アンソニー・ドーア著「すべて見えない光」(新潮社/古書2400円)という長編小説があります。物語の舞台は戦時下フランスの街サン・マロ。目の見えない少女マリーとドイツの若き兵士ヴェルナーの運命を描いた作品で、ピュリツァー賞の小説部門など数多くの文学賞を受賞しています。決して、読みやすい小説ではありませんが、時代の波に翻弄される二人の運命を詩情豊かに描いていきます。

この小説に感動して、舞台となったフランスの各地に出向き、その街の印象を写真と文章でまとめあげた小冊子を入荷しました。熊谷眞由美さんの「たどる『すべての見えない光』」(600円)です。2017年秋、彼女はこの地を訪れます。「本に出てきた場所を巡り、自分の五感を使ってもっと深くこの本の世界を味わってみたい…そう思って行きました」と書かれています。一冊の本を読んで、読者をヨーロッパまで向かわせるって、本の力って凄いですね。

舞台となったサン・マロは、花崗岩の岸壁と12世紀に建てられた城壁に囲まれた英仏海峡に面した街で、小説に登場した建物やストリートなどが今も残っています。マリーが住んでいた大叔父エティエンヌの家、マリーの父ダニエルの家の家政婦マネック夫人が、サン・マロのホームレスのウベールに連れていかれる秘密の場所などを、一つ一つ訪ねて写真に収めています。

さらに、著者は物語に出てくるヴェルヌの小説「海底二万マイル」の中で「サン・マロの教会で大ダコの絵を見た」という件を思い出し、サン・マロ歴史博物館で大ダコの描かれたタペストリを発見します。

う〜ん、凄い!この情熱!一冊の読書で、ここまでやるとは!

この冊子を読み、そう言えば「すべて見えない光」にはこんな人物も登場したなぁ、オーデュポンの「アメリカの鳥類」が出てたなぁ〜、とか思い出しました。

これから小説を読む方のために、登場人物の紹介と、彼らの年表まで用意されていますので、読書の助けになります。

著者の熊谷さんは、「ASHITA no HAKO BOOKS」という小さな出版レーベルを立ち上げておられています。そこから出された小冊子も販売中です。

 

★店主  FM京都に出演! 3月23日、30日「サニーサイド・バルコニー」という番組の中です(13時50分ぐらい)。暇な方は聞いてやってください。