京都御苑の梅林が、やっと咲きそろいました。季節外れの雪が降ったり妙に暖かい日が続いたりと、何かと不順なお天気ではありますが、今朝の散歩は春を間近に感じました。

さて本日よりギャラリーは高原啓吾さんの「猫描」展が始まりました。「猫」と「描く」という漢字が似ていて、「ネコネコ展」と言いそうですが、NEKOKAKUと読んでくださいね。

高原さんの描く猫は、何だか少しクールな印象がありました。2017年の個展の際に聞いたところによると、本人は猫アレルギー、したがって同居不可、でも猫は好き、とか。友だちのところの猫や近所で出会う猫たちをよく観察して、べったりくっついて猫可愛がりしていない分、絵にもちょっと距離をおいた感じが表れているのかもしれません。やたら可愛いだけの甘い猫には、決してならないのだと思います。

今回はいろんな手法を試しながら、猫にアプローチしています。キャンバス地に柔らかいタッチで描いたものは、猫をなでたときの安らかな気持ちが伝わってきます。ややぼかして、一気にかきあげるので、何枚も失敗を重ねて、やっとしあげた仔猫の愛らしい姿(写真上)をぜひご覧下さい。すーっと手を伸ばしている、黒い猫の精悍な風情(写真右)もとても美しい。

一方、黒い輪郭線を生かした正方形の作品群は、猫たちの一瞬の表情を捉えようとしていて、ユーモラスで楽しい。毎日つきあっている我が家の猫のしぐさにも似ていて、笑ってしまいます。そして、15センチ四方のドローイングの作品は、プレゼントにも喜ばれそう。新作も含めたカード(162円)、手ぬぐい(540円)、布製トートバッグ(1080円〜2592円)なども販売しております。

 

何枚も何枚も描き続けたからこそ生まれたシンプルな猫の形は、スッキリと爽やかです。高原啓吾のステキな猫たちに会いにどうぞお越し下さいませ。

レティシア書房もおかげさまで7年目に入ることができました。今後ともどうぞよろしくお願いもうしあげます。(女房)

★高原啓吾個展「猫描 NEKOKAKU」は、3月18日(日)まで  12時〜20時(最終日は18時まで)月曜定休日

 

 

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今年、正月一番に観た映画は、「猫が教えてくれたこと」(トルコ映画/京都シネマにて上映中)です。昨今の猫ブームのせいなのでしょうか、なんと満員で、立ち見の盛況ぶり。しかし、この映画、可愛らしい猫が登場するだけの映画ではありません。

トルコの古都イスタンブール。ここに住む猫たちは、街の中で日々の食料や安心な寝床を得ることできています。そして、心に傷を負った人にとっては生きがいとなったり、お店の人と適当に距離を取って仲良く付き合ったりと、様々なスタイルで生きています。

地面スレスレのカメラが、猫の目線で古都の姿を捉えていきます。7匹の猫と、それぞれに関わっている男たち、女たちのインタビューを交えながら、日常を追いかけます。猫と暮らす彼らは、そんなに裕福な生活を送ってはいませんが、どこにも暗さがないのです。いや、現実には大変なことが続出し、それぞれに苦しいのかもしれません。しかし、猫と共にいる時間だけは、穏やかに流れています。なんか日々の暮らしの小さな幸せを見つけ方が上手なのです。

猫でも犬でも、動物と暮す最大のメリットは何かと言えば、欲がなくなることではないでしょうか。おいしいものを食べたいとか、気持ちよく過ごしたいとかの欲求はありますが、分不相応な贅沢への欲は少なくなると思います。まぁ、一緒に生きてりゃ、いいかみたいになってくるのですね。もちろん、すべての飼い主がそうとは言えませんし、とんでもないお金をつぎ込んで、ペットを飾り立てている方もおられますが。

ところで、この映画に登場する人達は、ペットととして家の中に囲い込むことなく、共に、この街に生きる仲間として猫と暮らしています。「日々是好日」あるがままに、身の丈にあった日々を生きていければ、それは素晴らしいものだ、とこの街の猫たちは教えているのかもしれません。

 

★当店ギャラリーで現在開催中の「ネコヅメのよる」展(1月21日まで開催)で販売中のカレンダー「Charity Calendar2018」はあと数冊で完売です。また、著者の町田尚子さんの”ご当地サイン入り”絵本も十数冊で終了です。お早めにどうぞ。

 

あけましておめでとうございます。本日よりレティシア書房通常営業いたします。本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

2018年ギャラリーは、町田尚子「ネコヅメのよる」原画展で幕開けです。

ある夜、古い家に住んでいるネコが、「ん?もしかして今夜か?」と気づくところから始まります。一体何が起こるのか?

