ただいま開催中の原田京子写真展「Spanish Sentiment& Ireland」のコラボ企画として、ピアニスト石塚まみさんのCD「スパニッシュ・センチメント」(2750円)が届きました。
原田さんが撮影したスペインの光と影、そして色彩に触発されて、作られたアルバムです。ジャケットには、夕暮れの草原に佇む犬の写真(2016年のレティシア書房の個展で展示していました)。今まさに沈もうとしている太陽の最後の輝きが美しい。CDの1曲目「Beyond」をかけた時、最初に響いてくるピアノの音は、その瞬間を奏でているようでした。そうか、写真家が捉えた微妙な光線を、音楽家はこんな風に表現するのかと感心しました。
ジャズでもなくクラシックでもない、いわゆるヒーリング系音楽って、耳触りは良くても繰り返し聞いてるうちに退屈してくるものですが、石塚さんは音の操り方が巧みです。饒舌な音楽ではなく、まるで雨粒がポツン、ポツンと手に当たるような感性で、聴いている者の心に忍び込んできます。アルバムタイトル曲「スパニッシュ・センチメント」では、フラメンコ歌手石塚隆充が参加して、ピアノとのデュオを展開していきます。静かに始まり、優しいメロディーが続き、フラメンコらしい手拍子が入ってくるのですが、抑えめです。いかにもフラメンコ風、の曲にしていないところがミソですね。
9曲目「 Hope」は、力強い音が心地よい5分の曲の後、1分少々の「 Improvisation」という即興を意味する曲で静かに幕を閉じます。ジャケットの写真のような平和に一日が終わってゆく瞬間が、最後の音にも感じられます。写真家の祈りにも似た「平和な一日の終わり」という、いま最も求められている瞬間を、音楽家が音にしたコラボ作品となりました。美しい余韻を味わってください。朝でも、昼でも、夜中でも、寄り添ってくれる音楽です。
★写真展およびCDの販売は12日(日)まで。
★レティシア書房連休のお知らせ 勝手ながら4月13日(月・定休日)14日(火)臨時休業いたします