私はサブカルに関する評論などを読みません。それは、自分自身がサブカルって何?という地点でウロチョロしているからです。アンダーグラウンド系コミックのことを指すのか、オタク系カルチャーをそう呼ぶのか、あるいは極めてパーソナルな音楽や映像を象徴する言葉なのか、イマイチ理解できないのです。

それなのに、この「ポスト・サブカル焼け跡派」(百万年書房/新刊2640円)を手に取ったのは、帯に書いてあった推薦文の言葉でした。

「彼らの饒舌な対話が言論ゲームに陥っていないのは、そこで、我々の暮らす社会は何故こんなことになってしまったのか。そしてどうするべきなのかという精密な検証と誠実な議論が行われているからだろう。」

書いたのは、音楽評論家で「踊ってはいけない国で、踊り続けるために ―風営法問題と社会の変え方」(2013)を出版した磯部涼です。

本の著者は、TVODという二人のテキストユニットで、1970年代から2019年までの音楽シーンを代表する人物を取り上げて、その時代を象徴するものを解き明かしていきます。

チョイスの基準がユニークで、73年〜78年は矢沢永吉・沢田研二・坂本龍一の三人。さらに79年から83年は、ビートたけし・戸川純・江戸アケミと、メジャーもインディーズも取り混ぜての選択です。

「70年代にアイドルを文芸として読む、みたいな態度も編み出されたわけだけど、沢田研二はむしろそういうところから離れていったというか、D ・ボウイ等を手本にして、自ら率先して記号になろうとしたと思うね。心情吐露的に内面を表現することからは距離を置いて、自分を記号的なキャラクターにしていったというか。」

四畳半的な心情や、私小説的ニューミュージックの世界に背を向け、自分の叙情性を放り投げて、実態のないものの中に、その存在を記号化してしまう方向へと突き進んでいきます。

糸井重里作詞による「TOKYO」の歌詞覚えてますか?「空を飛ぶ街が飛ぶ 雲を突き抜け星になる 火を吹いて闇を裂き、スーパーシティが舞い上がる」という、とんでもないシュールな歌詞で、さらにこの歌は「海に浮かんだ光に泡だ」と来たるべくバブルの時代まで予感しています。

こんな風に「精密な検証と誠実な議論」は2019年代まで続くのですが、椎名林檎、バンプ・オブ・チキン、星野源などが登場するあたりから、私にはもう理解ができない…….。ぜひこの本は若い世代の方にお読みいただき、解説をお願いしたいと思っています。X-JAPANまでは、成る程と理解できたんですけどね。

本作品を発行した「百万年書房」は最近立ち上がった出版社で、以前にも「しょぼい喫茶店の本」を当ブログで紹介しています。他にも刺激的な本があります。この出版社のコーナーも常設していますので、手に取ってご覧ください。

お知らせ 

緊急事態宣言は解除されましたが、暫くの間、営業日・時間を下記のようにさせていただきます。

営業日:毎週 火曜日、木曜日、土曜日、日曜日  営業時間:13時〜18時

なお、6月より、月曜、火曜定休 水曜日から日曜日まで 13時〜19時に変更いたします。また、ギャラリーの企画展は6月下旬からのスタートを予定しています。度々の変更でご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いします。

通販、メールでの在庫確認は常時できますので、ご利用ください。(info@book-laetitia.mond.jp)


 

京都新聞朝刊に毎日連載されているコラム「凡語」、本日はこんな文章で始まっています。

「この国の憲法9条はまるでジョン・レノンの考え方みたいじゃないか?戦争を放棄して世界の平和のためにがんばるって言っているんだぜー日本のキング・オブ・ロック、故忌野清志郎さんは著書にそう記す。」

昨日、5月2日は彼の命日でした。11年前、彼が亡くなった時の喪失感は、今もそのままです。音楽家としても、人間としてもリスペクトしていました。

小さな出版社、百万年書房から、忌野清志郎「使ってはいけない言葉」(新刊/1430円)が発売されました。これは、様々な雑誌や書籍で書かれた彼の膨大な言葉を、六つのカテゴリーに分類して選び出した本です。

「誰でも好きなことを歌っていいような世界がくるまで頑張りたいと思います。いちいち、反戦歌を歌ったから何だかと言われたりね、そういうことをしないで、反戦歌もラブソングもさ、全部同じレベルで、みんなが素直な気持ちで聴けるその日まで、頑張り続けるつもりで頑張っているんですよ。」

「凡語」によると、彼の母親は再婚で、前の夫はレイテ島で戦死しています。彼が見つけた母親の短歌には、亡くなった夫を思い、「戦争への不条理がにじんでいた」とのこと。だからこそ「『反戦は遺伝子に組み込まれていると思った』と語っている」と書かれています。

