現在、当ギャラリーで開催中の福井さとこさんの原画展「カティとつくりかけの家」の書籍(1628円)が入荷しました。

全125ページ、フルカラーで福井さんの絵が入り、美しい仕上がりになっています。絵と文章が巧みにブレンドされた”絵読み物”として、出版社の気合いが十分表れています。(全国発売は20日で、当店のみ先行販売です!)

「ここはチェコ共和国の小さな街。雪げしょうをしたおもちゃ箱のような街から、山にむかって1台の車が走っています。」という書き出しで物語は始まります。

都会から自然豊かな街に引っ越してきた女の子カティが主人公です。お父さんは、手作りで家を作っています。そのつくりかけの家の絵が素敵で、こんな家に住んでみたくなります。

「トビー! たんけんにいこう! カティはぼうしをかぶると、はてしなく広がる雪景色のなかへ走って行きました。」愛犬トビーと雪の平原を駆け抜けるカティ。

お父さんが作ってくれた脚の長いベットに登ったカティ。どうしてこんな高いベッドなのか聞いた時「夜になればわかるよ。」と笑っていたお父さん。

「ふと、カティをあけると、カティは息をのみました。窓いっぱいに星がこぼれおちて、まるで夜空にすいこまれようです。」ああ、こんなベッドで寝てみたい!

小学校で、彼女はグルーニュ先生という博物学の先生に出会います。「カティは、美術や音楽と同じくらい、博物学がすきでした。授業では、美しい声のクロウタドリから、いろんなしゅるいのカラスの見分け方まで、みぢかな生きものや植物について、まなびます。」

さて、クラスにちょっと変わった男の子が転校してきます。いつも、体全体がぐっしょり濡れているヤンです。実は彼はカッパ?!だったのです。なんか賢治の「風の又三郎」みたいですね。彼女はヤンに連れられてカッパの家族の住む湖に飛び込みます。そのシーンは、波しぶきがこっちに寄ってきそうなほどで、実に楽しい。

都会では一人でいるのが好きだったカティは、たくさんの友達や面白い先生に出会い、毎日楽しくってたまりません。

「わたし、ここが大好き! カティは大きく深呼吸すると、鳥の声がする森にむかってかけだしました。」

少女が自然と触れ合い、豊かに成長していく姿を描いた絵本です。おかあさんの作る料理も美味しそう!

☪️福井さとこ原画展は17日(日)まで。土日は在廊されていますので、新刊本にサインしてもらえます。

 

 

白いギャラリーの壁に爽やかな色合いのシルクスクリーンの作品が並んでいます。絵本作家福井さとこさんの、レティシア書房での3回目の個展です。

福井さんは、京都嵯峨芸術大学卒業後、アニメーション制作を経て、2014年からスロバキアのブラチスラヴァ芸術大学に留学し、版画家ドゥシャン・カーライ氏のもとで版画と絵本の挿絵を学びました。2017年、ブラチスラヴァ芸術大学大学院修士卒業。卒業制作で描いた絵本『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』で絵本作家としてデビューしました。2019年にレティシア書房でこの本の原画である木版画展を、2020年には『マギオ・ムジーク』(仁木英之作)の挿絵原画展(こちらは銅版画)を開催しました。

そして今回は、シルクスクリーンのとても洗練された作品展です。これは毎日新聞で一ヶ月に渡り連載された『チェコの森のカティ』(文・絵とも)をさらに深めて、新しくポプラ社から出版されるのを記念して開きました。なお、ポプラ社から出版される『カティとつくりかけの家』は、この原画展に合わせて10月9日より当店で先行発売させていただくことになりました。物語については、後日ゆっくりご紹介させて頂きます。

三回の展覧会は、それぞれ違う手法で描かれたものなのですが、生き生きとした人物や動物たちの巧みな描写は、さらにグレードアップしているように感じました。少ない色を多彩に見せることのできる「色の魔術師」福井さとこさんの奏でる優しいハーモニーをぜひご覧いただきたいと思います。(女房)

✳️福井さとこシルクスクリーン版画展「カティとつくりかけの家」は10月6日(水)〜17日(日) 13:00〜19:00(最終日は18:00まで)月・火定休

 

 

 

 

 

昨日より始まりました福井さとこ銅版画展は、仁木英之の小説「マギオ・ムジーク」の挿絵の原画展。では、どんな小説かなと思って読んでみました。

おぉ〜正統派ファンタジー小説!小学6年の翔馬が、ある日突然、異次元の世界へと迷い込み、そこで悩みながらも成長してゆくという王道の物語です。こういう物語にはお約束の、大きな龍や虎も登場します。けれども、翔馬と龍やモンスターの大バトルは、メインイベントではありません。

翔馬が迷い込んだ世界は、音楽に該当するムジークという魔法が絶大な力を持っています、都市を破壊するほどの力もあれば、世界を美しくする力も備えています。こちらの世界でピアノを弾いていた翔馬は、自分の持っているムジークの力強さに驚きながら、この力を巡って対立する二つの勢力の中で、自分が何をすべきなのかを探し求めていきます。

