日本画家秋野 不矩は、京都市立芸大で教鞭をとっていた1961年、初めてインドに行きます。その後何度も渡印した彼女が、現地で見たインドの人々と、自然をスケッチと文章でまとめたのが「画文集バウルの歌」(800円/出品 古書柳)。簡潔ながら、詩的な文章が心に染み込んできます。そして、各ページに添えらたスケッチが、繊細で、力強く、魅入ってしまいます。第二章「スケッチブック」では、1977年の彼女の現地で描いたスケッチブックがそのまま収録されています。第三章「1982」は、82年9月末からのインド滞在時の日記と、ユーモアたっぷりのスケッチを楽しむことができます。今回の古本市には、秋野 不矩が絵を描いた、「こどものとも」シリーズの一冊「ちいさなたいこ」(300円/出品 トンカ書店)も出ています。

 

京都つながりで言えば、杉本秀太郎の本が二冊出品されています。「京都夢幻記」(500円/出品 らむだ書店)は、よく見かける本ですが、「西窓のあかり」(2000円/出品 らむだ書店)はあまりお目にかからない一冊です。京都における雅びについての考察の中で、夏目漱石の「京に着ける夕」という短編が取り上げられています。下鴨神社境内の、糺の森近くの宿に泊った時のことが描かれています。杉本は、この短編から雅びとは何かを導き出します。杉本の本を集めている方には、手に取っていただきたい一冊です。

海外長編小説では、ぜひにでも読んで欲しいものが出ていました。アンソニー・ドーア作「すべての見えない光」(1000円/出品 ヴィオラ書房)です。戦時下のフランス。目の見えない少女マリー=ロールと若きナチスドイツの兵士ヴェルナーの出会いを描いた作品です。藤井光の翻訳が、この二人の運命の変転を余すところなく描いていきます。藤井の「ドーアの作品に欠かすことのできない、人間に対する細やかまなざしは『すべての見えない光』のひとつひとつのエピソードを忘れがたいものとしている。マリー=ロールとヴェルナーの心の脆さ、強さ、迷い、成長、そして決断を、ドーアの繊細な筆致はていねいに刻みこんでいく」という言葉通り、物語に魅了されます。

 

★古書市は19日(日)まで。月曜定休。なお最終日は18時で閉店します。

★夏休みのお知らせ  8月20日(月)〜24日(金)休業いたします。