あちこちの露地から、ネコたちがぞろぞろと出てきて、お互い「いよいよですね。」などと挨拶しながら、ある場所に集まっていきます。そこで大勢の猫たちが楽しみにしていたのは、何年かに一度夜空に上がる「月」だったのです。人は全く登場しません。ネコたちだけで成り立っている、ネコだけが知っている世界。

初めてこの絵本をみたとき、表紙のなんとも不敵な面構えに私はぞくっとしました。素敵!!!カワイイ猫は巷に溢れていますが、こういう、昔の映画に出て来る悪役のような、味のある顔にはなかなかお目にかかりません。この猫様を原画で観ることが出来たら、という願いが叶いました。本屋で原画展を巡回中の、WAVE出版さんからお話があり、町田尚子さんと親しいギャラリーnowakiさんのお口添えで、わがレティシア書房で開催されることになったのです。こいつぁ、春から縁起がいいわい!!

インパクトのある構図で様々な姿が描かれています。原画で見ると、夜の空気感や、細かいタッチ、深い微妙な色彩にみとれます。

 

町田さんは、8才のネコを引き取りました。「白木」という名前のネコがこの物語の主人公だと、絵本のあとがきに書かれています。そして、保護猫の活動にも参加されている様です。年末から販売中の町田さんの猫カレンダー「CharityCalendar2018」の売上げの一部も、動物保護活動に当てられています。

原画展開催を記念して、”ご当地サイン”入りの絵本「ネコヅメのよる」(WAVE出版1512円)、「CharityCalendar2018」(500円)、「手ぬぐい」(1300円)、「ポストカード」(2種類各162円)、「シール」(302円)など販売しています。(数量に限りがありますので、お早めに)

このブログを書いている最中に、町田さんのTwitterで知ったという図書館司書のお客様が来店されて「きっと関西でも原画展が開かれると楽しみにしていました。」と言って頂きました。本当に幸せなことです。「この絵本を子供たちに読聞かせしたら、すっごい喜ぶのですよ。」とも。ミステリー調に話して、怖い物語かと思っていると、最後に楽しいところで終るのがとってもいいのだそうです。

町田さんの猫世界にぜひ浸ってみて下さい。(女房)

 

 

 

2014年「ふたりのねこ」で絵本作家としてデビューしたヒグチユウコは、グロテスクさと可愛らしさをブレンドしつつ、奇妙な世界を、これでもかという過剰な描きっぷりで人気急上昇です。

しかし、奇抜な発想と画力だけではないとう事が、今回入荷した3冊の絵本を通してわかりました。2015年に発表された「せかいいちのねこ」(白泉社1512円)は、深く心に染み込む物語です。

本物の猫になりたいと願う、ぬいぐるみニャンコと、旅先で出会う本物の猫との交流を描くハートウォーミングな絵物語。登場する猫たちは、当然細かいところまで描き込まれていますが、ぬいぐるみニャンコが見せる様々な表情は、擬人化されたようなものではなく、ヒグチの猫だから出せる独特の魅力があります。そして、ニャンコをいじめる、一見イヤミな猫が、実はそうではなかったことが明らかになる所は、この絵本のクライマックスで、映画なら儲け役と呼べるキャラ。

 

「おれたちねこは、人間より寿命が短いからたいてい先になくなるんだ。でも、おまえはずっといっしょにいられるじゃないか」と、本物の猫になろうとするぬいぐるみ猫を説得して、泣かせます。

その翌年、発表した「ギュスターブくん」(白泉社1512円)は、作家の奇抜な発想力満開の一冊です。上半身は猫で下半身は、ヘビのような、蛸のような、グロテスク極まりない奴なのですが、猫の無邪気な可愛らしさと、底知れない不気味さを持ち合わせて、実にチャーミング。その他の奇妙な動物も、ここまで書き込まれるとアートですね。

そして同年出版された「すきになったら」(白泉社1512円)には、猫は登場しません。少女とワニの恋愛物語です。ワニは極めてリアルに描かれているのですが、とても優しい感情が伝わってきます。このワニ、前作の「ギュスターブくん」にも登場していますが、今回は少女と愛し合う二枚目の主役でした。とても素敵な恋する絵本です。

摩訶不思議な世界に遊ばせてくれるヒグチユウコは、これからも目の離せない作家の一人でしょう。

 

