古谷田菜月の「神前酔狂宴」(河出書房新社/.古書1200円)を読み始めた時は、どこから面白くなるのか見当がつきませんでした。しかしこの特殊な物語世界に洗脳され、脳内を撹乱されて、ズズッとのめり込み、そこから一気に読みきりました。

物語の中心となるのは、明治期の軍神をまつった神社併設の結婚披露宴会場。ここで派遣社員として働く、浜野と梶という青年が主人公です。給料分の仕事をやればいいや、とやる気のなかった浜野でしたが、ある日「新郎新婦の愚かしさ、披露宴の滑稽さを限界まで高めることこそ我が使命と考えるようになり、全力で働くようになった。」のです。

神前結婚の披露宴という特殊な職場の環境を生きる人々や、別の神社から会場を乗っ取ろうと乗り込んでくる倉地と、浜野の確執も描かれ、仕事小説としてのスタイルを見せつつ、物語はどこへ向かうのかわからんままに、どんどん進んでいきます。二人の青年の青春物語であり、お仕事小説でもあり、披露宴という茶番を笑い飛ばすかのような喜劇小説というように、多面的な側面を垣間見せながら、読者は、超忙しい式場内を浜野たちと疾走してゆく羽目になります。

結婚披露宴が「伝統主義による女性差別」と「商業主義による男性差別」に満ちた滑稽な儀式だと気付きながらも、浜野はその茶番劇に全精力を傾けて仕事をするうちに、社内で出世していきます。そんな時、「“自分の本心”と結婚式を挙げたい」と希望する松本千帆子という不思議な女性がやってきます。え?どんな結婚式?? 新郎はいません。??もうこの辺で私の脳はショート寸前です。

松本千帆子は付き合っていた男性がいたのですが、結婚話が出たところで別れた過去があります。彼女の話を聞いた結婚式場のスタッフがこんなことを浜野に言います。

「よくわかんないですよね。人でもなく、物でもない。確かなものと結婚したいって。自分自身というのとも違って……..。本心と、って言ったかな。自分の本心と、連れ添っていきたい。そんなふうに言ってました。」

後半は、この女性の申し出を受けた浜野が「ねえ、やろうよ、その婚礼!」と宣言し、神社も式場も巻き込んで、一気呵成に実行してゆくところがクライマックスになります。

この小説、すべての人におすすめしません。現に、書評を読んでいても、よくわからんという意見と、大絶賛という意見が交互に出ていました。でも、全く違う文学体験をしてみたい方には強くお勧めします。私は最後のページで、上手い!と思わず拍手してしましました。

 

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