「ブラジルから来た少年」って映画をご存知ですか?

原作は、NYの現代魔女物語「ローズマリーの赤ちゃん」を書いたアイラ・レヴィンの小説。ヒトラーの遺伝子を使ってクローン再生を企むナチの残党と、ナチハンターの活躍を描いたサスペンスもので、グレゴリー・ペックとローレンス・オリビエというトップクラスの俳優が共演した大作でした。日本では劇場公開されませんでしたが、私は、TVで放映されたときに、偶然観ました。ラストのゾッとする少年の笑い声に背筋が寒くなりましたが、ビデオ化された時は、その部分が削除されていました。(今はどうなっているのかは知りませんが)

ナチズムの圧政に苦しんだヨーロッパでは、こんな荒唐無稽の話こそありませんが、ナチズムそのものを深く追求していった様々な映画、そして文学が存在します。ヴィスコンティの「地獄に堕ちた勇者ども」、リリアーナ・カヴァーニの「愛の嵐」などはその究極の作品かもしれません。

ドイツ占領下のパリで、反ナチの抵抗文学運動を起こし、「深夜業書」を発行したヴェルコールの「海の沈黙」(岩波現代業書500円)はその第一巻に掲載されました。47年映画化され、数年前に京都でもリマスター版が公開されたのを機に、観に行きました。ナチの将校を自宅に住まわせることになった家族が、最後まで、この将校と一言も話さないで無言の抵抗をする様を描いた力作です。監督のジャン=ピエール・メルヴィルは、弱冠30歳で、処女作としてこの抵抗文学の映像化に成功しました。

ナチス崩壊後、ファシズムに加担していた我が国の軍事政権も終りを迎えます。8月15日。多くの日本人が死んだ戦争は敗戦で幕を引きました。この時期になると、私は、必ずと言っていいほど一本の映画を観てしまいます。

岡本喜八監督「日本の一番長い日」です。

大宅壮一の原作をベースに、ポツダム宣言受諾から玉音放送が流れるまでの24時間を力強く描いた力作です。ファナステッィクに戦争継続、本土決戦を叫ぶ若手陸軍将校の叛乱を軸にして、いかにして戦争終結へと向かったが理解できる映画でした。ポツダム宣言受諾のための複雑な政治的プロセスを、緻密に描いてある唯一の作品ではないでしょうか。

 

ただ忘れてならないのは、ここで戦争終結に向かってギリギリの交渉を続ける政治家、軍人は、元々戦争を起こした張本人であって、美化されてはいけないという事です。多くの日本人を無駄死にさせた責任は、永遠に消えるものではありません。

その事を踏まえ、この夏公開される「日本の一番長い日」を観に行くつもりです。監督は、大好きな「クライマーズ・ハイ」の原田眞人なんで、これは行かなくちゃね。

美化されていないことを祈ります。