★8月9日(水)〜20日(日)「レティシア書房 夏の古本市」を店内で開催します。

個性的な28店のよりすぐりの古本が大集合です!(14日は休み)


 

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なんの変哲もない門と時計台、そして奥に見える平屋建ての建物。門の前をドッジボールで遊ぶ少女。どこにでもありそうな風景を描いた「時計のある門」(1935年)から伝わってくる透明な静寂感は、観るものに様々な物語を投げかけてくるようです。

画家長谷川潾二郎が、パリに旅立つ直前のこと、麻布にあるこの赤煉瓦の堀のある建物(正確には東京麻布天文台ですが)を見た瞬間に、その素敵な雰囲気に魅了された彼は描こうと思いたちますが、諸事情で断念。しかし、パリから帰国して三年、この風景が心に浮かんできます。

「塀は私が描きに来るのを待っていたようだった。そして私はこの塀を描くために巴里から帰ってきた。そんな気がした。……」

画家が、やぁ、待たせたねと挨拶して塀の向こうへ消えてゆく姿を想像しました。

或は、夕暮の荻窪を描いた「荻窪風景」(1953)。初夏らしいある日の夕暮れ。道の向こうに女の子が誰かを待っています。画面のこちらから、仕事を終えたお父さんが帰って来る。手を降る女の子。並んで家路に就くのだろうか、と思いをめぐらせる小さな幸せが満ちた作品です。

長谷川の静物も魅力的です。この画文集の中からなら、私は「洋燈のある静物」が好きです。赤い縞のテーブルクロスの上に乗ったランプと洋書、そしてパイプと植物を入れた小瓶。まるで「暮らしの手帳」の表紙絵みたいな雰囲気です。日曜日の静かな午後のゆったりした幸せが漂ってくるようです。

猫好きの長谷川だから描けた「猫」(1966)。午睡に耽る猫の細やかな表情。赤い絨毯のぬくもりが伝わってくる作品です。この愛猫タローを描くのに、5年の歳月をかけたみたいです。画文集には長谷川自身の「タローの思い出」という文が載っています。ある時、彼はタローの履歴書を作ろうと決心します。これが傑作。姓名に始まり、現住所、本籍(エジプト)、職業(万国なまけもの協会日本支部名誉顧問)と続きます。体重は「ずっしり重し」には笑えます。

タローが死んで、庭に埋葬した後、どこからともなく現れた白い猫の話は、ペットを飼われている方、あるいは見送った方には涙ものです。

「長谷川潾二郎画文集−静かな奇譚」(求龍堂)は2400円で販売しています。

 

 

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2月22日はニャンニャンニャンの日!偶然にも今日から「猫」の絵の展覧会が始まりました!

『ねこのように』というタイトルがついていますが、その意図をお尋ねしたところ、

「彼ら(猫)は、とくに野良なんかは、自分のやるべきことをよくわかってて、風のふくまま・気の向くまま・なるようになる、そんな彼らみたいに、僕もとにかく今やるべきことをやって、気持ちよく生きて行きたいなあ、というような意味合いを込めています。」とのお答え。

猫は飼っているとよくわかりますが(うちにもふてぶてしい奴が一匹おります)、本当にわがままで、マイペース。言う事もきかないし!と思いながら、時に甘えるしぐさは可愛く、寝顔は極上。飼主は言いなりです。高原さんは、実はアレルギーで猫と住んだことはないのだそうです。その分、じっくり観察して絵に仕上げていかれるのではないかと思いました。猫の造形そのものが、好きなんですね、きっと。だからでしょうか、高原さんの猫たちは、甘いところがなく、すっきりとした佇まいで、こちらとの距離を測っているように見えます。

 

世の中、猫ブームとかで可愛い猫があふれていますが、ぜひ、クールで美しい高原啓吾の猫に会いにきて下さい。

 

 

なお、作品はすべて販売しております。今回の個展に合わせて「手ぬぐい(640円)」「ポストカード各種(162円)」「トートバッグ(1944円〜)」など、ステキなグッズもあります。(女房)

「ねこのように」展は、2月22日(水)〜3月5日(日) 月曜定休

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絵本作家、町田尚子さんの個展を観に行った時、いやぁ〜人を食った顔だなぁ〜と拍手喝采したのが彼女の新作絵本「ネコヅメのよる」(WAVE出版/新刊1512円)でした。この表紙を見ればわかりますよね。昨今猫ブームとかで、大量に猫本が出版されていますが、この本がピカイチだと思っています。