反原発ソングを吹き込んだり、「君が代」をパンクロック風に歌ったり、過激な部分ばかりがマスコミに取り上げられていましたが、彼の気持ちとしては、いい歌を歌うだけさ、だと思います。政治的に利用されることを嫌い、その手のインタビューに答えなかったのも彼らしいと思います。残念ながら、58歳で旅立ってしまいました。

音楽家を含めて、表現者を「プロの自由労働者は、才能や技術が枯れてしまったら一寸先は闇、というある種ギリギリの生き方を選択した人間なんだよ」と定義しています。芸術や文化への理解の乏しい政治家たちに聞かせたい言葉です。

私が最も好きな彼の言葉は、これです。

「そう簡単に反省しちゃいけないと思う。自分の両腕だけで食べていこうって人が。」

私は、技術者でもないし表現者でもありません。でも、この言葉には仕事への凜とした姿勢を感じるのです。

東日本大震災の時、もし彼が生きていたら、きっと十八番のカバー曲「上を向いて歩こう」を歌いながら、被災地を回っていたと思います。歌を愛し、人を愛した生涯でした。

お知らせ コロナウィルス感染拡大の緊急事態下、これ以上感染者を出さないために、4月23日(木)より当面休業中です。予定しておりましたギャラリーの個展もしばらくの間お休みいたします。この「店長日誌」は毎日更新していきますので、読んでいただけたら嬉しいです。ご希望の本があれば、お取り置き、または通販も対応させていただきます。(メールにてご連絡ください。)

★★ 5月7日(木)午後2時より4時ぐらいまで開けています。ご用があれば声をかけてください。

 

 

東京新井薬師に、ホントにある「しょぼい喫茶店」の店主、池田達也が書いた「しょぼい喫茶店の本」(百万年書房/新刊1512円)は、起業して成功するための本ではありません。これからの働き方、生き方を考えてみるには最適の一冊です。

「僕は働きたくなかった。ただただ働きたくなかった。理由はよくわからない。」という出だしで本は始まります。なんと甘えたことを!とお怒りのサラリーマン諸氏、まぁまぁ、その気持ちはちょっと横に置いて、著者の思いを聞いてあげて下さい。

著者はアルバイトをしても長続きせず、就活では「会社で使える人間」をなんとか演じる努力したものの、全くダメ。社会人失格の烙印を押された気分で鬱々とした日々を過ごすことになり、挙句に自殺まで考えるようになります。それなりに人生の階段を上がってきて、初めて蹴つまずいた著者は、ここで一人の男性に出会います。”日本一有名なニートphaさんです。彼の著書「持たない幸福論」で出会った「自分の価値基準で幸せを決める」という言葉に心動かされます。

「嫌な人たちと嫌なことをしてお金をもらうよりも、好きな人と好きなことをしていたい。」大正解です。でも、普通のレールに乗って、会社に勤めていたら不可能です。そんな考えは甘えだと言う方が多いでしょう。しかし著者はここから、じゃあ自分の幸福は何か、どう生きていけばいいのかを必死で考えていきます。

ある日、twitterで”えらいてんちょう”という様々な事業を展開している人物に出会います。

「金がないことが貧困なのではなくて、金がないならないなりにやる、ということができないのが貧困。金を得る方法を知っているのが知性ではなく、金がなくても笑って過ごせるのが知性。」

名言ですね。会社員として遭遇する、不条理、我慢の対価として金を得て、それなりの生活を送るのではなく、自分の価値基準で幸せになる生き方を選び、それには自営業が最適と考え、店を持とうと思い、そこから、著者の人生は動き出します。物件を探し、お金を工面し、オープンへと向かいます。このあたりの描写も、よくある開店指南書とは大違いの面白さ。面白いキャラクターの人物が登場し、さながら青春小説です。

中々、上手くいかない状況に、諦め気分の著者に”えらいてんちょう”が言った言葉が、「いや、そんな真面目に考えなくてもどうにかなるっしょ!もっと適当で大丈夫」ってそんなことで、上手くいくか!

ところが人生どうにかなるんです。この本の後半はその記録です。もうダメだと思っていた著者は、店を軌道にのせ、なんと生涯の伴侶まで見つけてしまいます。拍手、拍手です。

嫌なことはしない。好きな事だけを仲間と一緒にやってゆく。金持ちになることを考えず、果てしない消費に突き進むことなく、微笑んで毎日生きてゆく。そんな若い人たちが沢山出てくれば、この社会も、ちっとはマシになるかもしれません。

★勝手ながら、4月22(月)23日(火)連休いたします。よろしくお願いします。なお、ゴールデンウィーク中は通常通り営業いたします。(店主)