星新一との名コンビで、小説・エッセイの挿絵を描いてきたイラストレーター真鍋博の集大成とでもいうべき「真鍋博の世界」(PIE/新刊3850円)が人気です。

真鍋は1932年愛媛県に生まれ多摩美大を卒業後、東京港区の中学校の教員になります。やがて、星新一や筒井康隆のSF小説の挿絵を担当し、その一方でファンタジックな未来社会を描いた作品も発表してゆきます。本書は、愛媛県美術館で行われた「真鍋博2020展」の公式図録でもあります。全7章に渡って、様々な角度から作品を選び出してあります。

本好きには、とりわけ第3章「文学との邂逅」が見逃せないところです。この章を開けると、1961年の星新一「悪魔のいる天国」の表紙原画が目に飛び込んできます。ゴシックロマン風の作品ですが、驚くべきことに真鍋は、本の版が変わるごとに新しいイラストを用意していました。それだけ星の作品に入れ込んでいたのです。だから、星のショートショートは、真鍋の表紙が無くては成り立たないと言ってもいいかもしれません。

早川文庫が出しているアガサ・クリスティー作品は、誰でも一度は手に取られたはずです。あのシリーズも真鍋が担当しています。ここには全て収録されていますが、見事な表紙絵の数々です。単行本ばかりではなく、「宝石」「建築文化」「ミステリマガジン」などの雑誌の表紙も描いていたことを、本書で知りました。

彼は色彩豊かな作品が多いのですが、印刷の時に、より精度の高いレベルで再現するために、トレーシングペーパー上に、4原色のシアン、マゼンタ、イエロー、キープレートの割合を書き入れて印刷に回していました。その例として、筒井康隆「七瀬ふたたび」の表紙絵の色指定を書いたトレーシングペーパーが付属しています。

個人的に最も好きな真鍋作品は、なんと言っても「真鍋博の鳥の眼」(1968)です。鳥の眼から見た都市が精密に描かれた線画で、ビルや、商店の名前が細かく書き込まれているのです。本書には、その中から「松山」が収録されています。以前、このオリジナルをとある古本市で見かけて後で買おうと、他の人に見つからないようコソッと隠しておいたのですが、戻ってみたら見事誰かに持って行かれてました。残念!(最近、新装版として再発されましたね)

 

★レティシア書房 年末年始の休み

12月28日(月)〜1月5日(火)休業いたします。よろしくお願いいたします。

 

 

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