその店が目指すもの表現している場所だと思います。売場が醸し出す雰囲気とでも言うのでしょうか。「海文堂」に集うお客様も、あ、この雰囲気良いよねと思い、贔屓にされていたんだと思います。

「9月30日をもって閉店」と書かれた紙切れだけで従業員に通告された閉店告知。何故?どうして?今後?も全く伝えられないままの連絡を見た従業員の気持ちは忸怩たるものがあったはずです。

私が最後に担当した新刊書店は300坪の大型書店でした。フツーの大型書店にはしたくなかったのでかなり個性的な棚作りをやり、学生さんを中心に支持をいただきました。わりあい順調に推移していたのですが、数年後、近隣にこの店より大きい店が出来ました。途端に売上げは降下していきました。300坪より、500坪、500坪より1000坪。店の大きさに屈服するのです。その時、思いました。書店員のスキルって何?

「海文堂」の近隣にもやはり大きな書店が出来ました。多分、そのことが閉店の遠因になったのではないでしょうか。物量だけで決まるなんて、バカバカしい、という気持ちが、私が会社を辞める原因にもなりました。