 

主人公は家猫ですが、人間が一人も出て来ません。そして、極端に少ない言葉。「おや?」「あれ?」「もしかして」「そろそろかもしれない」なんてフレーズに絵が一枚づつ付いているのですが、猫を見つめる視線が、まるで映画のカメラを覗いているみたいです。ローアングル、ロングショット、超アップ、大俯瞰と変化していきます。そしてある夜、猫達が行き着くステキな場所へと我々を誘ってくれます。妙に擬人化を施さないとこがいいです。猫に興味のない人もフフフと笑えてきそうな一冊。玄関に立てかけておいたら、この顔ですから厄払いもしてくれるかもしれません。

 

 

さて、もう一冊、やはり素晴らしい絵本の紹介です。酒井駒子(絵)、LEE(文)による「ヨクネルとひな」(ブロンズ新社/新刊1620円)です。仔猫のヨクネルのかよわい表情、女の子ひなちゃんの素直な感情が、酒井駒子さんらしい繊細なタッチで描き込まれていて、高いクォリティーの絵本に仕上がっています。ひなちゃんの顔、手の動き等隅々にまで、仔猫への愛しさが溢れています。ぐっすり眠っているヨクネルの表情も、よく猫を観察されているなぁ〜と感心します。駒子ファンなら、必読の一冊です。古書では、「金曜日の砂糖ちゃん」(850円)、「BとIとRとD」(1300円)、「ビロードのうさぎ」(1250円)、「くまとやまねこ」(1050円)もあります。

さて、こちらも新刊ですが、五味太郎「絵本図鑑」(青幻舎3024円)も見逃せません。1973年から2016年までに発表された、五味太郎の作品が網羅されています。全作品の表紙を収録、またエポックメーキング50と題して本人のコメント付きで中身が紹介されています。後半には五味太郎覚え書きがあります。

また、メリーゴーランド店主、増田喜昭さん他の方々が、五味太郎について語っていますが、その中で、編集者の小野明さんが興味深い指摘をされています。

「五味太郎は垂直好きだ。ビル、煙突、立木、塔、灯台、殿中、旗、信号、標識、杖…….。 絵本のそこかしこに立っている。」

絵本はページをめくる行為が水平方向の動きを促進するので、そちらに強い。だから垂直なものは、水平方向の動きに対して読点を打ち、画面全体をリズミカルにもする。画面がはずみ、軽快にする作用を持っている、との指摘です。これから五味太郎の絵本を見るときには、この点を注意して見てみるのも面白いかも。

★レティシア書房では、新刊書・古書の色々な絵本を置いています。

 

画家・絵本作家のミロコマチコさんちには、「ソト」と「ボウ」という名の猫が居ます。外房線地域に捨てられていた、彼ら2匹とのまったりした日常を描いたカレンダー(540円)が入荷しました。これが、実に面白い。女房は、このカレンダーの大ファンで毎年部屋に掛けています。

2012年に死んだ先代ネコ、「鉄三」にマチコさんが語りかけるような形で、「鉄三、ソトがね。冬は猫みたいだけど、夏は宇宙人みたいになるよ」なんて、不思議な言葉を散りばめながら、猫を飼った事がある人には、なんとなく思い当たる行動が、彼女の独特の自由奔放なイラストで描かれています。

なお、このカレンダーの影の主人公、”暴れネコ”として名をとどろかせた鉄三を主人公にした絵本「てつぞうはね」(ブロンズ新社)も、近日再入荷予定です。

さて、ほっと人を和ませるこのカレンダー同様に、気持ちの良い朝には鳴らしておきたいイ・ランの「ヨンヨンスン」(Sweet Dreams Press1500円)のジャケットの猫も素敵です。

彼女は2010 年韓国ソウルの学生街ホンデを中心とする、新しい自主独立音楽シーンの活況の中にあっても格別に大きな注目を浴びて登場したマルチ・アーティストで、このアルバムが処女作。ホームレコーディングされたアルバムで、ギター一本で、自分の日常のことをとっかかりにして、様々なことを語っていきます。透明な歌声は、朝聴けば、今日がいい日であるように思えるし、夜聴けば、良くなかった一日でも、ま、新しい朝が来れば、いい日になるよねと思わせてくれます。

