面白い企画で映画ファンに人気のあった立誠シネマ。劇場があったのは、明治に設立された元小学校でしたが、すべて取り壊されて新施設が建築中です。

そんな中、一足早くオープンしたのが立誠図書館です。2018年4月に開館し、600冊程の本を所蔵しています。小学校で使用していた調度品を取り入れた図書館内には、TRAVELING COFFEEを併設しています。

この立誠図書館が、「人・本・地域をつなぐPage3」というフリーペーパーを発行しました。創刊号では、最近イラスト集「UKIYO」(玄光社/新刊2700円発売中)を出版した慈船山端泉寺住職の中川学さんと、同図書館の岡見館長(お二人とも立誠小学校卒業生)が巻頭対談をしています。立誠小学校って京都市の小学校で初めてプールを持ったところなんですね。木屋町という京都の歓楽街の真ん中に図書館がある構図は、なかなか面白いものです。

同図書館の企画を担当しているのは、ブックディレクターの幅允孝さん。以前ブログで幅さんの「本なんて読まなくていいのだけれど、読んでみるのもいい」を紹介したことがありますが、「京都歩き」「食べる」「立誠小学校DNA」という三つのテーマに沿って選書されています。2020年に完成する複合施設内にオープンするライブラリーに先駆けて開館して、規模も小さく蔵書もこれからですが、幅さんのセレクションは、ユニークできっと面白いはず。

創刊号、最新号共に、館長やスタッフの推薦する本が6点並んでいます。岡見館長のおすすめは「京都映画図絵 日本映画は京都から始まった」という本です。1896年、初めて我が国で映画が上映されたのが、同小学校の一角だったのだそうです。また、映画監督の故大島渚が文章を書き、絵本作家伊藤秀雄が絵を描いた「タケノコごはん」は、監督の子ども時代の思い出を描いた絵本。幅さんが選書した「食べる」本棚からチョイスされた、高土実「ママ、なぜ野菜を食べなきゃいけないの?」と、田辺聖子「おいしいものと恋の話」など、興味深い棚構成になっているみたいです。

一世帯当りの珈琲消費量日本一の、京都の魅力的な珈琲ショップも紹介されています。TRAVELING COFFEEでは、月替りで市内の焙煎所のシングルオリジナルコーヒーを提供中です。図書館帰りに寄ってみたいところです。尚このフリーペーパーは離月刊で発行される予定です。店には2号を20部程在庫しています。

 

一方、京都の様々なジャンルの職人さんを 紹介しているフリーペーパー「想いのしおり」も、19号になりました。

今回は家具職人を取材した「真摯に木と向き合う家具職人」というタイトルで、京都府亀岡市に、”YOSIDA _WOOD_STUDIO”を構える吉田欣司さんが登場します。実家は大阪箕面市で、三代続く造園業を営まれていて、昔から木と緑が大好きだったそうです。現在、無垢のオリジナル家具と、建築関係の造作家具を製作されています。ご興味のある方はHPアドレスが掲載されていますので、ご覧下さい。

高知県が出している「とさぶし24号」も入っています。今回の特集は土佐和紙の特集です。まだ若干在庫がありますので、お早めにどうぞ。

 

梅雨らしく、じとじとと雨が降る日が続いていますが、そんな雨の音を聴きながら読むのに、と言うものの短篇ですので、夕立でも最適な一編をご紹介します。

ラテンアメリカ文学の巨人ガルシア・マルケスの「マコンドに降る雨を見たイサベルの独白」は、短篇集「青い犬の目」(福武文庫/絶版500円)に収録されている、雨の降る数日間の幻想的な小説です。

日曜日のミサの後、「空は灰色のゼリーのようにわたしたちの頭の上に垂れこめ」雨が降り出します。その日は同じ調子で降り続き、「午後の汽車に乗って旅をしているような気分になりました。でも、気づかないうちに、雨はわたしたちの感覚に奥深く入り込んでいたようなのです。」

そして月曜日。「その降り方は前日とちがい、わたしは心の中で何か異常な苦いものを感じ取りました。」という状況になり、火曜日はさらに激しく降り、「その音を聞いているとまるで心臓に穴を開けられるような痛みを感じました。」と事態は進行します。

ひたすら雨の音を聞いているようです。確か、サマセット・モームの小説にも降り続く雨の中で精神のバランスを崩していくお話があったと思いますが、雨は、何かしら人の心に影響を与えるものなのかもしれません。

やがて雨は止み、「静寂がわたしたちの周りを包んでいたのです。その静けさは神秘に満ちた深い幸福感をもたらし、死そのものと形容したくなるような完璧な状態でわたしを包みこみました」という心の変容を描いて、幻想的なエンディングに向かいます。

この文庫には「死をめぐる11の短篇」というサブタイトルが付いています。死者から日常の風景を見つめた「誰かが薔薇を荒らす」とか、生きたまま埋葬される男を描いた「三度目の諦め」とか死がつきまといます。濃厚なリアリズムの極地とも言うべきマルケスの世界とは、全く違う静謐な空気に満ちた作品集です。

★お知らせ

7月16日(土)〜8月5日(金)まで立誠シネマで『ラテン映画特集』が開催されます。

上映のイベントとして23日(土)、24(日)の二日間、映画館が入居している立誠小学校で「ラテンマーケット」が開かれます。食べ物や雑貨に混じって「ラテン文学古書市」もあり、当店もちょこっと参加しますので、お立ち寄り下さい。