「旋律は奏でる者のこ……心だ。もし、めちゃくちゃな音しか出ないとしたら、それはお前の心が乱れているだけに過ぎない」

と言われるのですが、自らの力を制御できない。

「音がとまらない。翔馬はこわくなって楽器を放り投げようとした。だが、触手が数本のびて翔馬の体に絡みつく。その一本が腕のところから皮膚の中へ入ろうと口を開けたのを見て、翔馬は悲鳴を上げた。」

そういう世界で、翔馬は仲間を作り、より良き世界のために、そしてなんとか元の世界へ戻るために行動を開始します。ムジークのことを深く知るために、ムジーク使いを養成する学校に入ります。

「願いをかなえるために学ぶ。それは君の世界でも変わらないはずだ」

という先生の言葉は、学ぶことの本質を言い当てた言葉ですね。音楽をムジークという魔術に置き換えて物語は進んでいきます。そして、音楽の力をこんな風に表現しています。

「音楽は人を傷つけたり悲しませたりするかもしれないけれど、こうして何かをこわすために、だれかをひざまずかせるためにあるんじゃない。悲しみの向こうへ行くためのものだ」

確か坂本龍一だったと記憶しているのですが、音楽は人を救わない、けれども人に寄り添うことができると言っていました。寄り添って悲しみの向こうに連れて行ってくれる、なんて素晴らしいことでしょうか!

音楽とずうーっと付き合ってきた私には、とても心に染みる物語でした。

なお限定ですが、現在店内で販売している本は、仁木英之さんと福井さとこさんのサインが入っています。お早めに!

 

ARK(アニマルレフュージ関西)の2021年度カレンダーを入荷しました。

・大きいサイズは1000円(撮影は児玉小枝さん)

・卓上サイズは800円(ARKスタッフ撮影)

今年はコロナの影響で撮影ができるか懸念していました。毎年カレンダー発売に合わせて写真展を開催してきたのですが、春の段階で、どうなるかわからないとキャンセルの連絡が入ったので販売できて嬉しいです。売り上げは全てARKに寄付しますので、ぜひ店頭で手に取ってください。

福井さとこさんは、京都嵯峨芸術大学デザイン科卒業後、手描きのアニメーション制作をしていました。その後、世界的絵本作家ドゥシャン・カーライに魅了され、一発奮起、スロバキアのブラチスラバ芸術大学に留学してカーライ氏のもとで版画と絵本の挿絵を学びました。

今回は日本デビュー作「スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん」(JULA出版局)の原画展を開催します。この本は、2017年ブラチスラバ芸術大学版画学科大学院の卒業制作ですが、スロバキアの最も美しい絵本賞(学生部門)を受賞しました。

お留守番中のゆろとはなの兄妹が、想像の世界で様々な冒険をするお話です。お母さんがお出かけした後、寂しがる妹はなを、お兄ちゃんのゆろが、想像という魔法で、はなにステキな世界の扉を開けてくれます。身の回りのものを、何かほかのものに見立てるのは、子どもたちが得意な遊びですよね。二人は椅子の馬やはさみの鳥たち、くつ下のうさぎ、本のフクロウなどと出会い、テントウムシを救い出します。テントウムシはスロバキアでは神様のお使いとして幸せをもたらすと言われているのだそうです。

福井さんがスロバキアで学んだのは、西洋木版。木版画には板目木版と小口木版があり、我々がよく知っている日本の浮世絵などは、板目木版画。小口木版は銅版画のような細かい表現が可能な手法です。ヨーロッパでは、聖書の絵として発達した細かい描写はこの小口木版画や銅版画を駆使したものになります。刷る技法も日本ではバレンで刷り取りますが、西洋木版はプレス機を使います。版木、紙、インクの素材にも違いはあります。福井さんの今回の絵本の原画は、板目木版で、プレス機もバレンも使い、ウィーンで入手した水性インクによる落ちついた色合いで、シンプルで伸びやかな作品に仕上がりました。

絵本の中で、スロバキアのわらべうたが出て来ます。現地で時々ベビーシッターをしていて、小さな子どもたちと接する中でできあがったお話だそうです。勢いのある構図、繊細な色使い、和紙を使って刷った絵には、日本で培ったものとスロバキアで学んだことが、お話の中だけではなく、絵の表現にも混ざり合い、福井さんならではの独特の世界が広がっているように思います。瑞々しい絵本作家の楽しい原画をお楽しみ頂けたら幸いです。ぜひお出かけ下さいませ。(女房)

福井さとこ絵本原画展『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』は1月22日(火)〜2月3日(日) 12時〜20時 月曜日定休  なお、最終日2月3日(日)18時から福井さんによるスロバキアのお話会を行います。参加ご希望の方はレティシア書房までお申し込み下さい。(075−212−1772)