「私はアパートに住んでいた/我が家は702号室/兄貴と私はひとつのベッドで眠った/父さんは貧乏で母さんは優しかった/私は兄貴の乳首を触りながら眠った/学校に行きたくなかってけど/先生がきらいだったけど/毎日小さな部屋で遊んで眠った/私は背が小さかったけど暑かったけど/つま先立ちでも窓は高く/ある六月廊下の向こうから吹いてくる風/その風 風 風 風 風 風 風 風 風/私はラッキーアパートに住んでいた」

私の一番好きな「ラッキーアパート」という曲の歌詞です。すっきりした風が部屋に入ってくるようです。

 

漫画家大島弓子が描いた絵本「森のなかの1羽と3匹」(白泉社1200円)。1羽とはカッコーのことで、3匹とは、トンボ、蝉、蛙です。もちろんキャラは大島らしい可愛らしい少女のかたちをとっています。そして、どの話もあっけない生と死を描いていて、切なくなってきます。

ふ化したトンボはこう呟きます。

「誰かが飛び立った わたしも行って 山裾の秋の中で 結婚して産卵して 一生を終えなければならない」

そして、最後の瞬間に、思います。

「わたしは羽をたたみ目をとじて思う。良い人生だったと そして永い眠りにつく」

地上に出るまで7年間、じっと地下に生きる蝉もまた、生の短さを語ります。「7年地中で暮らした後8年目にわたしは羽化して成虫になり、交尾相手を見つけて産卵し、数日間の命を終わる」と。

そして、地上に出てからふと、こんな考えが去来します。

「またあの地中の生活に戻りたいと 木の根のジュースとクッションと昼寝 イマジネーションと頭上の贈りもの 誰かが水を汲む動力の音 長く美しい休暇の時に」

ストイックな彼女たちの佇まいは、やがて果ててゆく命に抗うことなく、受け入れる姿があり凛として清々しい。この本、すでに絶版になっています。

もう一点、彼女の「キャットニップ」(小学館1100円)という大島らしいコミックも入りました。これ傑作「グーグーだって猫である」の続編としてスタートします。グーグー亡き後の大島家と十数匹の猫達のドタバタをコミック化してあるのですが、猫達も短い生を楽しんで、天国へ旅だっていきます。その一部始終をコミカルに、しかし、ここでも一直線に死を見つめます。作者自身が、病を得て死と向かい合ったせいかもしれません。

「おしっこも出すんだよ うんちもね それが生きるってことだから」と語りかけながら、小さな動物に様々なことを教えられてゆく、大島の可愛らしいキャラが楽しめる本です。一匹の猫とでさえ、動物と暮すと、ホント教えられることが多いと実感しています。

 

猫の写真がいっぱいのミニプレス”MILL”1号と2号(各1296円)が入ってきました。とは言っても「うちの子、可愛い〜」みたいな作りではありません。海外で猫と暮らす人達のご家庭で、静かな日常の一瞬を捉えていきます。

先ずは、保護施設にレスキューされたチョコレート・ポイント・シャム猫のアルフィー君、作家と写真家のカップルのリビングで幸せな日々を送っています。猫が案内する、主人の自宅拝見という感じでページを捲ってみて下さい。本好きには気になるのが書架、インテリアに興味がある人には、壁に掛けられたアートも素敵です。2号では、NYアッパーイーストにある本屋のLogos Bookstoreの看板猫、タキシードキャットのブーブーが、来店するお客様を迎える写真も入っています。猫の持つ、人を和ませるウェイブ満載です。

猫の登場する本のコーナーも面白い。登場する猫の種類、名前、性別まで記載されています。私の好きな松屋仁之「優雅なのかどうか、わからない」に登場するキジトラのふみちゃんが載っていましたが、的確な解説で、この小説の良さを紹介しています。

「48歳で離婚し一人暮らしをすることになった主人公が新居に選んだのは井の頭公園に面した古い一軒家。大家からの条件の一つは、のら猫のふみの世話をすること。老猫と適度な距離を取りつつ、家も改装しながらようやく慣れてきた頃、昔の恋人に再び出会う。家の暖かさや人が集う安心感、そういったものに背をむけつつも、最後にこっそりと戻ってきて地下室でひっそりなくなっているふみの姿が、主人公の人生と淡く重なる。」

家と猫というテーマでは、保坂和志の「カンバセイション・ピース」(新潮文庫400円)という優れた作品もあります。

ベタベタの猫可愛がりの本ではなく、ちょいクールで、デザイン的にもスタイリッシュな仕上がりなのがオススメポイントです。

かつて我が家にいた猫の名前「レティシア」を店名にしている本屋としては、これは置かなければならんでしょう。

 

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